レ点腫瘍学ノート

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神経内分泌腫瘍

膵神経内分泌腫瘍におけるNET G3と低分化型NECの区別

NET G3とNECは全く別の疾患概念である

2010年頃以前までは、NETのうちki67 indexが高いものがNECであるというような疾患概念で考えられていたが、現在はNET G1-G3とNECは全く別の疾患群と考えるべきである。臨床的にも、病理学的にも、分子遺伝学的にもNET G3とNECの間には明確な違いがあると認識されている。

G1/G2の膵臓NETに対してはエベロリムス・スニチニブが抗腫瘍効果を示す。一方でNECに対してはプラチナベースの化学療法が重要である。WHO2010年分類ではNET G1/G2は高分化型、NECは低分化型と定義されていたが、実際にはNECと診断された腫瘍の中にもKi-67 labeling index値は高いが組織学的には高分化型を示すものが含まれることが明らかになってきた。低分化型NECと比べてもNETの予後は良好であり、また治療選択においてもNECに推奨されるプラチナ系薬剤よりはエベロリムスなどの標的治療の有効性が高いことが明らかになってきた。これらのことから、神経内分泌腫瘍のうちKi-67 indexが高値のものの中でも低分化のNECと高分化のNET G3は峻別されるべきという考え方が広まってきた。

WHO分類でのNETとNEC

2017年に発表された膵NETの病理組織学的分類(WHO2017分類)では、ki-67 indexを見るよりも先にまずは組織形態学的に高分化型のNETと低分化型のNECに分けて、さらに高分化型のNETの中でki-67標識率に基づいてNET G1/G2/G3に分類されることが提唱された。なお、この分類は膵NETにおける分類であり、2018年時点では消化管神経内分泌腫瘍においてはNET G3とNECについて明確な区分が確立されていない(WHO 2015年分類が生きている)。

G3 NETの治療選択については種々の意見が見られるところではあるが、近年はG3であってもNETはNECとは分けてG1/G2と同じ治療を選択する事が多い。

NET G3とNECの免疫組織学的および遺伝学的鑑別

両者の鑑別は検体量が十分得られているときは組織形態学的に区別できるが、検体量が少ない場合などは免疫組織化学染色を併用することで診断率を向上させることができる。

/Clin Cancer Res 2017 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28455360

NET G3SCNECLCNEC
クロモグラニンA陽性100%88.5%88.9%
シナプロフィジン陽性95.2%96.8%88.9%
Ki-67標識率中央値28.5%85.0%70.0%
Rb発現消失0%59.2%47.0%
KRAS変異陽性率0%48.0%50.0%

膵NENと膵癌の遺伝子変異率

/Science 2011 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21252315
/Science 2008 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18772397

それぞれの遺伝子変異の陽性率は下記の表の通りである。

膵NEN膵癌
MEN144%0%
DAXX,ATRX43%0%
mTOR関連遺伝子15%0.8%
TP533%85%
KRAS0%100%
CDKN2A0%25%
TGFBR1,SMAD3,SMAD40%38%

膵NETに対する標的治療とSSA治療

オクトレオチドはガストリノーマやカルチノイド症候群では有効性が高いがインスリノーマには有効性が低い。この場合にはオクトレオチドによってグルカゴン分泌が抑制されるため低血糖発作が増悪する可能性があるので注意が必要である。

CLARINET試験:膵臓NET(G1/G2)に対するランレオチド単独療法(第3相)

/NEJM 2014 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25014687

消化管・膵NECに対するCDDP+CPT-11療法後のオクトレオチド維持療法(第2相・単アーム)

/Oncotarget 2017 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27788498

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更新日:2019-09-05 閲覧数:1500 views.