レ点腫瘍学ノート

大腸癌/update2018 の履歴ソース(No.1)

#author("2018-09-07T18:34:26+09:00","default:tgoto","tgoto")
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*Pan-Asian ESMOコンセンサスガイドライン

ESMOによるPan-Asian adapted ESMO consensus guidelines((https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29155929))が公開された。PDFは無償公開されている。
https://academic.oup.com/annonc/article/29/1/44/4634047

**主な特徴

-RAS/BRAF野生型大腸癌の場合の、原発巣の左右局在による併用抗体薬の使い分けが記載されている。
-BRAF変異による治療の分岐が加わっている。とくにShrinkageを目指すBRAF変異大腸癌ではFOLFOXIRI+Bevが治療選択肢の1つとして明記されている。
-[[大腸癌/メンテナンス化学療法]](維持療法)に関する記載が追記されている。特にオキサリプラチン含有レジメン(FOLFOX/CAPOX)では治療開始から16-24週間の時点でオキサリプラチンをOffにして5FU系±Bevに切り替えて維持療法とすることが推奨されている。

*大腸癌治療ガイドラインの次回改訂

2019年1月の大腸癌治療ガイドラインの次回改訂がなされる予定であるのを控えて、2018年夏に試案の公開とパブリックコメントの募集が行われた。
http://www.jsccr.jp/guideline/

**主な改訂のポイント

-mindsの指針により「行うことを強く推奨する」「行うことを弱く推奨する」「行わないことを弱く推奨する」「行わないことを強く推奨する」「推奨なし(推奨度がつけられない、Not graded)」に区分されることとなった。これにより、従来のガイドラインで使用されていた「考慮する」「望ましい」「有効性が示されている」「適切である」などの区分は使用されないこととなった。
-局所療法として肝動注療法、熱凝固療法は削除された。
-腹腔鏡手術に関しての推奨度が設定された。
-ISR手術に関する記載が大幅に追加された。
-直腸癌に関する側方郭清の記載が追加された。
-内視鏡切除後の水平断端陽性の場合などの記載が追加された。
-化学療法が奏効して画像上消失した肝転移巣の切除が弱く推奨されるとの記載が追加された。
-二次治療におけるFOLFIRI+アフリベルセプトの記載が追加された。
-一次治療で推奨される治療が、NCCNガイドラインやESMOコンセンサスガイドラインと同様に原発巣の左右局在で抗体薬を使い分けることが記載された。特にRAS/BRAF野生型の場合の一次治療では、''左側原発大腸癌ではダブレット+抗EGFR抗体のみが、右側原発大腸癌ではダブレット+VEGF抗体かFOLFOXIRI+Bevが推奨される''。
-Stage III結腸癌の術後化学療法に関する記載が追加された。FOLFOX/CAPOXとフッ化ピリミジン単独療法のいずれが推奨されるかは、リスクとベネフィットを踏まえて考慮すべきとされている。また、	術後化学療法に関してACHIEVE試験やIDEA collaboration試験の知見を踏まえて、低リスクの場合にはCAPOX 3ヶ月投与も選択肢となり得る記載が追加された。
-遠隔転移切除後の術後化学療法については、2016年版から引き続き「遠隔転移切除後の補助化学療法の最適な治療レジメンは現時点では確立していない」とされたが、本邦では大腸癌肝転移切除後患者を対象としたmFOLFOX6療法と手術単独のランダム化比較試験(JCOG0603試 験)が進行中である旨が記載された。
-''MSI-HまたはdMMRの切除不能大腸癌既治療例に抗PD-1抗体療法を行うことが強く推奨''される。なお、事前にリンチ症候群のスクリーニングにもなりえる点を説明し遺伝カウンセリングの体制を整備することが求められると記載されている。
-閉塞症状の緩和として、閉塞性大腸癌に対するステント治療の推奨度が記載された。なお、薬物療法の対象となる患者には「行わないことを弱く推奨する」とされている。また「Bridge to Surgery」は緊急手術を回避し術後合併症のリスクを軽減するが、穿孔等が長期予後を悪化させる可能性も指摘されていると記載されている(推奨度なし)。

なお、これらはパブリックコメントの結果を踏まえて2019年1月の正式版公表までに変更・修正される可能性があることに注意が必要である。