レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2022年 / 10月21日

がん診療レジデントマニュアル第9版

じゃーん!バイブルを入手してしまった。 #がん診療レジデントマニュアル pic.twitter.com/msv4AMfxOP

— レ点🧬 (@m0370) October 21, 2022

2022年10月15日、3年ごとに秋に改訂される医学書院のがん診療レジデントマニュアル第9版が発売されました。これは、腫瘍内科の専門医であるがん薬物療法専門医の認定試験を受ける受験生たちの間で「これに載っていることを全て覚えれば受かる」と代々バイブルのように言われてきた本です。

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改訂のたびに徐々に内容が増えて、今回はページ数も価格も約10%アップで歴代最大の重量になりました。手に取るとずっしりと重たい。

医学書院のまわし者説がある。 #がん診療レジデントマニュアル pic.twitter.com/s3Ek16ywUk

— レ点🧬 (@m0370) October 21, 2022

改訂されたらいつも改訂された箇所についてチェックしているのですが、今回はさすがに内容量も多くて全てをチェックすることは難しそうです。目立つところだけ順番に見てゆきました。

参考文献にPMIDが付くようになった

まず気がついたのは、これまで参考文献として載っていたところにPMIDが加わっていることです。

がん診療レジデントマニュアル第9版は、参考文献にPMIDがつくようになってる!! pic.twitter.com/XOIKY8BbI5

— レ点🧬 (@m0370) October 21, 2022

PMIDがわかればPubmedのサイトから容易に元論文に当たることができるようになります。これは普段の診療においても重要ですし、がん薬物療法専門医の出願時に締め切り匂われながら慌てて書くことの少なくない病歴要約の考察欄を作成する際にも大きな助けになりそうです。

章立ては概ね第8版を踏襲

章立ては概ね第8版と同じです。以前は甲状腺癌と頭頚部癌の章が統合されたり骨髄移植の章が無くなったりという変化がありましたが、第9版は第8版から大きな変更はなさそうです。

がんゲノム医療

変更された点としては、第9版ではirAEの章の後ろに「がんゲノム医療」が加わり、一方で巻末の体表面積換算表が削除された点でしょうか。これは妥当な変更と思います。

ちなみに、がんゲノム医療の章といってもパネル検査を行った結果に基づく治療について解説しているというよりはがんゲノム医療の保険制度やがんゲノム医療中核拠点病院・エキスパートパネルなど診療体制の制度面の解説が主眼のようです。MSI-Hは胃癌・大腸癌および婦人科の章で触れられているが他で記載は見られず、TMB-HやNTRKなどもほぼ記載がなく、これはやや残念です(TMBは承認時期的な問題もあるか)。

遺伝性腫瘍

遺伝性腫瘍は単独の章ができても良いくらい腫瘍内科医にとっては重要なトピックスの一つですが、今回のがん診療レジデントマニュアル第9版での扱いはそれほど大きくありません。

遺伝性腫瘍や遺伝カウンセリングは「乳癌」の中の一段落になっていて、RRSOなども乳癌の章にあります。目次にも書かれていないのでちょっと見つけにくいかも?

今回の改訂は全体にページ数がかなり厳しく、いかに全体のページ数を増やさずに内容のクオリティを保つかということに苦心した様子があちこちに見られます。前書きにも「増え続けるがん情報の中で全てを網羅することはできない、自分でアクセスできる情報にはインターネットなどを駆使して各自で情報を取得してもらうことを考えつつ、いかに内容の取捨選択するか」ということに言及されています。したがって、もっと盛り込みたいがスペースがない、という事情があったものと思われます。

限られたページ数を削減するという意味では、(賛否両論あるとは思うが)造血器腫瘍は別冊の血液病レジデントマニュアルがあるのだからがん診療レジデントマニュアルからは割愛してしまうというのも一つかもしれん。もはや固形がんと血液腫瘍を1冊で網羅しようという時代ではないのでは、、

— レ点🧬 (@m0370) October 21, 2022

情報が少し古い点がある?

あれ?情報が古い…。第8版は「その年のASCOの直前」くらいまでの情報が掲載されていたが、食道癌ペムブロリズマブFPが不可ってことは2021年12月以前じゃん…これは🤔ウーム pic.twitter.com/mOXXYLV7gk

— レ点🧬 (@m0370) October 21, 2022

掲載されている内容は少し情報が古いような気がします。最近はがんの標準治療も毎月のようにどこかの領域で書き換えられてゆくため、これにキャッチアップしてゆくのは大変ですし、紙媒体で書籍化するとなると印刷出版のタイムラグもあってその困難はなおさらではありますが、内容が最新ではないことに注意しておく必要はありそうです。

今回の第9版は食道癌のペムブロリズマブ+FP療法や胃癌のニボルマブ+SOX療法はカバーされていません。となると、少なくとも2021年12月に承認された治療の情報はカバーできていないということになります。前版と比べてもこれは最新情報をカバーできていないように感じました。

たとえば第7版のツイートは下記のように書いてあって出版年の6月に開催されるASCOの直前までの内容はカバーされていたようです。

えーっと、2016年春(ASCO前?)までの内容なのね。だから乳腺ddACジーラスタ、肺と大腸のRAM、メラノーマのイピニボ併用は載ってるけど、肺1stニボは載ってない。パルボシクリブは2016春までに出ていたはずだけど載ってないなぁ。#がん診療レジデントマニュアル

— レ点🧬 (@m0370) October 17, 2016

それと比べると今回は半年程度の「情報の遅れ」があることは否めません。がん薬物療法専門医試験の勉強でこの本を活用する場合は、この点には注意が必要です。ただし、臨床腫瘍学のテキストでちょうど3年ごとに定期的に改訂され続けているものはそう多くはないことを考えると、この遅れを差し引いても「かなり追いついている方」であることは確かです。

コンパクトに必要最小限

このように、少ないページ数にできるだけたくさんの情報を盛り込むのは容易ではありませんが、コンパクトさの中にこれだけ網羅すれば専門医試験にも合格できる水準の情報量が詰め込まれた本は本邦唯一です。がん薬物療法専門医試験を受験する人はもちろん、そうでなくてもがん診療に日常的に携わる医療従事者にとっては一冊持っておいても損は無い、名シリーズであることは間違いないでしょう。

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