レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2022年 / 3月26日

「正しい医療情報発信」は簡単ではない

SNS

世の中には間違った医療情報がたくさんあり、その情報を信じてしまった人が健康被害に遭ったり、がんのような病気の場合には命を落とすことだってあります。

過去数年間を見ても国際的IT企業のカリスマリーダーや国民的な人気を集めた美人アナウンサーが、標準治療を否定した結果としてがんによって亡くなった(のではないか)という情報がSNSでしきりに語られました。もちろん最終的には本人の選択の結果が本人に降りかかっているだけといえばそれは確かではあるのですが、それでも普段の診療をしていても、正しい情報を得られなかったことによって怪しいルートに道を踏み外してしまった、もし時間を巻き戻せるならいくらかよいルートを辿れたはずなのに・・・と思うことはしばしばあります。

少なからぬ医療者はその状況に心を痛め、正しい医療情報を発信しようと頑張ってきました。市民公開講座を開いたり学会で講演をするような王道から、SNSで発信をしたりするような草の根的な動きもありました。その中で出てきたLumediaとサギプロは、SNSにルーツを持ちつつも正統派ルートで市民社会へ広く呼びかけようという意欲的な取り組みを行う組織でした。

しかし、その2つの組織は登場後まだ日が浅いのですが、早くも苦難に立たされそうな様子があります。Lumediaとサギプロはともに発足まもない若い組織というのもあるけど、荒削りでメンバーが尖りすぎで、少し危うさを感じます。

これに比べると #SNS医療のカタチ は大塚先生やヤンデル先生が踏んでる場数の違い、たらればさんのプロデュース力もあって、抜群の安定感があります。どれも上手く育って欲しいけど…

#こびナビ#みんパピ も初期はかなり危なっかしい(特に #こびナビ は一部メンバーの好戦的な姿勢がいつか致命傷を生むかと心配した)が何とか安定軌道に乗ったのは、個々のメンバーが正義感から突っ走るのを抑制できたからと思う。"組織"の看板を背負ったら、個人でのTwitterのやり方ではダメ。

— レ点🧬 (@m0370) March 25, 2022

ぼくもTwitterを15年近くやってきたので、レスバ(リプライによる自分の意見の応酬)や「論破」、あるいはエビデンス棒(データを持って相手を自分の意見に従わせようとする攻撃的な議論の姿勢)で反対意見を屈服させる試みは、効果が乏しいどころかむしろ逆効果で有害はことはなんとなく理解してきました。Twitterに不慣れだった頃は、議論すれば最終的にはそれを見ている周りの人は、どちらが「正しい意見」であるかを理解してくれると信じていた頃もありましたが、今ではそれは「甘い考え」だったという風に考えています。

情報戦で上手に国際世論を味方に引きつけたウクライナのように、戦わずして"場を支配する空気感"を醸成できれば、それが最上の発信力と思うんですが・・・。


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更新日:2022-03-26 閲覧数:419 views.