レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2022年 / 4月11日

POLE変異は免疫チェックポイント阻害剤バイオマーカーとなるか問題

論文 がんゲノム

ニューオーリンズでAACR 2022が開催されています。バーチャルでの開催が2年続きだったので、リアルの開催は久しぶりのようです。

それにあわせてかどうか、POLE変異が免疫チェックポイント阻害剤の有効性を予測するバイオマーカーとなるかという問題について興味深い論文が掲載されていました。

PD-1 blockade in solid tumors with defects in polymerase epsilon
Abstract. Missense mutations in the polymerase epsilon (POLE) gene have been reported to generate proofreading defects resulting in an ultramutated genome and sensitize tumors to checkpoint blockade immunotherapy. However, many POLE mutated tumors do not respond to such treatment. To better understand the link between POLE mutation variants and response to immunotherapy, we. prospectively assessed the efficacy of nivolumab in a multicenter clinical trial in patients bearing advanced mismatch repair proficient POLE-mutated solid tumors. We found that only tumors harboring selective POLE pathogenic mutations in the DNA binding or catalytic site of the exonuclease domain presented high mutational burden with specific single base substitution signature, high T-cell infiltrates, and high response rate to anti-PD1 monotherapy. This study illustrates how specific DNA repair defects can sensitize to immunotherapy, POLE proofreading deficiency representing a novel tumor agnostic biomarker for response to PD-1 checkpoint blockade therapy.
https://aacrjournals.org/cancerdiscovery/article/doi/10.1158/2159-8290.CD-21-0521/694218/PD-1-blockade-in-solid-tumors-with-defects-in

POLE変異は免疫チェックポイント阻害剤バイオマーカーとなるか問題

POLEはICI奏効予測因子と言われていますが、実はポリメラーゼ校正でdeficient(POLE-pd)とproficient(POLE-pp)に分けられます。そして、どうやらPOLE-pdのみがバイオマーカーになりそうなのです。

何の略かというと、POLE-pd:Polymerase epsilon proofreading deficient(ポリメラーゼε校正が機能不全)とPOLE-pp:Polymerase epsilon proofreading proficient(ポリメラーゼε校正が有効)です。これは、ミスマッチ修復関連遺伝子の変異があっても病的意義を持つものとミスマッチ修復機能が保たれて事実上悪影響を示さないものがあるのと、ちょうど似た関係に当たります。

POLE-pdのみが免疫チェックポイント阻害剤と関連する

病的意義を持つPOLE-pdの場合は、腫瘍はTMBが高値(>25)となり、病理学的にはT細胞浸潤を認め、臨床的には免疫チェックポイント阻害剤の有効性が高い腫瘍となります。一方で、POLE-ppは実際のポリメラーゼ修復に影響がないためTMBは低く(<10)、免疫チェックポイント阻害剤の有効性予測因子ともなりません。同じPOLE変異と言っても、これら遺伝子異常修復機能への影響の有無で分ける必要があるようです。

この論文ではIMPACT試験43680例中1469例にPOLE変異を認め、うちpathogenic missenseはわずか167例(0.4%)となっています。しかしこのpathogenicと思われたものの中にもPOLE-pdとPOLE-ppがあります。臨床情報を追跡できたPOLE missenseは21例と決して症例数は多くありませんが、そのうちの約半数がPOLE-pd(同じ論文の中でもVUSをpp側に含めた箇所とpd側に含めた箇所がありVUSの扱いによっても変わってきます)。頻度だけ見ればMSI-Hよりさらに狭き門です。

POLE変異は免疫チェックポイント阻害剤バイオマーカーとなるか問題

臓器別の検討

治療効果を見ると、基本的には免疫チェックポイント阻害剤の奏効と関連がありそうと言えるのはPOLE-pd症例に限られるように見えます。これらの奏効例の臓器を見ると全て大腸癌子宮内膜癌で、胆膵胃は奏効率0%。肺や尿路はそもそもPOLE-pdが無い(supplemental data S1を見ると、非小細胞肺癌はPOLE-ppが65例に対してPOLE-pdは1例のみ)。子宮内膜癌ではPOLE-pdのほうがPOLE-ppより多く(49:37)、大腸癌でもPOLE-pdが比較的ある(11:25)のですが、他はほとんどの臓器でPOLE-pdは極めて稀です。ちなみに、原発巣と転移巣の比較ではPOLE-pdが比較的よく見られるのは原発巣(73:325)ですが、転移巣では殆どがPOLE-ppとなっています。

確かにNatureに掲載された大腸癌の網羅解析論文ではhypermutationに関連するPOLEの重要性が非常に大きく取り上げられ、同じ号に載った別の論部はPOLEだけに着目したものがありましたが、消化器癌以外ではPOLEの話はあまり聞きません。

POLEとTMBとの関連

TMBとの関連では、上記と同じくsupplemental data S1に詳細が書かれており、Ultra high mutational burden(TMB>100/Mb、いわゆるhyypermutation)ではPOLE変異の過半数がPOLE-pd(57:24)ですが。10以上100未満のTMB-Highでは13:162と1割を下回り、TMB<10/MbではPOLE-ppが178例に対してPOLE-pdはわずか3例となります。TMBの中央値はPOLE-pdで214.8/Mb(平均は226.4/Mb)と極めて高いのに対してPOLE-ppは10.5/Mb(平均は30.3Mb)です。TMBが低いPOLE変異は多くがPOLE-ppでバイオマーカーとしての異議が乏しそうです。

POLE変異は免疫チェックポイント阻害剤バイオマーカーとなるか問題

極めてTMBが高くなっているのはV411Lの症例で、提示されている3症例のうちの2症例はいずれもTMBが400/Mb程度となっています。この2例はPRですが残り1例はTMBが70程度ですがPDです。他にS459F、P286RがTMB 100/Mb程度のようです。P286Rの1例はニボルマブでCRになっていますが、もう1例はP286RでもSDだったようですね。

POLEとMSIとの関連

MSIとの関連では、MSI-Hで6:67、MSSで67:252と、ややMSSのほうでPOLE-pdの割合が高くなっていますが、mutually exclusiveとも完全に独立とも言えないくらいの微妙な偏り。いちおう有意差ありとなっています。昔の大腸癌ではTMBが高いのはMSIかPOLEかどちらかで、両者は同時には起こらないのが普通だ、という話もあったけどそういうわけでもなさそうですね。

その他の背景因子との関連

人種差はあまりなさそうです。性別では子宮体癌に引っ張られてPOLE-pdは女性側で多く検出されています。年齢はPOLE-pdの中央値が57歳(POLE-ppは66歳)と、若干若い方に多く見られます。

POLEのVAFとTMBや治療効果の関連

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症例数が少ないのでこれだけで判断するのは難しそうです。ただし、VAFが10%以上ある群でTMBが高く反応性が良いということは示唆されるかもしれません(有意差無し)。

POLE単独では免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカーとならない?

ちなみに、本論文でもPOLE-pdでニボルマブ有効とされた症例もほぼ全例がTMB-highなんですよね。詳細を見ると、有効群でTMB高値でないのは1例だけあるのですが、この症例には注釈記号が付いていてそれをよく見てみるとlow cellularityのため参考値、と書かれています。なのでPOLE変異をICIバイオマーカーと考えるのは勇み足かもしれないとも思っています(特にTMB高値を示さない例では)。

少なくとも、現状ではPOLEのmissense変異のみでMSIもTMB高値も伴わないものは免疫チェックポイント阻害剤を強く推奨する根拠が乏しいと言えるのではないでしょうか。今回の検討は他の臨床試験で集積していたデータベースを元に行った後方視的な検討なので、将来的にはPOLE変異症例を集めた前向き試験などが出てくればより強い根拠を以てPOLE変異のうちどのようなコホートに免疫チェックポイント阻害剤を推奨すべきかということがハッキリしてきそうで、それまでは「待ち」かもしれませんね。

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