レ点腫瘍学ノート

日記/2021年/3月23日/FoundationOne Liquid CDxの承認 の履歴ソース(No.1)

#author("2021-03-23T18:39:17+09:00;1970-01-01T18:00:00+09:00","default:tgoto","tgoto")
2021年3月22日にFoundationOne Liquid CDx(以下、「リキッドF1CDx」)が承認されたようです。FDAでは2020年8月下旬に承認されていました。価格はまだ未定です。

#ogp(https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210323170004_1085.html)

*リキッドF1とリキッドF1CDxの違い [#had4cd3b]

#amptwitter(https://twitter.com/m0370/status/1363375880957960197?s=20)

検査対象遺伝子は既存の組織を用いたFoundationOne CDx(以下、「組織F1」)と同じ324遺伝子です。CDxではない初期のFoundationOne Liquid((https://assets.ctfassets.net/vhribv12lmne/3SPYAcbGdqAeMsOqMyKUog/d0eb51659e08d733bf39971e85ed940d/F1L_TechnicalInformation_MKT-0061-04.pdf))(以下、「リキッドF1」)では対象遺伝子は70遺伝子となっておりましたが、後からでてきているリキッドF1CDxはリキッドF1と異なり対象遺伝子数も組織F1と同等まで増加しています。

*サンプルレポートを見るとTMBやVAFは算出可能 [#f8ad33ab]

#amptwitter(https://twitter.com/m0370/status/1351462200821444609?s=20)

また初期の臨床研究などで使われていたリキッドF1ではVAFがレポートに掲載されてなかったようですが、今回承認されたリキッドF1CDxではVAFも算出されるようです。

米国FMIのサイトですでに後悔されているサンプル症例のレポート((https://images.ctfassets.net/w98cd481qyp0/2WrnIMZmkoE22dKqn7sj3j/44e3a50e625d6492d1820714ef38456f/F1LCDx_NSCLC__EGFR_CDx_Sample_Report_102020.pdf))を見るとMSIおよびTMBの判定が可能であるほかに、ctDNA全体から計算されるTumor Fraction(腫瘍細胞割合)をもとにしたVAF(variant allele frequency、腫瘍細胞割合)が表示されています。

#amptwitter(https://twitter.com/m0370/status/1351462669836959748?s=20)

#ogp(https://www.foundationmedicine.com/test/foundationone-liquid-cdx)

*コンパニオン診断機能は組織FoundationOne CDxより限定的 [#na874e4e]

一方でコンパニオン診断としての機能はリキッドF1CDxも若干備えているものの、組織F1と違って対象となるのは現状では肺癌のTKIとNTRKなどに限られているようです。特に検体の取りにくさからリキッドF1CDxの出番が期待されていた去勢抵抗性前立腺癌に対するオラパリブのBRCA変異検出のCDxとしては現状ではリキッドF1CDxは使用できないようです(将来的にはコンパニオン承認をとる可能性はあります)。

**2021年3月22日時点のコンパニオン機能の承認 [#w2a4fa07]

***非小細胞肺癌 [#eb325ebc]

-''活性型EGFR遺伝子変異''
アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ
-''EGFRエクソン20 T790M変異''
オシメルチニブ
-''ALK融合遺伝子''
アレクチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ
-''ROS1融合遺伝子''
エヌトレクチニブ

***固形がん [#n287854e]

-''NTRK1/2/3融合遺伝子''
エヌトレクチニブ

したがって現在の組織F1で承認されているコンパニオン診断能と比べるとBRCA 1/2やBRAF V600E、FGFR2融合遺伝子やMET遺伝子エクソン14スキッピング変異などのコンパニオン診断機能が欠けていると言えます。組織F1の方も徐々にコンパニオン診断機能が増えてきたので、リキッドF1CDxの方も今後コンパニオン診断機能が徐々に充実してくるものと思われます。

*おわりに [#k95aea06]

これまでの組織F1に比べて検体が採取しにくい腫瘍では特にリキッドF1CDxへの期待も強かったようです。今回当初予想されていたとおり春に承認されたのは喜ばしいニュースです。ただし保険償還価格が未定なので使用開始できるようになるにはもう少し日がかかりそうですね。

また、エキスパートパネルは現在でもどこのがんゲノム医療拠点病院でもかなりカツカツなのが現状であり、リキッドF1CDxが認められることでがん遺伝子パネル検査のハードルが下がると検査数も増えると思われます。すでに現状でも前立腺癌のオラパリブのコンパニオン検査としてのsomatic BRCAをどうやって検査するかという問題が現場を悩ませていますが(今回のリキッドF1CDxでBRCAのコンパニオン診断機能が搭載されなかったのは現場にとっては少し負荷軽減になったかもしれません)、増加する一途のエキスパートパネル症例をどのようにさばくのかという運用の問題も顕在化しそうです。エキスパートパネルのフロー整備に関する議論はまだまだ課題が山積みです。