レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2021年 / 8月2日

Twitterアンケート、誰がアンケートを実施するかによるバイアスの観察記録

Twitterアンケートは人々の声を広く集めるのに簡単で便利ですが、十分な回答数が集まったとしても「誰がアンケートに答えたのか」という回答の母集団により結果が大きく変動する可能性があります。つまりアンケートの発起人によってサンプリングにバイアスが生じる可能性があります。

今回偶然に(?)母集団を形成するフォロワーの性質の違いによりアンケート結果が変わるかどうかの経過を見ることができたので、その観察結果を記録しておきます。

はじまり

下記にあるように、2つのアカウントが類似のアンケートを実施しました。

5b71374e3e_retopsnart.jpg

片方のretopsnartさんは、普段からワクチン実施に疑問を投げかけているアカウントで、若者は軽症で終わることが多いし第5波は死者も増えていないので新型コロナウイルスのワクチン接種は不要という主張をしているアカウントです。

5b71374e3e_m0370.jpg

もう片方のm0370のほうは、自分でもワクチン接種を受けていますし、現状では新型コロナウイルス感染症に対して(たとえデルタ株であっても)ワクチン接種が最も流行阻止に有効な手段だと思っているので周囲にも積極的にワクチン接種を勧めています。

フォロワー数は約24,000と22,000で比較的近い数字です。アンケートは回答終了までの時間も設定することができますが、金曜日(2021年7月30日夕方)から約2日間でアンケート実施期間もほぼ同等です。

改めてお聞きします。あなたは新型コロナワクチンを接種しますか?
(回答したらRTお願いします)

— Transporter (@retopsnart) July 30, 2021

あなたは新型コロナワクチンを接種しますか?
(回答したらRTお願いします)

— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) July 30, 2021

途中経過

母集団を形成するフォロワーの性質の違いによりアンケート結果が変わるかどうかの実験中です(現在進行中) pic.twitter.com/5BrfWIChTC

— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) July 30, 2021

序盤では向こうのアンケートでは「いいえ」が80%以上でほとんどがワクチン反対、こちらのアンケートでは逆に「はい」が94%とほとんどの人がワクチン接種をすると答えています。この頃は両方ともまだアンケートの回答数が増えていっている最中でしたので、おそらくあちらのアンケートは反ワクチンコミュニティ内で拡散されていたのに対して、こちらのアンケートは医療従事者などの比率が高く、このような極端に真反対の結果になったのだと思われます。

だいぶ「はい」が増えましたね~ pic.twitter.com/AkEaYYqS0o

— お こ ま (@tyatibi37) July 31, 2021

その後はどちらのアンケートも徐々にRTされて、フォロワーや普段自分が接しているコミュニティ以外のツイッタラーも回答に加わってくるようになると、どちらのアンケートも徐々に中庸化してきます。向こうのアンケートは「はい」の割合が徐々に増えてくるし、こちらのアンケートにも「いいえ」が増えてきます。

いつの間にか「はい」が上回ってますね…… pic.twitter.com/npToHGfZ7c

— お こ ま (@tyatibi37) July 31, 2021

アンケート開始から24時間ほど経つと概ね回答比率の偏りは固定化されてきます。多数の回答者によってRTされたこともあって、両方とものアンケートに答えた人も多くなってきていると思われます。

他の集団では

新型コロナワクチン接種状況に関するアンケートにご協力ください〜 🙇‍♂️

【質問】あなたのワクチン接種状況を教えてください

— やもさん (@17yamo3) July 29, 2021

ちなみに、質問文は異なるものの類似の主旨のアンケートを実施されている人もいました。こちらでは株式取引・資産運用などをツイートされているフォロワーが多く、おそらく先に述べた2つのアンケートとはまた違った対象集団の意見が反映されていそうです。結果の比率は概ね先述の2つのアンケートの中間で、これが日本人の平均像に一番近いかもしれません。

ついていたコメント

こちらのコメントについていた意見としては、すでにワクチンを打ったという意見も比較的多く、1回目を済ませて2回目を待っているという人もいますが、「打つつもりだが予約がまだ取れない」という声も少なくありませんでした。職域接種の対象となるような大企業勤めでもない65歳未満の方は自治体集団接種を待つしかありませんが、自治体集団接種の進み具合はそれこそ地域によって全く異なるので、こればかりはどうにもしようがありません。

なお、リプライの中に「日本のワクチン接種の進行状況が1回接種で3割台なのに、このアンケートの回答では9割近くが『はい』を選んでいるのはおかしい」というものがありましたが、このアンケートはすでに接種を済ませた人だけでなく今後打ちたい人も「はい」を選ぶことになるので別に矛盾はないですね。

一方でretopsnartさんのほうについていたコメントは、「いいえ」が9割を超えていた序盤ではワクチンを批判・揶揄するツイートが大部分を占めていましたが、徐々に「はい」が増えてくると、向こうの解釈では、こちらがワクチン推奨派に「動員」をかけて結果を歪めてしまったということになっているようです(たしかにRTはしたけど)。地方議会議員の選挙でも敗退した議員の支持者が「不正選挙だ」と訴えている場面を目にしますが、それと同じように見えているのでしょうか。

最終結果

ちなみに、このアカウントにはブロックされてしまいました。

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しかしTwitterではブロックしても他のアカウントからツイートが見られるのであまり意味がないですね。ついでにいうと、このサイトで使用しているpukiwikiプラグインでもブロックされている相手のツイートを表示できるようです(いま知りました)。他のアカウントからのスクリーンショットを見ると、最終結果はこのようになったようです。

5b71374e3e_retopsnart_last.jpg
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最終結果を見ても、いくらか差は縮まったとはいえ、やはり結果にかなり差があります。Twitterのアンケートはフォロワーを介してRTなどで広まってゆきますので、特に序盤にどのようなフォロワーを持っている人がそのアンケートを開始するかで大きく結果が異なってくるようです。

フォロワー数が少ないアカウントが実施するアンケートや、回答数が100未満くらいの小規模なアンケートではそういう傾向が強く現れるのは想像しやすいのですが、フォロワー数も回答数も5桁になってくると概ね「SNSの平均的利用者像」に近い回答に収束してくるのかと思っていただけに、これだけの回答数があってもアンケートの実施者によって回答の偏りの影響を打ち消せないというのは大変勉強になります。

今後もTwitterのアンケートを見るときは、回答数が十分あるのかということに加えて、どんなアカウントがそのアンケートを設置しているか、どのようなフォロワー層が主に回答しているか、ということにも注意して結果を解釈する必要があると言えそうです。

まとめ


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更新日:2021-08-02 閲覧数:1260 views.