レ点腫瘍学ノート

日記/2020年/01月06日/遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス改訂パブコメ の履歴の現在との差分(No.3)


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日本臨床腫瘍学会(JSMO)および日本癌治療学会(JSCO)のサイトなどでも周知されている通り、「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス」の改定に向けたパブリックコメントが募集されています。

https://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/20200106.html

これは今まで3学会ガイダンスと呼ばれていたものを、2019年6月からのがん遺伝子パネル検査の保険収載を経て明らかになった様々な課題を踏まえて現状に即したものにアップデートしようとしたものだと思いますが、がん遺伝子パネル検査自体がまだまだ発展途上の記述でもある上にその運用についてもまだ確立されたものがあるわけではないので、このパブリックコメントにもかなりたくさんの意見が集まって喧々諤々になるのではないかと予想します。

特に、以前にTwitterでも書いたように各がんゲノム医療中核拠点病院でがんゲノム医療の実装の仕方にかなりバラツキがあるのではないかというのが個人的には気になります。普段は連携病院の一つとして自分がつながっている中核拠点病院のスタンスに大きく影響を受けていますが、先日講演を拝聴した別の中核拠点病院と比べて検出された変異にどの程度重みを置くかについて考え方が随分違うと感じたので、今後これが保険診療として取り込まれていくにはこれらの標準化(エキスパートオピニオンから標準治療への脱皮)が進んでゆく必要があると感じます。

また、プレシジョン・メディシンが始まったばかりの頃は旧3学会ガイダンス基準でいうエビデンスレベル3A(つまり同一変異に対して有効であったという症例報告があるというエビデンスレベル)でもその標的治療をエキスパートパネルで推奨されることが多かったのは、今後5年もしないうちに様々な単塩基変異に対して標的治療を試みた症例報告が続出してくることを考えると、将来的には少し慎重に扱う時期がやってくるのではないかと考えます。パネル検査が今の勢いで実施されれば「有効だった」という症例報告はこれまでと比べて桁違いに多くpublishされるようになるでしょうし、また「無効だった」という報告はpublication biasに隠れてしまうので、極めて奏効率が低い治療などが見境なく実施されてしまうリスクに繋がるのではないかという考えからです(私見です)。

これらの点について、パブリックコメントにも送ってみようかと考えてみてはいますが、うまくまとめられるかどうかわかりませんので思案中です。

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