レ点腫瘍学ノート

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日記/20200220/アライブ感想/1から続く

腫瘍内科とは何かを紹介した第1回に続いて、第2回以降はどうやら放送回ごとにテーマが設定されていて、腫瘍内科やがん治療にかかわる話題を少しづつ取り上げる方針のようです。

アライブ感想 第2回

第2回では、男性乳癌と若年乳癌の患者が登場します。

男性乳癌

男性乳癌は乳癌患者の1%程度と非常に少ない割合ではありますが、もともとの乳癌患者の多さを考えれば全くいないという疾患でもありません。乳腺外科は男性にとって産婦人科と並んで「受診しにくい診療科」の一つですから、男性乳癌の患者は病院受診の機会を逃したり、いわゆる「がん難民」になりやすいという問題を抱えています。

HBOC(遺伝性乳癌卵巣癌症候群)

この男性乳癌の患者は母親も乳癌であったことから遺伝性乳癌(つまりHBOC=遺伝性乳癌卵巣癌症候群)の可能性があることを説明されます。HBOCであれば血縁者もその疾患を持っている可能性が出てくるので、この患者は疎遠になっている娘にそのことを伝えるかどうかを悩みます。

若年乳癌、AYA世代

また若年乳癌はAYA世代(思春期および若年世代、Adolescent and Young Adult)をテーマとしています。若年世代はがん治療そのものだけでなく進学や就労や結婚出産といった人生イベントも密接に絡む世代だけに、がん患者の治療方針を立てる上で配慮すべき因子が増えますから、近年とくにその重要性が認められてきています(重要性が認められるというのは裏を返せばがん治療が進歩してきていることの証明でもあります。なにしろ、少し前であればがんである時点で長くは生きられず、進学就労結婚出産など全て「諦める」ほか無かった時代がありましたから…)。この患者も後に卵巣凍結保存を行って将来の妊孕性を温存する選択をしています。ちなみにこの場面で出てきたオレンジ色の冊子は、がん研有明病院の妊孕性温存グループが作成した「妊孕性温存ハンドブック」が出てきています。

男性乳癌の患者にHBOCの説明をするなら若年乳癌の患者にもその話はしなくてよかったのか(テレビに出ていないところでしているのだと思いますが)、またここまで取り上げるなら遺伝カウンセラー役も出せばよかったのになと感じました。

しかし、テレビドラマに男性乳癌の患者が登場したのは日本で初めてのことではないでしょうか。外来化学療法室でも先輩がん患者との触れ合いが描かれたりして、この患者は第3回以降もレギャラーメンバーになってもらう価値はあったと思いますが、残念ながらどうやら第3回以降は登場しないようです(若年乳癌患者役の佐倉莉子さんは出てきます)。

(気が向けば続く)


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更新日:2020-02-20 閲覧数:1131 views.