レ点腫瘍学ノート

日記/2021年/11月25日/一気に適応拡大が進んだ上部消化管腫瘍領域 の履歴ソース(No.1)

#author("2021-11-25T22:11:59+09:00;1970-01-01T18:00:00+09:00","default:tgoto","tgoto")


2021年11月に抗腫瘍薬の適応拡大が一気に進みました。特に上部消化管関連の適応拡大が目立ちます。

*切除不能胃癌に対するニボルマブ適応拡大 [#l86c0ad3]

- 切除不能一次治療からニボルマブ+化学療法の併用可
- HER2陰性のみ
- CPS縛り無し
- 併用化学療法は縛り無し(もとの臨床試験はSOXやCAPOXと併用されていたが、今回の承認範囲は現在一次治療に使えるレジメンは何でも可)
- 用法は240mg/2wでも360mg/3wでも可
- CheckMate 649試験
-- HER2が陽性でない進行胃癌、食道胃接合部癌、食道腺癌患者が対象
-- 中国人が25%
--併用化学療法はCAPOXまたはFOLFOX
-- 24ヶ月時点の長期間観察で、CPS≧5のPFSおよびOS、全患者集団でのPFSおよびOSはいずれも延長が見られた((ESMO2021))。
-- MSI-H患者とMSS患者のどちらでも、ニボルマブ+化学療法群は化学療法のみ群よりもOS中央値は長く、奏効率は高かった。
-- CPS≧5で特に予後延長効果が目立つが、CPS<1でもハザード比は1を下回っている。ハザード比だけを見ればCPS<1の患者層は1≦CPS<5の患者層よりもハザード比が良いので、単純にCPSがニボルマブの奏効予測因子とは言えない可能性がある。
-- CheckMateの臨床試験ではPD-L1の染色抗体は28-8によって行われている(KEYNOTE-062などペムブロリズマブの試験では22C3によって行われている)。
-- イピリムマブ+ニボルマブ併用療法は化学療法群に比べてOS(副次的評価項目)を延長できなかった。
- ATTRACTION-4試験
-- アジア人のみ対象
-- CPSを問わずPFSはニボルマブ+化学療法は化学療法単独よりも有意に良好だが、OSは有意差がなかった。
-- 日本人のみのサブグループでもOSは有意差が無かった。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1463769681064382467?s=21)

* 切除不能食道癌ペムブロリズマブ適応拡大 [#seb7e942]

- 切除不能進行食道癌に対してペムブロリズマブ+FPが使用可
- 組織型不問(腺癌も扁平上皮癌も)
- CPS縛り無し(従来の二次治療のPD-L1縛りは一次治療では無し)
- 併用レジメンは5FU+CDDPのみ(腎機能の問題などでCDDP併用しない場合にレセプトでどう扱われるのかは不明)
- 維持療法でペムブロリズマブ単独使用する場合はあらためてPD-L1 CPSを算出する必要はないとのこと

* 食道癌術後ニボルマブ適応拡大 [#n7983a41]

- 術後化学療法としてニボルマブを最大12ヶ月まで使用可
- CPS縛り無し
- 治験でのエビデンスは術前FP-RT療法を受けた人に限られ、16週までは2週ごと、以後は4週ごとに投与というスケジュールだったが、今回の適応拡大は最大12ヶ月という縛りのみ
- なお、本邦では術前FP療法が標準治療となっているが、術前FP療法にRTを上乗せするJCOG1109試験が進行中

* 唾液腺癌に対するトラスツズマブ適応拡大 [#z920956a]

- 併用する化学療法剤はドセタキセル指定
- HER2陽性の判定にはロシュの指定のHER2コンパニオン検査(ベンタナ ultraView パスウェーHER2 (4B5)およびベンタナ DISH HER2 キット)が必要。添付文書では、乳癌と胃癌はHER2過剰発現がと記載されていますが唾液腺癌に関してはHER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌となっています。
- 唾液腺癌に対してはB法(3週1回法)のみの承認
- 国内の唾液腺癌のHER2陽性率は15%程度(下記リンク参照)

#ogp(https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20211125160000_1167.html)

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