レ点腫瘍学ノート

日記/2021年/12月3日/唾液腺癌のHER2検査問題 の履歴ソース(No.1)

#author("2021-12-05T21:24:03+09:00;1970-01-01T18:00:00+09:00","default:tgoto","tgoto")
唾液腺癌に対するトラスツズマブ(ハーセプチン)がドセタキセルとの併用で承認され保険適用されました。唾液腺癌は頭頚部癌の中でも希少な部類で、HER2陽性であることが多いことは以前から知られていたのにも関わらず抗HER2療法を保険診療で実施できないことが問題視されていましたが、ようやくその問題が解消されました。しかし、現時点では唾液腺癌に対するHER2検査の体制が揃っていないため、せっかく承認された薬剤が非常に使いづらいという問題が起こっています。

唾液腺癌のトラスツズマブのHER2検査試薬はやはり[[コンパニオン検査>https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html]]でないとHER2陽性と取らないようです。そして免染の試薬(ベンタナ ultraView パスウェー HER2(4B5))は乳癌や胃癌等でも使われているため比較的実施できる施設や検査機関が多いのですが、免疫染色でHER2が2+だった際に必要となるISHはFISH不可でDISHのみ(ベンタナ DISH HER2キット)が認められています。しかし、ややこしいことに、このDISH検査はまだ唾液腺癌に対しては保険承認されてないことから外注受託会社の多くは唾液腺癌のDISH検査の体制が準備できておらず、DISH検査を院内で行っている医療機関以外で唾液腺癌のHER2検査ができない問題が起こっているようです。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1466318234093641729?s=20)

#ogp(https://www.info.pmda.go.jp/tgo/pack/30300EZX00043000_A_01_02/)

なぜDISH縛りがついたかというと、HUON-003試験が3+またか2+でDISH陽性の唾液腺癌を対象にリクルートしたからなのですが、結果的にHUON-003試験は15例全例が3+だったようです(そして15例ともDISHも陽性)。したがって臨床試験のお作法的にはDISHに限定するというのはわかるのですが、すでに乳癌や胃癌の世界でFISHがDISHと同じレベルで実用されておりその乖離が問題視されることはそれほど多くはないので、唾液腺癌を希少がんと考えているならDISHもOKにしてくれればよかったんですけどね…。

#navi(日記/2021年)