レ点腫瘍学ノート

日記/2020年/05月27日/Papers2の思い出(1) の履歴差分(No.1)


#author("2020-05-27T18:46:20+09:00","default:tgoto","tgoto")
*Papers2とぼくの8年間

今まで文献管理ファイルはPapers2を使ってきていました。過去の自分のメール履歴を検索してみると2012年6月にPapers2のライセンスを購入したメールが出てきます。当時は正規ライセンスなら$79 USD、アカデミックライセンスなら$49 USDでした。

この時から約8年、読んだ論文は(通読ではなく一部だけを読んだものも含めれば)Papers2のライブラリから概算したところ、およそ2,800本程度あるようです。平均して1日1本程度目を通していたことになります。今でも通勤電車に乗っている時間が長いので、出勤時か退勤時のいずれかはiPadを使って情報収集を続けています。

Papers2と一緒に歩んできた8年間、というと大袈裟ですが、TwitterでもことあるごとにPapers2への愛を書き連ねてきた1人のファンとして、徐々に減りゆくPapersのファン層とアプリの衰退を目にして、完全にアプリが消失してしまう前にこの歩みを書きつけておく必要があると感じたので、ここに記録しておきます。

(注意)かなり長いです。はじめは数百字程度の文章に留めるつもりが、書き始めたら止まらなくなりました。何度かに分けて記録しておきます。

#contents

*小さな赤い家、小さな青い家

Papersのロゴは洋風の小さな家の画像で、初期のPapersは赤い屋根の家でしたが、その後に登場したPapers2は青い屋根の家でした(この家の形のアプリアイコンはPapers3でも踏襲されます)。

#ogp(https://www.chem-station.com/blog/2010/04/post-155.html)

おそらく当時Papers2を導入していた医療関係者の多くは[[このブログ> http://drapp.blog.fc2.com/blog-entry-87.html]]を読んでいたのではないかと思います。まだ文献管理アプリを使っている人が少なかった頃にPapers2がいかに便利であるかを啓蒙してくれていました。

#ogp(http://drapp.blog.fc2.com/blog-entry-87.html)

▲いまはもう更新されていないが、当時多くの医療関係者がこのブログを見てPapers2を導入した

*Papers2の特徴

#amptwitter(45144848302489600)

**非常に優れたインターフェイスと文献一覧の可読性

Papers2は文献の一覧性が高いことが大きな強みでした。昔のiTunesをかなり強く意識したと思われるインターフェイスで、iTunesであれば音楽のmp3ファイルなどが並んでいる代わりにPapers2では文献PDFが並びます。各文献のタイトル、掲載誌、著者、星(自分で1つ星〜5つ星まで付けられる)、コメント(Notes機能)などをつけることができて、この辺りも昔のiTunesとそっくりです。PDFをPapers2上にドラッグドロップするとインポートされ、PDFのタイトルや著者がリストに収録されます。

**Pubmedからの情報インポートもバッチリ

こうしてドラッグドロップするだけである程度はPDFの文献情報を自動でマッチングを行ってくれるのですが、さらに詳細な情報をPubmedなどの公的データベースから拾ってくることできます。Matchをクリックするとあらかじめ設定したサイトからその論文のDOIやタイトルなどをもとに文献情報を検索して自動で引っ張ってきます(医学系の方はだいたいPubmedかGoogle scholarから引っ張ってくるよう設定しているでしょう)。この辺りの機能は初期のPapersにはすでに備わっていましたが、Endnoteなど高価なアプリケーションがなくてもPubmedの文献情報と簡単にマッチングできるというのは画期的な機能でした。何しろ、それまではEvernoteなどで半手動で文献管理しているのはまだ進歩的な方で、中にはWindowsのExplorerで完全に手作業で管理をしている人が少なかったのですから。

**ブックマークレットでWebブラウザとの連携

それから、ブックマークレットを使ってWebブラウザから直接Papers2にPDFをダウンロードできる機能もありました。これもEndnoteなど高機能で高価なアプリと同等の機能をすでに有していました。

大学の電子ジャーナルを利用するのにプロキシが必要な場合はプロキシを登録しておくこともできて、これを使えば文献をダウンロードするときは大学図書館を経由してPDFを手に入れることもできました。

青い家のPapers2になってから、赤い家のPapersと比べて変わった点というのは実はあまり多くはなかったのですが、Papers2でできるようになったことの1つはSupplemental papersを添付資料として管理できるようになったことです。また論文取り込みの際に右クリックで「Download PDF as supplemental data」を使えるようにもなりました。

#ogp(http://humanscientist.blogspot.com/2011/12/papers.html)

**論文執筆時の参考文献一覧の自動生成

Microsoft Wordなどを使っているときにFnボタンを2度押しすると文献挿入画面が表示されます。そして挿入したい論文に関するキーワードを数単語入れると該当する文献が表示されるので、これをクリックするとWord文書に参考文献が挿入されます。非常に簡単な参考文献一覧の自動生成機能も優れていました。もちろん主要なジャーナルのフォーマットにはほとんど対応していますが、対応していないジャーナルの場合はフォーマットを自分で作成することもできます。

**ローカルアプリなのにDropboxと組み合わせて同期もできる

何よりもPapers2で優れていたのはその操作性です。

クラウド版と違ってPDFは全てローカルにありますので読み込みのタイムラグなどもなく動きは軽快です。そして、「[[医療に必ず役立つiPhone iPad>https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758108133/]]」という本に出ていた「Papers2のライブラリをDropboxフォルダ内に置く」という方法を使えば、クラウド版アプリではないのに複数のMacでライブラリを同期できるというのも優れた点でした(確かこの本は神戸国際会議場で開催された学会会場の書籍コーナーでチラッと立ち読みしたもので、当時はガラケーに重いノートパソコンしか持っていなかったのにこの本のせいで一気にスマホ欲が高まったのを覚えています)。

#ogp(https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758108133/)

▲アプリで文献PDFを管理するという概念を与えてくれた一冊

【Papers2の思い出(2)に続く予定】