レ点腫瘍学ノート

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大腸癌

大腸癌術後および術後化学療法後の血中循環腫瘍関連DNA(ctDNA)による予後予測

新規に診断されたstage IIIの大腸癌患者を対象にオーストラリアで行われた研究。まず事前準備として大腸癌検体をNGSで解析して、15種類の遺伝子からそれぞれの患者の切除検体における体細胞変異を検出しておきます。この時複数の遺伝子に異常があれば血中リンパ球DNAとのアレル頻度の差が最も大きいものを採用します。

術後(4〜10週間で術後化学療法開始前)および術後化学療法後(最終サイクルから6週間以内)に血液中のctDNAを検査し、それぞれ陽性群と陰性群に分けて予後を追跡する観察研究として行われました。

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この結果から、術後早期からctDNAが陽性となった症例や術後化学療法終了後にctDNAが陽性となっていた症例では再発率が高いことが明らかになりました。特に術後化学療法終了後のctDNAが陽性であった場合は陰性であった場合に比べて再発率が常に高くなりました(30% vs 77%、3年再発率HR6.8)。

また、このctDNAが陽性になるのは画像的に再発が明らかになるより早い段階であった症例も見られ、早期発見に有用である可能性も示されました(再発を早期に発見することが予後改善に寄与するかどうかはまた別の話。e.g.卵巣癌のCA125モニタリングの例)。

この腫瘍検体からの15遺伝子の選択についてはこちらの抄録を参照。
https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2016.34.15_suppl.e15131

/JAMA Oncol. 2019

Circulating Tumor DNA Analyses as Markers of Recurrence Risk and Therapy Benefit in Colon Cancer
This multicenter cohort study assesses whether serial postsurgical and postchemotherapy analyses of circulating tumor DNA levels could provide a real-time indication of adjuvant therapy efficacy in patients with stage III colon cancer.
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/article-abstract/2752788

これまで、大腸癌全体としては術後化学療法の有効性は示されていたものの、真に再発リスクが高い患者を選び出すことは困難でした。ctDNAでの再発高リスク群の拾い上げ手法が今後盛んに研究されてゆくことになりそうです。


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更新日:2020-04-03 閲覧数:1371 views.