レ点腫瘍学ノート

大腸癌/CQ/原発巣左右局在 の履歴ソース(No.1)

#author("2018-09-09T08:01:24+09:00","default:tgoto","tgoto")
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近年、大腸癌の化学療法の奏効性は原発巣の左右局在によって変わることが知られており、多数のエビデンスが構築されつつある状態である。これらの左右局在による予後の違いがガイドラインとして整備されてESMOコンセンサスガイドラインなどが作られてゆく。また国内でも2019年の大腸がん治療ガイドライン改訂から原発巣の左右局在により推奨治療が変わる状態となる予定である(Votingによって治療を選択する神戸アルゴリズム)。

*大腸癌の原発巣の遺伝子異常の差異
左右での分子遺伝学的プロファイルの違いと、そのうちRAS・RAF・MSSの大腸癌に限定したサブ解析の報告。Wnt pathwayの異常は左側結腸癌に多く、EGFR抗体薬の奏効予測に関連があるかもしれない。またこの文献で取り上げられているPETACC-3臨床試験で、大腸癌の左右局在により差があることから左右局在のサブ解析が増えるトレンドが始まった。
Ann Oncol 2014 1995-2001

Loree 局在・局所再発については進行が員

*大腸癌の再発率は原発巣の左右局在では差はないがOSは左側原発で良好である
Lancet Oncol 2016 1480-1482
その差はSAR(survival after recurrence)の長さによる。右側原発の大腸癌は再発後の生存期間が短い。
EJC 2017 87-98

**左右局在に関する予後のシステマチックレビューとメタ解析(海外)
66の臨床試験の143万症例以上を統合した大規模なメタ解析。
病期、人種、術後化学療法、臨床試験の実施時期、臨床試験の規模などにかかわらず、一貫して右側大腸は予後が不良である(左側はHR 0.82)
JAMA Oncol 2017;211
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27787550

**左右局在に関する予後のシステマチックレビューとメタ解析(日本)
JFMC 7,15,33の3つの第3相臨床試験に関する4029症例の左右別予後の統合解析。DFSに大きな差はないが、死亡リスクは19.7%増加する(HR 1.197)。
Cancer Medicine 2017;2523
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28948714

*一次治療への抗VEGF抗体

切除不能大腸癌の一次治療に関するベバシズマブ上乗せに関する主な大規模臨床試験は、(1)AVF2107試験、(2)NO16966試験、(3)Greek試験、(4)MAX試験、(5)AVEX試験などがある。このうちMAX試験とAVEX試験は高齢者・フレイルを対象とした臨床試験である。
NEJM 2004 2375 Hurwitz et al.

**(1)AVF2017試験 IFL+Bev vs. IFL
NEJM 2004 2375 Hurwitz et al.

AVF2107試験では二次治療でのベバシズマブ上乗せ(つまりBBP、bevacizumab beyond PD)が認められており、実際に403人中100人がBBPを行ったとされている。

*一次治療への抗EGFR抗体

一次治療への抗EGFR抗体の上乗せに関する主な大規模臨床試験は、(1)CRYSTAL試験、(2)PRIME試験がある。

**CRYSTAL試験 FOLFIRI+Cet vs. FOLFIRI
JCO 2015 692-700.
左右別解析 JAMA Oncol 2016 Tejpar.

**PRIME試験
RAS野生型に限定するとOSを20.2ヶ月→28.4ヶ月に延長した
NEJM 2013
左右別解析 Ann Oncol 2017 Boeckx et al.
左右別解析では、右側結腸でEGFRmabの上乗せメリットがない(OS・PFS・RRで有意差がない)ことが明らかにされた。

*一次治療の抗VEGF抗体と抗EGFR抗体の比較

一次治療のVEGFmabとEGFRmabの主なhead to head試験は、(1)FIRE-3試験、(2)CALGB80405試験、(3)PEAK試験がある。このうちでOSまたはPFSで有意差が付いたのは、PEAK試験のPFSとFIRE-3試験のOSだけで、他のOSとPFSでは有意な差は見られなかった。

JAMA Oncol 2017;2392

**FIRE-3試験の左右別解析
Jama Oncol 2016 Tepjar et al. 全体ではEGFRmabでOSが有意に長いが右側ではOS延長の効果は無し。

**CALGB80405試験の左右別解析
ESMO 2016 Lenz et al. 右側では圧倒的にBevが良い。

**PEAK試験の左右差解析
Ann Oncol 2017 Boeckx et al. 右側でPFSの有意差なし。

**左側結腸では抗EGFR抗体の有効性が高い
Ann Oncol 2017;1713
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28407110

**奏効率の比較
Eur J Cancer 2017;87
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29454743

*EGFRmabのrechallenging(PD後の再投与)
再投与によりOSが23.5ヶ月→45ヶ月まで延長した
ESMO-GI 2017 S.Siena et al.

*二次治療の抗EGFR抗体

**20050181試験
FOLFIRI+Pani vs. FOLFIRI
ESMO2016 Boekcx et al.
左右別解析 左ではRRが13.5%→50.7%まで上昇するが、PFSとOSはFOLFIRI単独と有意差は無かった。右側ではOS・PFS・RRのいずれも有意差は無し。EGFRmabの左右局在による有効性の違いは、二次治療ではまだ証明されていない。

*二次治療の抗VEGF抗体

二次治療のVEGFmabの主な大規模臨床試験は、(1)ECOG3200試験、(2)ML18147試験、(3)VELOUR試験、(4)RAISE試験、がある。VELOUR試験はアフリベルセプトの、RAISE試験はラムシルマブの試験である。またML18147試験は一次治療→二次治療でのBBPの臨床試験である。