レ点腫瘍学ノート

日記/2020年/05月29日/Papers2の思い出(3) の履歴の現在との差分(No.8)


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*難産だったReadcube Papers [#i295c98b]

**新バージョンの予告がなされるも… [#i6c26f9f]

2016年3月16日、PapersがReadcubeに吸収されることが発表されました((https://www.researchinformation.info/news/readcube-acquires-papers-springer-nature?news_id=2102))。当初のReadcubeはPapers3とは別のアプリとして存在していて、Readcubeには本当に簡単にPDFを閲覧する程度の機能しかなく、到底Papersに代わる文献管理アプリとして使えるようなものではありませんでした。しかしこれはあくまで暫定的なものであって近日中に全く新バージョンのReadcube  Papersがリリースされるとの告知がなされます。

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2016年12月の第1報。これでPapersユーザーは沸き立ちました。夏の終わりと言っているので、この時点では2017年夏に新バージョンが出るという期待が高まりました。

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この新バージョンは買い切り型ではなく年間利用料を支払うサブスクリプション型になることも公表されて、2017年3月14日には円周率の日ということでReadcube年間ライセンスが60%引きの22ドルで販売されました。Papersと統合される前の当時のReadcubeは貧弱でしたが、夏からのPapersとの統合を見越してぼくもこのときに年間ライセンスを購入しました。

Nature publishing groupはNatureおよびその姉妹誌の論文をReadcube経由なら格安で閲覧できるサービスも2014年から開始していました。普通は購読雑誌以外の論文を入手しようとすると30〜40ドルほど請求されることが多いのですが、Readcubeで読むePDFなら3〜5ドルというような割引が適用されるのです。Elsevir系列のMendeleyへの対抗措置でした。しかし、このサービスはReadcubeの不人気の影響を受けてか、いつの間にか自然消滅してしまったようです。

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**一向にリリースされないReadcube Papers [#v980b658]

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Papers3に満足できなかったPapers2のユーザーはみんな新しくReadcubeと統合された新バージョンの登場を待ち望んでいました。これまでにもPapers3のリリースや数多くのバグ修正が予告されたリリース日から大きく遅れることは少なくなかったので2017年夏に予定通りリリースされると信じている人は多くありませんでしたが、しかし期待が膨らむのは避けられません。

しかし、肝心のアプリはいつまでたってもリリースされません。しかも買い切り型から月額課金(サブスクリプション)への移行はすでに開始されていましたので、中にはReadcubeの年間ライセンスにすでにお金を払っている人もいたのです。これには辛抱強いPapersユーザーたちも流石に怒りました。

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Readcubeのページにあるβ版の予告ページもリンク切れが多発しているなど、いよいよお粗末な感じは否めません(当時は開発状況の途中経過を[[Readcube>http://blog.readcube.com/post/168755698872/great-things-are-coming]]の公式ブログで逐一報告していたようなのですが、今その[[公式ブログ>http://blog.readcube.com/post/168755698872/great-things-are-coming]]を見てみようとすると、すでにそのブログ自体が消去されてしまっています!)。2018年11月のPapers3販売終了が発表され((https://readcubesupport.freshdesk.com/support/solutions/articles/30000031865-existing-papers-3-users-accessing-papers-3-program-files-for-additional-device-installs))、Readcube Papersはブラウザで閲覧するWeb版Readcubeとほぼ同じ機能で名前だけが公表されていましたが、ダウンロードして使えるスタンドアロン型のアプリは予告がされるだけで一向にリリースされません。

当初の予告から2年経って2019年6月1日に正式リリースするよと言ったときにはすでにPapersのユーザーの多くは他のアプリへの移行を真剣に検討するか、あるいはすでに移行を済ませていました。そして、案の定正式リリースすると予告されていた2019年6月1日にも正式リリースはされませんでした。ここまでくるとユーザーへの背信行為も呆れるほどになっていました。もはや、まともな開発を進める意思がないようにも見えました。

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結局、Readcube Papersは当初の2017年夏の予定から遅れること2年と数ヶ月、2019年10月にようやく正式リリースを迎えるのです。

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*Readcube Papersのリリースでも不満は解消されず [#j3401bdc]

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Readcube Papersが正式にリリースされてからも、Papers3のリリース直後と同様に数多く残っているバグがあるほか、Papers2やPapers3にあった機能のうち失われてしまったものが多くあり、ユーザーの不満は解消されませんでした。

不満の内容は様々でしたが、ぼくが個人的にReadcube Papersを試用してみて残念だと感じたのは、まず何よりも論文につけたNotes(個人用メモのようなもの)が文献一覧の画面では表示できないこと、そしてこのNoteの内容に対する検索機能の貧弱さです。Papers2では論文にNotesをつけて自分の覚え書きを書いておき、文献一覧画面ではいちいちPDFの中身を見なくても何の論文だったかがわかるようにしていました。加えて、検索での利用を想定してNotesでは略語は使わず極力正式名称で記載して後から似たテーマの論文と一緒に串刺し検索できるようにしていたのです。しかし(Papers3もそうでしたが)Readcube PapersではNotesの内容は検索に引っかかったり引っ掛からなかったりするのです。日本語の単語に対する検索がうまくいっていないという印象でした。

加えて、Papers2にはあったショートカットキーがほとんど失われていました。たとえばPapers2では、Notesの入力画面を開くのはCmd+Shift+I、Pubmedでの文献情報の検索はCmd+Control+Mというようにワンタッチでその画面に移動することができたのですが、こういうショートカットキーは全く使えなくなっています。

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動作の重さも大きな問題でした。Papers2やPapers3はPDFはローカルのコンピューター内にありますがReadcube Papersは基本的にクラウドを重視するのでPDFはあえてダウンロードしないと同期先のローカルPC内にはありません。結果的にPDFを閲覧するのにはクラウド上のファイルへのアクセスタイムラグが生じてしまうのでした。

結局、Papers3にもPapers2にも劣る機能しか持たない状態でリリースされたReadcube Papersは失ってしまったユーザーの信頼を取り戻すことはできず、今に至ります。Readcube PapersはPapers2やPapers3の熱心なファンを引き継ぐことはできませんでした。

*おわりに [#bc4a579b]

こんなに長い駄文を書くつもりはなかったのに、すっかりダラダラと書いてしまいました。

ここまで述べてきたように、Papers2で最高に隆盛をきわめていた(と勝手に思っている)文献管理アプリPapersは徐々にユーザーを減らしてゆくことになったのでした。ブラウザ版のReadcube Papersはこのまま残ると思いますが、スタンドアロン型のものはおそらくOS Xのアップデートについてゆくことができず、いずれ動作しなくなると思われます。AdobeのCS6がほとんど予告もなくいきなり使えなくなったように、すでにサポートが終了しているPapers2やPapers3はあるとき突然使えなくなるのだと思います。そのときに、Paperpileに移るのかZoteroに移るのか、MendeleyやEndnoteなどを使い始めるのかわかりませんが、その日が来るまではサポートが終了したPapers2を使って文献管理を続けてゆこうと思っています。

#tweet(1255901893022400514)

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