レ点腫瘍学ノート

2020-09-19

PPIと免疫チェックポイント阻害剤

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プロトンポンプ阻害剤が免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の有効性に悪影響を及ぼすかもしれないと言う報告が出てきました。これまでにも抗菌薬の投与はICIの有効性を落とすということが言われていましたが、ICIとプロトンポンプ阻害剤の関係についての報告が出て注目を集めています。

PPIの使用はアテゾリズマブ投与患者の死亡リスク上昇に関与する

尿路上皮癌に対するアテゾリズマブの臨床試験(IMvigor210試験、IMvigor211試験)のプールされたデータを元に、アテゾリズマブの投与開始前後30日の期間にPPIを使用したかどうかを検討されました。化学療法群ではPPIの使用とOSに相関がありませんでしたが、アテゾリズマブ群ではOSもPFSも有意に悪いという結果が出ています。/Clinical Cancer Research

Purpose: Emerging evidence indicates that gut microbiota dysbiosis can reduce the effectiveness of immune checkpoint inhibitors (ICI). Proton pump inhibitors (PPI) are known to induce gut microbiota changes. However, little is known on the effects of PPIs on outcomes with ICI therapy, and it has not been explored in urothelial cancer treatment. Experimental Design: Individual–participant data from the advanced urothelial cancer trials, IMvigor210 (single-arm atezolizumab trial, n = 429) and IMvigor211 (phase III randomized trial of atezolizumab vs. chemotherapy, n = 931) were pooled in a Cox proportional hazard analysis assessing the association between PPI use and overall survival (OS) and progression-free survival (PFS). PPI use was defined as any PPI administration between 30 days prior and 30 days after treatment initiation. Results: Of the 1,360 participants, 471 (35%) received a PPI within the 60-day window. PPI use was associated with significantly worse OS [HR (95% confidence interval (CI)) = 1.52 (1.27–1.83), P < 0.001] and PFS [1.38 (1.18–1.62), P < 0.001] with atezolizumab, but not chemotherapy ( P > 0.05). In the randomized cohort of IMvigor211, the OS treatment effect [HR (95% CI)] of atezolizumab versus chemotherapy was 1.04 (0.81–1.34) for PPI users, compared with 0.69 (0.56–0.84) for PPI nonusers ( P interaction = 0.013). Similar associations were noted in the PD-L1 IC2/3 population. Conclusions: This study indicates PPI use is a negative prognostic marker in advanced urothelial carcinoma treated with ICI therapy, but not chemotherapy. Furthermore, the analysis suggests PPIs influence the magnitude of ICI efficacy, and this warrants further investigation.
https://clincancerres.aacrjournals.org/content/early/2020/09/11/1078-0432.CCR-20-1876

非小細胞肺癌での報告

実はPPIとアテゾリズマブの関係の報告は初めてではなかったようで(今回の報告を知ってから探したところ見つかったのですが)、非小細胞肺癌でも似た報告があるようです。こちらの肺癌の検討では抗菌薬の使用有無とPPIの使用有無が並行して解析されており、抗菌薬もPPIも使用している患者の生存曲線は不使用よりも下を行っています。/Ann Oncol

上図でATB(antibiotics)とPPIの使用と不使用の生存曲線をアテゾリズマブ群とドセタキセル群の各群内で比較しています。ドセタキセル群ではATB使用、PPI使用の実線の生存曲線はいずれも若干下を行ってますが、有意差はなさそうです。一方でアテゾリズマブ群ではATB使用もPPI使用もいずれも有意差を持って下を行っています。抗菌薬もPPIも免疫チェックポイント阻害剤の有効性に悪影響を及ぼすと考えられます。

Preclinical data have shown that proton pump inhibitors (PPI) can modulate the microbiome, and single-arm studies suggested that antibiotics (ATB) may…
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0923753420359275

昨年のASCO2019にも単施設でプロトンポンプ阻害剤とICIの関係を検討した発表がありましたが、その時点では小規模な報告だったこともあり大きな注目を集めていなかったようでした。

Request PDF | Proton pump inhibitors and response to immune check-point inhibitors: Single center study. | e14092 Background: Checkpoint inhibitors (blocking antibodies to PD-1, PD-L1, CTLA-4) have proven effective against several tumor types. While the... | Find, read and cite all the research you need on ResearchGate
https://www.researchgate.net/publication/333409389_Proton_pump_inhibitors_and_response_to_immune_check-point_inhibitors_Single_center_study

腸内細菌叢とPPIとICI

そもそも、プロトンポンプ阻害剤が腸内細菌層に影響すると言う事は数年前から報告が出ていました。PPIの使用はクロストリジウム感染症などのリスク因子でもあり、腸内細菌に影響を及ぼしているのは間違いなさそうです。

腸内細菌叢の多様性(エントロピー)を評価する方法としてシャノン指数という指数を用いることがありますが、PPI服用中の患者ではこの値が低下して腸内細菌の多様性が失われている可能性があるほか、腸球菌や特定の大腸菌などが増えていることも示唆される報告もありました。/Gut

The differences between PPI users and non-users observed in this study are consistently associated with changes towards a less healthy gut microbiome. These differences are in line with known changes that predispose to C. difficile infections and can potentially explain the increased risk of enteric …
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26657899/

腸内細菌の多様性はICIの有効性に深く影響することが知られています。2017年のASCO-GUで過去1ヶ月以内に抗菌薬の投与を受けた患者ではニボルマブの奏効率が低いことが示唆されたほか、同じ年のASCO-SITCでも腸内細菌の多様性と抗PD-1抗体療法の有効性の関係についての発表が相次いでいます。詳しくは下のページを見てください。

抗PD-1抗体と腸内細菌叢の関連について我々のからだは約37兆個の細胞でできているのに対して我々の消化管の中には100兆個もの細菌がいると言われます。腸内細菌叢は暗黒大陸に例えられることもあるほど未知のことが多く、まだその多くは研究途上にあります。しかし腸内細菌が代謝や免疫をはじめとして多くの面で我々の健康に関与していることは間違い…

今後の研究の盛り上がりに期待

ICIが登場した当初はステロイドの使用が有効性に悪影響を及ぼすのではないかと言うことが非常に心配されておりました。ステロイドは必要あれば投与せざるを得ない薬剤ですが、抗菌薬は状況によっては投与回避することができ、PPIに至っては必要性がないのに投与されているという患者も少なくない状況です。今後PPIの投与は治療成績に悪影響を及ぼすということが認識されるようになれば、今後はこれらの薬剤の投与を避けることが主流になってくるかもしれません。

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