#author("2021-10-16T11:13:55+09:00;2021-10-16T11:10:02+09:00","default:tgoto","tgoto")
#ref(https://oncologynote.com/img/4e4ff87da0.jpg,nolink)
*mRNAワクチンは2021年のノーベル医学生理学賞受賞ならず [#t005e6e1]
#ogp(https://www.nobelprize.org/nobel-prize-lessons-medicine-2021/)
2021年のノーベル医学生理学賞は新型コロナウイルスワクチンに使われたmRNAワクチン技術を開発したハンガリー出身のカタリン・カリコ博士に贈られるのではないかという予想が盛んにいわれていましたが、そうはなりませんでした。
#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1444960173022322692?s=20)
事前予想では圧倒的に1位だったように思います。2021年1月頃から世界で本格的にワクチン接種が始まり、日本でも1〜4月頃に医療従事者接種が、そして5月にゴールデンウィークが明けると高齢者から本格的にワクチン接種が勧められピークには150万人/日もの人がワクチン接種を受けました。世界ではわずか1年間の間に何十億人もの人にファイザーバイオンテックとモデルナのmRNAワクチンが投与され、打つ手が無かった新型コロナウイルス感染症の流行に歯止めをかけ、何万人もの人の命を救いました。
この功績から、毎年ノーベル賞受賞者の予想を発表している国立科学博物館のスタッフやその他の多数のノーベル賞予想サイトも、2021年はノーベル医学生理学賞の受賞が妥当だと考えていたようです。ノーベル医学生理学賞を受賞する人が先に受賞することが多い、ノーベル賞発表の1週間ほど前に発表されるアメリカのラスカー賞もカタリンカリコ氏とドリューワイスマン氏が受賞しています。
#ogp(https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20210928_n01/)
* 発表後の反応 [#n5d1dadd]
ノーベル医学生理学賞の受賞者発表後にはいつも短時間の記者会見が開かれ、Webで生中継されます。その会見の会場でも今年はノーベル医学生理学賞にmRNAワクチンが選ばれなかった理由を問いただす記者の姿もありました。
#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1444964572826271744?s=20)
結局mRNAワクチン技術は今年のノーベル医学生理学賞にならなかったのですが、これについてはTwitterでも様々な声がありました。
#tweet(https://twitter.com/Merz/status/1445461601776123913)
* Natureに出たコメント [#mf81b8a9]
Natureにはこれに関する識者のコメントが出ています。短い文章なので直接読んでいただいても良いと思いますが、要するにノーベル賞を受賞するに値するかどうかの評価を得るのには一定の時間がかかるのだ、ということのようです。
#ogp(https://www.nature.com/articles/d41586-021-02754-6)
昔と比べて研究成果の発表からノーベル賞を受賞するまでのタイムラグは大きくなってきており、現在ではその時間は平均30年にも及ぶようになってきているようです(ノーベル賞は存命者にしか与えられないことを考えると、かなり長生きしなければノーベル賞を受賞できません!)。
また、今回mRNAワクチンが新型コロナウイルス感染症に対して劇的な効果を発揮しましたが、他にも無数にある感染症に対してこれを応用できるかどうかはまだ未知数です。この記事中の言葉を借りれば、「ノーベル賞の受賞者として選ばれるのは、魚を与えるのではなく魚の釣り方を教える科学者である」ということです。つまりmRNAワクチンが直接的に救った人の数よりも、このワクチン技術が新型コロナウイルスの収束後も他の感染症に対して引き続き強力な武器であり続けるのかということを見極めたいのかも知れません。
それにしても、画期的であることには間違いありませんから、2021年のノーベル賞にはならなかったですが来年以降いずれ受賞することになるのではないかと思います。
#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1444960173022322692?s=20)