レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2021年 / 12月3日

唾液腺癌のHER2検査問題

唾液腺癌に対するトラスツズマブ(ハーセプチン)がドセタキセルとの併用で承認され保険適用されましたが、唾液腺癌に対するHER2検査体制の整備という問題が新たに浮上しているようです。

念願の唾液腺癌に対するトラスツズマブ承認

唾液腺癌は頭頚部癌の中でも希少な部類で、HER2陽性であることが多いことは以前から知られていたのにも関わらず抗HER2療法を保険診療で実施できないことが問題視されていましたが、ようやくその問題が解消されました。これはトラスツズマブの上市から20年経ってようやくとは言え、世界でも日本がトップレベルの速さで承認されたようです。

唾液腺癌のHER2検査にはコンパニオン検査縛り

しかし、現時点では唾液腺癌に対するHER2検査の体制が揃っていないため、せっかく承認された薬剤が非常に使いづらいという問題が起こっています。

唾液腺癌のトラスツズマブのHER2検査試薬はやはりコンパニオン検査でないとHER2陽性と取らないようです。そして免染の試薬(ベンタナ ultraView パスウェー HER2(4B5))は乳癌や胃癌等でも使われているため比較的実施できる施設や検査機関が多いのですが、免疫染色でHER2が2+だった際に必要となるISHはFISH不可でDISHのみ(ベンタナ DISH HER2キット)が認められています。

https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html

唾液腺癌のHER2検査はFISH不可、DISH限定

ややこしいことに、このDISH検査はまだ唾液腺癌に対しては保険承認されてないことから外注受託会社の多くは唾液腺癌のDISH検査の体制が準備できておらず、DISH検査を院内で行っている医療機関以外で唾液腺癌のHER2検査ができない問題が起こっているようです。

https://www.info.pmda.go.jp/tgo/pack/30300EZX00043000_A_01_02/

ベンタナDISH HER2キットが未だに乳癌胃癌のみなのは、ただ単に改訂されていないだけか、それともDISH検査が保険承認されてないのに薬の方にDISH縛りをつけてしまったのか…https://t.co/RVeZeLIcAu

— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) December 2, 2021

唾液腺癌のHUON-003試験はDISH限定

なぜDISH縛りがついたかというと、HUON-003試験が3+またか2+でDISH陽性の唾液腺癌を対象にリクルートしたからなのですが、結果的にHUON-003試験は15例全例が3+だったようです(そして15例ともDISHも陽性)。

臨床試験のお作法的にはDISHに限定するというのはわかるのですが、すでに乳癌や胃癌の世界でFISHがDISHと同じレベルで実用されておりその乖離が問題視されることはそれほど多くはないので、唾液腺癌を希少がんと考えているならDISHもOKにしてくれればよかったんですけどね…。


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更新日:2021-12-03 閲覧数:739 views.