レ点腫瘍学ノート

日記/2020年/10月8日/TRYPHAENA試験の読み方? の履歴ソース(No.1)

#author("2020-10-10T01:29:46+09:00;1970-01-01T18:00:00+09:00","default:tgoto","tgoto")
''TRYPHAENA試験''は早期乳癌の術前化学療法としてペルツズマブ+トラスツズマブの上乗せの安全性などを検証する第2相試験。術前療法は第2相''NeoSphere試験''とともに本試験が、また術後療法の第3相''APHINITY試験''と合わせて、乳癌診療ガイドライン2018年から周術期化学療法にペルツズマブを上乗せする根拠として挙げられています((http://jbcs.gr.jp/guidline/2018/index/yakubutu/y1-fq-5/))。

#ogp(https://chugai-pharm.jp/pr/npr/per/popup/try/index/)

#ref(image1.png,nolink)

上乗せ対象となる化学療法はFEC→DTX(全期間上乗せ)、FEC→DTX(DTX期間のみ上乗せ)、CBDCA+DTXの3アームあります。個人的には、この有害事象の差が無さそうであることからエピルビシン投与期間中から抗HER2抗体を普通に使って良さそうであることと、カルボプラチンが乳癌診療の様々な場面でもっと存在感を示しても良いのではないかという点で、「ペルツズマブ上乗せ以外の点」でも見るべきところのある試験なのではないかと思っています。

*TRYPHAENA試験の読み方は [#jeffeeea]

で、それはさておき問題はこの試験の''読み方(発音)''です。Twitterでも挙げられているように、この試験の読み方は偉い先生の学会発表を聞いても「トライ…ムニャムニャ」という感じで読み方がはっきりしないのです。Twitterやブログで書くだけなら読み方がわからなくても綴りがわかればOKなのですが、もし口に出して読み上げるならなんと読むのが正しいのか?

#amptwitter(1314168777655767045){{
<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">一字違いでTryphena(トライフィナ、トライフィナ)というリゾート地があるので、これと同じ発音ですかね。この地名は、トライにアクセントだそうです。<a href="https://t.co/aViUIsS79s">https://t.co/aViUIsS79s</a></p>&mdash; レ点💉💊🧬 (@m0370) <a href="https://twitter.com/m0370/status/1314168777655767045?ref_src=twsrc%5Etfw">October 8, 2020</a></blockquote>}}

色々とググってみると、TRYPHAENAの一文字違いでTryphenaという地名があるようです。グレートバリアリーフにあるリゾート地でしょうか。

#ogp(https://www.tripadvisor.com/Tourism-g798810-Tryphena_Great_Barrier_Island_North_Island-Vacations.html)

他にも人命としてエジプトのクレオパトラ6世(世代の数え方によって5世となることもある)がトライフィナ(Cleopatra VI Tryphaena)と呼ばれていたというようです((https://www.livius.org/articles/person/cleopatra-vi-tryphaena/))。転移再発乳癌でのペルツズマブの第3相試験がCLEOPATRA試験だったので、その他のペルツズマブの臨床試験もエジプトの女王様の名前を冠することにしているのでしょうか?さらにググってみるとペルツズマブ+トラスツズマブをPTXまたはDTXに上乗せした第2相BERENICE試験というのがありますが、BERENICEというのはクレオパトラ6世(トライフィナ)の娘にあたるエジプトの女王様((https://www.livius.org/articles/person/berenice-iv/))の名前のようですね。ペルツズマブ関連ではKRISTINE試験というのもありますが、こちらはクレオパトラやその他の女王名に関係しそうなところはググった範囲では見つからず。

#ogp(https://en.wikipedia.org/wiki/Cleopatra_VI_of_Egypt)

他にも聖書にどうやらこの名前の女性が出てくるところがあったり、ローマの要人にもTryphena(Tryphaena)と名前が付く人がいたりするようで、Tryphenaというのはわりとよくある地名だったり人名だったりするようです。

乳癌の臨床試験名は、たとえばaffinity(親和性)という単語をもじってAPHINITY試験としたり、Marrianna→MARIANNEのように人名と思われるものを一文字もじっているように見えるものもあります(CLEOPATRAはCLEOPATRAのままですが)。それにしても、クレオパトラとかマリアンヌとかエミリアとか、臨床試験名の女子力が高い。

#amptwitter(617568686077931520){{
<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">クレオパトラ、マリアンヌ、エミリア。乳癌の臨床試験の名前って特徴的だなあ。</p>&mdash; ちばにゃん@社会復帰リハビリ中 (@cmy_rl) <a href="https://twitter.com/cmy_rl/status/617568686077931520?ref_src=twsrc%5Etfw">July 5, 2015</a></blockquote>
}}

*TRYPHAENA試験の発音は [#fc1c7a69]

で、その発音ですがはじめはトライフィナ・トライフィーナ・トライフェナで「トライ」にアクセントかと思っていたのですが、Youtubeを見るとどうも「フィ」の部分がアクセントのようです。

#html{{
<iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/b00ye47G46I" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen></iframe>
}}

さらに聖書に出てくる言葉を解説する動画でもやはり「トライフィーナ」で、フィにアクセント。

#html{{
<iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/yKMUQH6L01w" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen></iframe>
}}

こちらのサイトもトライフィーナ(トリフィーナ)でフィにアクセントですね。

#ogp(https://ja.howtopronounce.com/tryphena)

これで疑問が解決しました。学会発表でオーラルプレゼンテーションを求められても、これでバッチリです。こういう小ネタをたくさん持っておくことが、臨床腫瘍学を楽しみながら学ぶ骨でもあります(知らんけど)。