レ点腫瘍学ノート

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update2019

J-FORCE試験

オランザピン5mgの予防的投与の有効性を示した日本からのエビデンス

ASCO2019でbest of ASCO、highlights of the dayに選ばれていた化学療法誘発性悪心嘔吐へのオランザピン5mg予防投与のJ-FORCE試験が、いつの間にかLancet Oncolに出てましたね。50mg/m2のCDDPを含むレジメンに対する標準予防的制吐療法を実施する群とそれにオランザピン5mgをday1-4まで上乗せすることを比較した第2相試験です。

Olanzapine 5 mg plus standard antiemetic therapy for the prevention of chemotherapy-induced nausea and vomiting (J-FORCE): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial - PubMed
Japan Agency for Medical Research and Development.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31838011

CINVの臨床試験はアンスラサイクリンが対象になることが多いけど本試験はCDDP(50mg/m2以上)が対象です。それから主要評価項目は24時間以降の「遅発性嘔吐」の抑制率です。オランザピンってレスキューで使ってると効果が出るまで早い印象だけど、この試験はday1-4まで投与して遅発相を評価しています。

眠気はそれほど問題にならなさそう

この試験、意外なのは「昼間の眠気」の発生頻度はプラセボ群とあまり差がないことですね。オランザピンって眠気が強そうなイメージだけど、sleepinessのday2-3のところはほとんど差がありません。一方で「良眠が得られた割合」はオランザピン群が2割以上多い。眠くならないのによく眠れる、ってすごくないですか。

ただ、ちょっとよくわからんのはASCO2019の資料を見ると、Sleepinessは実薬群とプラセボ群で大差ないけどSomnolenceは10%くらいの差がある。

なお、以前はオランザピンはアプレピタントの置き換えにできるかという検討も多かったのに対して、今回のはアプレピタントの代替ではなく上乗せなので、少し状況が違います。また諸外国では必ずしもオランザピンは糖尿病には禁忌とはなっていないこともあるようですが、本邦では過去に死亡例が生じたこともあって糖尿病患者にはオランザピンは禁忌なので注意が必要です。

中催吐リスク化学療法でのパロノセトロン併用下でのアプレピタント省略の可能性

JSMO2019のミニオーラルセッションM02-8-3です。こちらはJSMO2019で京都府立医大から発表されていたものですが、原時点で学会発表のみで論文化はまだのようです。(話はそれますが、JSMOをはじめとして日本の学会は早く発表のアブストラクトにリンクを張れるようにして欲しいですね…)

MEC(中催吐リスク)化学療法の5-HT3拮抗剤+ステロイドでは遅発期において嘔吐制御率は高い(80%以上)のだが悪心制御率は高くありません(約60%)。ただ現行のガイドラインなどに採用されているエビデンスは5-HT3拮抗剤の種類による違いは明確に示されていません。そこでMECでの5-HT3拮抗剤にパロノセトロンを選択した場合でも、パロノセトロン+ステロイドにアプレピタントの上乗せが必要なのかどうかを後方視的にプロペンシティ解析を用いて検討しています。なお、データは京都府立医大の外来化学療法部で質問紙法(アンケート)で2012年から継続的に集積しているようです。

その結果では、急性/遅発性および悪心/嘔吐の2×2の4項目で評価していずれの項目でもアプレピタントの有無は制御率に相関がなかったようです。アプレピタントの上乗せ効果が悪心嘔吐の制御率に関与しなかったことや、パロノセトロン+ステロイドで悪心制御ができない症例ではアプレピタント以外の要因を考慮すべき可能性などがあるのではないかと思われます。

ちなみに、アプレピタントとパロノセトロンの両者に共通する問題点の一つは1回あたり1.2〜1.6万円と高コストであることですが、グラニセトロンは後発品に置き換わっていてかなり安くなっているので、アプレピタントを省略するためにグラニセトロンをパロノセトロンに置き換えるとかえって高コストになる可能性があります。

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更新日:2019-12-16 閲覧数:1264 views.