レ点腫瘍学ノート

大腸癌/CQ/大腸癌での免疫チェックポイント阻害剤 の履歴ソース(No.2)

#author("2018-09-23T16:18:46+09:00","default:tgoto","tgoto")
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*大腸癌に対する免疫チェックポイント阻害剤の有用性と課題

2018年秋にも日本でMSI statusの検査が保険償還される見込みであり、またほぼ同時期にMSI-H大腸癌の二次治療においてペムブロリズマブが承認される可能性が高いとされている。

MSI-H大腸癌ではimmunoescapeが病態に強く関与しており、このクラスタの大腸癌については免疫チェックポイント阻害剤がキードラッグとなる。FDAでは既にペムブロリズマブとニボルマブが承認されており、NCCNガイドライン2018.vol2.ではこれら2剤が掲載されている。

**KEYNOTE-164試験(第2相)
''MSI-H大腸癌に対するペムブロリズマブの有用性''

Mismatch-repair deficiency predicts response of solid tumors to PD-1 blockade. Science 2017
http://science.sciencemag.org/content/early/2017/06/07/science.aan6733.full
/ASCO/2016 
http://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/jco.2016.34.4_suppl.tps787

**CheckMate142試験(第2相)
''MSI-H大腸癌に対するニボルマブおよびニボルマブ+イピリムマブの有用性''
/ASCO/2016
http://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2017.35.4_suppl.519
/ASCO/2017 中間解析
http://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2016.34.15_suppl.3501

*今後はすべての大腸癌患者でMSI statusを調べるべきか。
-少なくとも、積極的治療を行う右側結腸原発の進行再発大腸癌においては全例でMSI検査を行うことが標準となるのではないか。一方で左側結腸原発の場合ではMSI-Hの頻度は低い(直腸癌では1%かそれ以下?)上に抗EGFR抗体の有用性が高いため、必要性は相対的に下がるかもしれない。2018年の現時点ではコンセンサスには至っていない。
-化学療法によって治療中にMSI statusが変動するかどうかについてはまだデータが十分でない。抗PD-1療法を二次治療で行うとして、一次治療開始前にMSI検査を行っておくことは十分考えられる。

*大腸癌の場合に抗PD-1抗体療法の有害事象は他の悪性腫瘍と異なるか。
現時点ではっきりとした数値としてのデータは不十分である。肺癌患者ではILDが多いのではないかと考えられているが、大腸癌においてもILDへの注意は十分行う必要がある。
-IO agentの違いによる有害事象の頻度の違いについては、抗PD-1抗体はILDが、抗CTLA-4抗体は下痢・腸炎が、抗PD-L1抗体ではinfusion reactionが、若干重要性が高いように思われるが、全てのIO agentで全てのIrAEへの注意が必要である。またニボルマブ+イピリムマブでは50%以上の患者にGrade3以上の有害事象が見られた臨床試験もあり、特に他の治療と比べると肝障害の頻度が高い印象がある。
-いずれにせよ、IrAEに対しては十分注意するとともに、疑われた場合には躊躇せずにステロイド使用を開始することが重要である。

*抗EGFR抗体と抗PD-1抗体の併用療法の可能性は。
現段階ではデータなし。抗EGFR抗体の対象となる患者はMSI-Hの割合が少ないのではないか?