レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2022年 / 7月30日

診療ガイドラインをネットで無償公開しない問題

ガイドライン 学会

ニセ医療本が出回る理由はいくつかあるけれど、医療界側の問題の1つは診療ガイドラインをネット上に無料公開しないこと。NCCN患者用のように平易なバージョンでも良い。標準治療をガイドラインとしてネット公開するだけで、何百人かの患者が闇治療にハマるのを防げるはずなのに。

ニセ医療本が出回る理由はいくつかあるけれど、医療界側の問題の1つは診療ガイドラインをネット上に無料公開しないこと。NCCN患者用のように平易なバージョンでも良い。標準治療をガイドラインとしてネット公開するだけで、何百人かの患者が闇治療にハマるのを防げるはずなのに。 #フェイクバスターズ

— レ点🧬 (@m0370) August 5, 2022

このツイートに対して「ガイドラインはMindsなどで無償公開されていう」というリプが多いけど、中身をよく見てみてほしい。ネット上で最新版が公開されているのは、ガイドライン全体から言えばごく一部に限られる。たとえば5大がんで最新の版が無償公開されているのは肺癌だけだと思う。乳癌や大腸癌は数年前の古い版が公開されているが、古い版を公開するのはかえって有害だったりもする。

最新版は公開していなくて最新版じゃないガイドラインをネットで無料公開するの、どうかと思うんですよね。一般の人が検索して見つけるのは古い情報ってことでしょ?? https://t.co/UEjicIjmk1

— ねこまた見習い💙стою з україною💛 (@vc_neco) July 12, 2022

日本の診療ガイドラインは各領域学会が発行しているものが大部分だ。学会は公的な役割を担う性格が強い組織だが私的団体であり、運営や活動を継続してゆくためにはその資金源をどのように獲得してゆくかという問題がある。お金がないと、出版物も出版できないし、学術集会を開催するコンベンションセンターも借りられないし、家賃もウェブサイトも維持できない。

会員から年会費を徴収しているが、学会に求められる活動が幅広くなるにつれて運営費用はますますかさみ、お金のやりくりは大変になるばかり。

NICEガイダンスなんて国家予算でやってますよね。日本は、必要ならみんな本買うだろうということなのか、国が各々の学会に診療ガイドラインを作るよう通達してますから、お金ない中みなさん苦心されてますよね…https://t.co/VjQ5efu4Dl

— уон (@Yoh_tw) July 12, 2022

国はMinds経由で頑張ってくれてるんですけどね。最新版は書籍見ないとだめってのはなんか片手落ちというか…学会が版権料を当てにせざるを得ない状況はどうにかしなくては。でも、もし学会と出版社の癒着(?)を解消してしまったら影響は大きいでしょうね。

— уон (@Yoh_tw) July 13, 2022

本来はガイドラインの整備なんてものはインフラの一種なので、国などが公的な資金を投じて整備すべきだと思うが、財務省の近年の活動から推測するに、ガイドラインの整備に十分な資金を投じてくれるとはとても思えない。

これ、他の疾患でも同じです。はっきり言って、学会が出版社に忖度しているため起きている現象ですが、改めていただきたいですよね。むしろ、ネット上のものこそ、常に最新のものに置き換わっていくべきものだと思います。 https://t.co/qk47LcmLDn

— 鈴木英介 (@acesuzuki) July 12, 2022

ガイドラインが無償でネット上で公開されていないために、医療者はお金を出してこのガイドライン冊子を購入している。しかし医療者と並んでこのガイドライン冊子を大量に購入しているのは製薬企業だったりする。製薬企業ももちろん自社製品の位置付けなどを知るためにガイドライン冊子を購入するのは当然なのだが、あまりにも多数の冊子を購入するために、ガイドラインを発行する学会と出版社にとってはガイドラインを購入してくれる企業はお得意様ということになる。

当然、そこには利害関係が生じる。テレビ局と大口スポンサーの関係のように、発行したガイドラインを大量に買ってもらうために、その製薬企業の製品に不利なことは言いにくくなり、またガイドラインでそのお得意様の製品に言及し推奨しようと言うインセンティブが働いてしまう。

学会は忖度しているわけではなくて金ヅルだと思ってますし、製薬企業がその冊子体を購入する形でスポンサーになるのでそこに巨大なCOIが生まれます。学会としては、企業に何千冊も買い上げてもらうためにはガイドラインでその社の製品に(好意的に)言及する必要がありますからね。

— レ点🧬 (@m0370) July 13, 2022

別にCOIがあること自体が全てダメだというわけではないが、ガイドライン委員の個人個人のCOIは厳しく問われるのに対して、ガイドライン委員会の上部組織である学会そのものに対して、ガイドライン冊子が無償で公開されていないことによってその内容の公平性が歪められかねない状態が放置されているのは、あまり直視されていないように思う。

ガイドライン委員の個々人のCOIが話題になってたけど、COIを心配するなら学会はGLのwebフリー公開でないことも問題にすべき。有償販売だから自社製品が収載された企業は研修等のために大量にGL冊子を購入するが、そこに製薬会社とGL委員会の間にCOIが生じる余地はないか。web公開ならその不安は減る。

— レ点🧬 (@m0370) July 13, 2019

そして最初の問題に戻り、結局学会は金がないのでガイドラインを売って生計を立てるしかないという問題に戻ってくるのだが。

学会がガイドラインを無償公開してるのは素晴らしくはあるのだが、学会は互助組織的な側面もありそのための会費徴収なので、会費値上げして無償公開ってのはちょっと違うと思う。受益者負担の原則からは国、ということになるのだが、ガイドラインも玉石混交で一律に国費負担というのも違うと思う。

— どぺにい (@doppel_surg) August 14, 2022

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更新日:2022-07-30 閲覧数:370 views.