レ点腫瘍学ノート

日記/2020年/09月06日/医療従事者に最適なチャットツールはどれなのか問題 の履歴差分(No.1)


#author("2020-09-06T22:59:07+09:00;1970-01-01T18:00:00+09:00","default:tgoto","tgoto")
医療従事者が仕事で使うチャットツール

#amptwitter(1297674995808657408)

業務連絡を行うツールには様々なものがありますが、それぞれに長所短所があります。

**電話 [#w37b9780]

電話は最速で連絡する必要がある緊急時だけ役に立つツールで、相手の時間を取るし記録は残らないので普段使いのツールとしては論外です。

**電子メール [#daa070fd]

メールはメールアドレスがわかれば連絡を取れるので、外部の人に連絡を取るときや親しい間柄でない人に連絡をするには最適です。職場内のメーリングリストを作っているところも多いかと思います。何でもできる汎用性がある一方で、どうしても文字数が多くなりがちで普段の細々とした短文コミュニケーションにはやや大仰です。

**チャットツール [#d058778d]

最近は短文でこまめな情報伝達が重視されるのでチャットツールの有用性が認められていますが、医療従事者が業務で使うには便利さだけでなく個人情報漏洩防止などのセキュリティの面でも安心して使えることが重要です。プライベートのチャットではLINEを使っている人が多いのではないかと思いますが、業務で使うにはやや不安も残ります。

*医療従事者が使うチャットツールは何が最も良いのか [#b4e71c19]

医療従事者が業務上の連絡を取り合うために使うチャットツールは何が良いんでしょうか。

#amptwitter(1297674995808657408)

**LINE [#va7f66ec]

#ogp(https://line.me/ja/)

Twitter上のアンケートでは、LINEを使うと言う意見が最多でした。確かに誰のスマホにも既に入っていると言う利点があり、使い方を学ばなくてもみんな知えるというのは大きな強みです。どのチャットツールを使おうかという議論や検討を経ることなく、気がついたら自然発生的にLINEを使っていたと言う職場が多いのではないでしょうか。   

しかしLINEにも欠点はあります。1つはプライベートと業務の切り分けが曖昧になりがちなこと。プライベートの友人関係が職場に持ち込まれたり、業務上の会話が関係ない相手に流れてしまうというリスクをはらんでいます。カジュアルなコミニケーションを取るには向いていますが、けじめがつきにくいと言うのは大きなデメリットかもしれません。

もう一つの難点は、セキュリティの問題です。実際に情報漏洩が存在したかどうかは別として、LINEの情報保護は不安視されているという声があります。実際にLINEアカウントの乗っ取りが発生したと言う事例を耳にしたことがある方は少なくないのではないでしょうか。業務で使うLINEアカウントが乗っ取られてしまった場合は大きな被害が及ぶリスクがあります。

#amptwitter(1297707555779567617)

**Teams [#udaf8924]

#ogp(https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/healthcare-solutions)

Microsoftが提供するチャットツールはTeams。様々な教育現場で導入されているので大学生や高校生のお子様がおられる方はお子様の方が詳しく知っているかもしれません。WordやExcelなどのMicrosoft Office製品との相性が良く、Office 365のサブスクリプションを契約している施設では無料で使えることもあります。Onenote、Onedriveなどとの連携も非常に良好です。

まだまだアプリを追加することで機能を強化していくことができるので、Teamsでできることは非常に多岐にわたります。Office 365のOutlookアカウントなど、メール機能やスケジュール機能と連動することもできるので、すでにMicrosoft Officeを使っている職場では最適な選択肢になりえます。逆に、現在Microsoft Officeを利用していない職場では費用負担が大きく手を出しづらいかもしれません。

倉敷中央病院が医療現場にTeamsを取り入れたときは大々的に特集されて注目を浴びました。同院は以前からMicrosoftベースのイントラネット情報共有サービスを利用していたので以降が円滑だったのでしょう。

#ogp(https://customers.microsoft.com/en-GB/story/kurashiki-central-hospital-healthcare-intune-teams-m365-jp-japan)

しかし、やはり病院には様々なITリテラシーを持った人たちがいるため簡単にはシステム導入はできず、現場の苦労はつきないようです。

#amptwitter(1207434897117237249)

#ogp(https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/free)

無料版で使うこともできますが、無料版は機能の制約がかなり大きいです。Microsoftの無料版Teamsのページではあまり強調されていませんが、無料版TeamsではExchangeサーバーとの連動ができませんので予定表機能が使えませんし、予定表機能が使えないということは「シフト」機能も使えません。これは個人的には使ってみて一番落胆した部分です。

また、Azure Active Directoryの機能も制限され、アカウントの管理が正規版のTeamsと比べて若干複雑です。すでにHotmailなどでMicrosoftアカウントを持っている人のメールアドレスをメンバーに追加しようとするとそのアカウントがログインできなくなるエラーに悩まされました(しかもエラーが発生しても無料版はサポートの対象外です)。やはり、すでに有料でOffice 365を契約している職場に適したアプリという印象はあります。

#ogp(https://qiita.com/tmkdental/items/f05def26d4cea5d1f446)

**Slack [#x8b385c3]

#ogp(https://slack.com/intl/ja-jp/)

業務用チャットツールとして有名なのはSlack。高機能でプログラミングなどIT関連の業界では非常にユーザが多いことでよく知られています。しかしただのチャットツールとして医療現場で使うには若干機能を持て余すかもしれません。

チャンネルやコマンドなどSlackがSlackたらしめる高機能はパソコンにそれほど詳しくない人にとってはとっつきにくく感じるでしょう。使えるようになるまである程度のトレーニングが必要なのではないかと思います。ぼく自信、職場内の勉強会メンバーで使えるかどうかを確かめるためにSlackのアカウントを作ってみたことがありますが、これは全員に使ってもらうのは相当ハードルが高いと感じました(当時は日本語版が出たばかりでまだ一部には英語表記が残っていたので余計かもしれません)。また有料版は1アカウントあたり850円/月〜と若干高価格であるというのも難点です。

従業員が1000人を超えるような大きな病院ではありませんが、訪問診療を中心として複数のクリニックを構える医療法人でSlackを活用した事例も紹介されていました。訪問診療は確かに時間を合わせて全員が一同に集まって意見交換をするのが容易ではありませんので、こういうオンラインツールとの親和性が高いのでしょう。

#ogp(https://kaiwa.cloud/case/009/)

**LINE WORKS [#j9886c70]

#ogp(https://line.worksmobile.com/jp/)

おなじみのLINEの業務用バージョンにあたります。既存のLINEと比べて使い勝手は非常に近く(スタンプなども使えます)、またログインもメールアドレスや電話番号のログインのほかにLINEアカウントでのログインが可能なので、アカウントを新規に作るのが非常に簡単です。

普通のLINEとの違いとしては、トークの内容やアカウント管理が管理者によってサーバーサイドでできるなど管理機能の強化があげられます。「友だち」として個人個人がつながるのではなく、同じ企業アカウント内の個人個人はすべて最初からつながった状態で、管理者や部署の責任者がグループ分けを一括して管理できます。退職者のアカウント削除も管理者が行えて過去のトークの閲覧権限も編集できます。

また、部署やグループごとにノート・予定表・フォルダなどを共有でき、掲示板やアンケートなどの機能もついています。ほとんどの使い方はLINEと変わらないのでとっつきやすいというのが一番のメリットです。

中外製薬が2400人のMRにLINE WORKSを導入したことは大きく注目されました。数ヶ月前から中外製薬のMRから送られてくるメールにはLINE WORKSのロゴが入った二次元バーコードが付いています。LINE WORKSはふつうのLINEともチャット(トーク)をすることができるのでMRと医療者のコミュニケーション改善も狙ったものと思われます。中外製薬の規模でしょうから当然有料プランで契約しているはずで、複数人のテレビ通話も可能なはずです。

#ogp(https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200901150000_1020.html)

しかし、TeamsやSlackが様々なアドオン・アプリを追加して機能をさらに充実させることができるのに対して、LINE WORKSはそこまで拡張性はありません。またスマホアプリは写真添付はしやすいがPDFなどの文書の管理は得意でないことなど、多機能・高機能を求める人には不向きでしょう。1対1の音声通話・ビデオ通話はフリープランでも行えますが、多対多の通話はライトプラン(300円/月)以上の有料プランでしか行えないのも難点ですが、メンバーが100人以下の職場で、しかも独自ドメインメールアドレスやストレージ機能(Dropbox的な)を使わない場合はフリープランでほとんどのことが行えます。

個人的には、チャット・トークへの「いいね」が無いのが難点です。既読機能があるので良いと言えば良いのですが、何気ない短文メッセージに対して「承知しました」「了解しました」「OKです」とリプライを付けるのは送信側も受信側も無駄が多いので。「既読スルーは『承知しました』のサイン」という風に職場ないでコンセンサスを作っておくことが負担軽減の秘訣かも。

**Chatwork [#e546d99f]

#ogp(https://go.chatwork.com/ja/)

業務用チャットツールとしては早くから人気を集めていたChatwork。Slackがまだ日本語対応しておらずTeamsも無料アカウントがなかった頃(Skype for Businessが主流だった頃)は一番人気の業務用チャットツールだったかもしれません。しかし、TeamsやSlackの台頭などで人気は下火になっている印象です。純粋なチャットツールとして使うには問題はありませんが、無料版では広告が表示され、また特別これといった高機能さもないので他ツールに比べてこれを選ぶメリットがわかりにくいと思われます。

**Google Meet / Chat [#iac84a96]

#ogp(https://apps.google.com/intl/ja/meet/)

最近Gmailアプリにもビデオ通話機能(Meet)が搭載されてGoogleが力を入れているのがわかります。

しかしGoogle製品はライフサイクルが短いのが難点と言えば難点です。数年前まで積極的に推していたGoogle Hangoutsの今の冷遇ぶりを見ると、今あるGoogleアプリもいつまで使えることやら。さらに前にあったGoogle Talkは2013年にサービス終了していますし、HangoutsはGoogle+の機能の一部だったはずなのにGoogle+もいつの間にか消え去っています。サービスの展開が早いが撤収も早いGoogleのことだから、業務を任せるアプリとして使うにはやや不安を感じます。

**iMessenger [#gf3af36d]

iPhoneやMacに標準装備のメッセンジャー。Facetimeと合わせると音声通話・ビデオ通話も行えますし、メッセンジャーとしても高機能ですが、Apple製品でしか使えないというのは非常に大きなデメリット。AndroidやWindowsでは使えません。

**SMS [#i1dac9a9]

電話番号さえわかれば誰にでもメッセージを送れますが、機能は単に短文を送受信するのみと非常にシンプル。そして最大の難点は、携帯電話の契約プランによっては送受信のたびに数円のコストがかかるという問題があります。自分がSMS無料の料金プランに入っていても相手が無料のプランかどうかわからないので、他人には勧めにくいという事情あり。

*結局どれがいいのか [#od46a911]

なかなか一概には言えませんが、導入を決める上で考えなければならないポイントは次の点でしょうか。

- どの機能が必須なのか(チャットなど基本機能だけで良いのか)
- 独自ドメインメールアドレスなどが必要か
- コスト負担はどの程度許容されるか(無料か、500円/月程度か、それ以上も可か)
- 実際に使うメンバーへのトレーニングコスト
- 職場で使われているオフィススイートがあるか(Microsoft Office 365、G suite)

あまり参考にならないとは思いますが、ぼくが経験した例では最終的にLINE WORKSに落ち着いています。

>''Slack'' → アカウントを作ったものの、これの使い方(特にチャンネルを理解できないと思われる)をメンバー全員に普及させるのは無理だと確信してすぐ放置に至る。
>''Teams'' → 約10人のメンバーで半年ほど実際に活用していた。しかし無料版では上記のアカウント管理に難があり、すでにMicrosoftアカウントを持っている人をメンバーに加えようとしてもどうしても加えられない事象が発生。公式に確認しても無料版はサポート外で、そもそもOffice 365との連動もしていなかったので(職場には買い切り型Word/Excel/Powerpointなどがインストール済み)、一気に使用のモチベーションが下がる。
>''LINE WORKS'' → 今のところこれに落ち着いてる。メンバーの追加などは一番簡単。高機能さはないが、そのぶんメンバーのラーニングコストも圧倒的に少なくて済む。スケジュールの共有機能は非常に貧相なのであまり使っていないが、ノートの共有は便利そうで可能性を感じている。アンケート機能も便利そうだと思っていたが、期限設定無しの投書箱的なアンケートを作ろうとしたらアンケート期限設定が必須だったのでこの機能は使ってない。

Office 365が使える職場ではTeamsが、G suiteを契約している職場ではGoogle Meetが最有力候補となるでしょう。Teamsの無料版はOffice 365を契約していない職場でもそこそこ高機能で有力候補となります。いずれも契約していない場合はITリテラシーが高くトレーニングコストを受容できればSlackが候補ですが、メンバーのトレーニングコストを極力抑えて手っ取り早くチャットツールを導入したいという場合はやはりLINE WORKSが有力候補です。

まずは無料版を少人数で実際に使ってみてから選ぶのがよいと思います。業務に深く食い込んでしまう前であれば乗り換えも可能でしょうから(実際にぼくは半年使ったTeamsからLINE WORKSに移動しました)、何事も一度試してみるのが良さそうです。