レ点腫瘍学ノート

日記/2021年/3月23日/FoundationOne Liquid CDxの承認 の履歴の現在との差分(No.2)


#author("2021-03-23T20:01:24+09:00;2021-03-23T19:27:50+09:00","default:tgoto","tgoto")
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2021年3月22日にFoundationOne Liquid CDx(以下、「''リキッドF1CDx''」)が承認されたようです。FDAでは2020年8月下旬に承認されていました。価格はまだ未定です。
2021年3月22日に''FoundationOne Liquid CDx''が承認されたようです。FDAでは2020年8月下旬に承認されていました。価格はまだ未定です。

''リキッドF1CDx''が承認されると、手術検体や生検検体を必要とするFoundationOne CDx(以下、「''組織F1CDx''」)と異なり、末梢血中のctDNAでがん遺伝子パネル検査を実施することが可能となります。これによって検体が採取しにくい固形がん(たとえば膵癌や前立腺癌)でのがん遺伝子パネル検査へのアクセスが一気に改善することが期待されます。
''FoundationOne Liquid CDx''が承認されると、手術検体や生検検体を必要とする''FoundationOne CDx''と異なり、末梢血中のctDNAでがん遺伝子パネル検査を実施することが可能となります。これによって検体が採取しにくい固形がん(たとえば膵癌や前立腺癌)でのがん遺伝子パネル検査へのアクセスが一気に改善することが期待されます。

米国FMIのウェブサイトを見ると、''組織F1CDx''はパッケージがオレンジ色でしたが、''リキッドF1CDx''はパッケージがライトグレーになるようです。
米国FMIのウェブサイトを見ると、''FoundationOne CDx''はパッケージがオレンジ色でしたが、''FoundationOne Liquid CDx''はパッケージがライトグレーになるようです。

#ogp(https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210323170004_1085.html)

*リキッドF1とリキッドF1CDxの違い [#had4cd3b]
*FoundationOne LiquidとFoundationOne Liquid CDxの違い [#had4cd3b]

#amptwitter(https://twitter.com/m0370/status/1363375880957960197?s=20)
#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1363375880957960197?s=20)

検査対象遺伝子は既存の組織を用いた''組織F1CDx''と同じ324遺伝子です。CDxではない初期のFoundationOne Liquid((https://assets.ctfassets.net/vhribv12lmne/3SPYAcbGdqAeMsOqMyKUog/d0eb51659e08d733bf39971e85ed940d/F1L_TechnicalInformation_MKT-0061-04.pdf))(以下、「''リキッドF1''」)では対象遺伝子は70遺伝子となっておりましたが、後からでてきている''リキッドF1CDx''は''リキッドF1''と異なり対象遺伝子数も''組織F1CDx''と同等まで増加しています。
検査対象遺伝子は既存の組織を用いた''FoundationOne CDx''と同じ324遺伝子です。CDxではない初期の''FoundationOne Liquid''((https://assets.ctfassets.net/vhribv12lmne/3SPYAcbGdqAeMsOqMyKUog/d0eb51659e08d733bf39971e85ed940d/F1L_TechnicalInformation_MKT-0061-04.pdf))(CDxが付かない方)では対象遺伝子は70遺伝子となっておりましたが、後からでてきている''FoundationOne Liquid CDx''は''FoundationOne Liquid''と異なり対象遺伝子数も''FoundationOne CDx''と同等まで増加しています。

*サンプルレポートを見るとTMBやVAFは算出可能 [#f8ad33ab]

#amptwitter(https://twitter.com/m0370/status/1351462200821444609?s=20)
#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1351462200821444609?s=20)

また初期の臨床研究などで使われていた''リキッドF1''ではVAFがレポートに掲載されてなかったようですが、今回承認された''リキッドF1CDx''ではVAFも算出されるようです。
また初期の臨床研究などで使われていた''FoundationOne Liquid''ではVAFがレポートに掲載されてなかったようですが、今回承認された''FoundationOne Liquid CDx''ではVAFも算出されるようです。

米国FMIのサイトですでに公開されている''リキッドF1CDx''のサンプル症例のレポート((https://images.ctfassets.net/w98cd481qyp0/2WrnIMZmkoE22dKqn7sj3j/44e3a50e625d6492d1820714ef38456f/F1LCDx_NSCLC__EGFR_CDx_Sample_Report_102020.pdf))を見るとMSIおよびTMBの判定が可能であるほかに、ctDNA全体から計算されるTumor Fraction(腫瘍細胞割合)をもとにしたVAF(variant allele frequency、腫瘍細胞割合)が表示されています。
米国FMIのサイトですでに公開されている''FoundationOne Liquid CDx''のサンプル症例のレポート((https://images.ctfassets.net/w98cd481qyp0/2WrnIMZmkoE22dKqn7sj3j/44e3a50e625d6492d1820714ef38456f/F1LCDx_NSCLC__EGFR_CDx_Sample_Report_102020.pdf))を見るとMSIおよびTMBの判定が可能であるほかに、ctDNA全体から計算されるTumor Fraction(腫瘍細胞割合)をもとにしたVAF(variant allele frequency、腫瘍細胞割合)が表示されています。

#amptwitter(https://twitter.com/m0370/status/1351462669836959748?s=20)
''後日追記情報:'' MSIやTMBなどの情報は日本での厚労省承認の範囲から外れたため、「いわゆる2ページ目」には載らず、それ以降のページのprofessional service(参考情報)として掲載されるようです。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1351462669836959748?s=20)

#ogp(https://www.foundationmedicine.com/test/foundationone-liquid-cdx)

*リキッドバイオパシーは融合遺伝子検出能が低い可能性あり [#h9a19df8]

''FoundationOne Liquid CDx''はSNV(単塩基変異)やindel(挿入欠失変異)の検出に関する性能は''FoundationOne CDx''と同等であるものの、融合遺伝子や転座、大規模なlossを含むCNA(コピー数変異)の検出力は若干劣る可能性が示唆されています。

これは''FoundationOne Liquid CDx''そのものが劣っているというわけではなく、ctDNAが血中の150-200bpのDNA断片であるということからそもそも広い幅のDNAに生じた遺伝子異常がctDNAに現れにくいという本質的な原理によるものと思われます。

''FoundationOne Liquid CDx''はエヌトレクチニブなどの融合遺伝子を対象にする薬剤のコンパニオン診断機能を備えてはいますが、たとえば胆管癌のペミガチニブに対するコンパニオン診断機能などの承認を将来取ったとしても、胆管癌で組織が取れる症例であれば組織検体での''FoundationOne CDx''を提出する方が治療につながる割合が高いかもしれません。

*コンパニオン診断機能は組織FoundationOne CDxより限定的 [#na874e4e]

一方でコンパニオン診断としての機能は''リキッドF1CDx''も若干備えているものの、''組織F1CDx''と違って対象となるのは現状では肺癌のTKIとNTRKなどに限られているようです。特に検体の取りにくさから''リキッドF1CDx''の出番が期待されていた去勢抵抗性前立腺癌に対するオラパリブのBRCA変異検出のCDxとしては現状では''リキッドF1CDx''は使用できないようです(将来的にはコンパニオン承認をとる可能性はあります)。
コンパニオン診断としての機能は''FoundationOne Liquid CDx''も若干備えているものの、''FoundationOne CDx''と違って対象となるのは現状では肺癌のTKIとNTRKなどに限られているようです。特に検体の取りにくさから''FoundationOne Liquid CDx''の出番が期待されていた去勢抵抗性前立腺癌に対するオラパリブのBRCA変異検出のCDxとしては現状では''FoundationOne Liquid CDx''は使用できないようです(将来的にはコンパニオン承認をとる可能性はあります)。

**2021年3月22日時点のコンパニオン機能の承認 [#w2a4fa07]

***非小細胞肺癌 [#eb325ebc]

-''活性型EGFR遺伝子変異''
アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ
-''EGFRエクソン20 T790M変異''
オシメルチニブ
-''ALK融合遺伝子''
アレクチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ
-''ROS1融合遺伝子''
エヌトレクチニブ

***固形がん [#n287854e]

-''NTRK1/2/3融合遺伝子''
エヌトレクチニブ

したがって現在の''組織F1CDx''で承認されているコンパニオン診断能と比べるとBRCA 1/2やBRAF V600E、FGFR2融合遺伝子やMET遺伝子エクソン14スキッピング変異などのコンパニオン診断機能が欠けていると言えます。''組織F1CDx''の方も徐々にコンパニオン診断機能が増えてきたので、''リキッドF1CDx''の方も今後コンパニオン診断機能が徐々に充実してくるものと思われます。
したがって現在の''FoundationOne CDx''で承認されているコンパニオン診断能と比べるとBRCA 1/2やBRAF V600E、FGFR2融合遺伝子やMET遺伝子エクソン14スキッピング変異などのコンパニオン診断機能が欠けていると言えます。''FoundationOne CDx''の方も徐々にコンパニオン診断機能が増えてきたので、''FoundationOne Liquid CDx''の方も今後コンパニオン診断機能が徐々に充実してくるものと思われます。

*生涯のパネル検査の実施可能回数は? [#tda3b5b8]

リキッドバイオプシーが可能となれば標的治療開始前の治療選択のほかに、治療効果判定や耐性出現判定にも使われることが期待でき、''リキッドF1CDx''が使えるようになればパネル検査が生涯で1回という縛りが生涯で2回に緩和されるのではないか?との噂もあったようですが、今のところはパネル検査の実施回数が変更されるという情報は出ていないようです。
リキッドバイオプシーが可能となれば標的治療開始前の治療選択のほかに、治療効果判定や耐性出現判定にも使われることが期待でき、''FoundationOne Liquid CDx''が使えるようになればパネル検査が生涯で1回という縛りが生涯で2回に緩和されるのではないか?との噂もあったようですが、今のところはパネル検査の実施回数が変更されるという情報は出ていないようです。

*おわりに [#k95aea06]

これまでの''組織F1CDx''に比べて検体が採取しにくい腫瘍では特に''リキッドF1CDx''への期待も強かったようです。今回当初予想されていたとおり春に承認されたのは喜ばしいニュースです。ただし保険償還価格が未定なので使用開始できるようになるにはもう少し日がかかりそうですね。
これまでの''FoundationOne CDx''に比べて検体が採取しにくい腫瘍では特に''FoundationOne Liquid CDx''への期待も強かったようです。今回当初予想されていたとおり春に承認されたのは喜ばしいニュースです。ただし保険償還価格が未定なので使用開始できるようになるにはもう少し日がかかりそうですね。

また、エキスパートパネルは現在でもどこのがんゲノム医療拠点病院でもかなりカツカツなのが現状です。''リキッドF1CDx''が認められることでがん遺伝子パネル検査のハードルが下がると検査数も増えると思われます。すでに現状でも前立腺癌のオラパリブのコンパニオン検査としてのsomatic BRCAをどうやって検査するかという問題が現場を悩ませていますが(今回の''リキッドF1CDx''でBRCAのコンパニオン診断機能が搭載されなかったのは現場にとっては少し負荷軽減になったかもしれません)、増加する一途のエキスパートパネル症例をどのようにさばくのかという運用の問題も顕在化しそうです。エキスパートパネルのフロー整備に関する議論はまだまだ課題が山積みです。
また、エキスパートパネルは現在でもどこのがんゲノム医療拠点病院でもかなりカツカツなのが現状です。''FoundationOne Liquid CDx''が認められることでがん遺伝子パネル検査のハードルが下がると検査数も増えると思われます。すでに現状でも前立腺癌のオラパリブのコンパニオン検査としてのsomatic BRCAをどうやって検査するかという問題が現場を悩ませていますが(今回の''FoundationOne Liquid CDx''でBRCAのコンパニオン診断機能が搭載されなかったのは現場にとっては少し負荷軽減になったかもしれません)、増加する一途のエキスパートパネル症例をどのようにさばくのかという運用の問題も顕在化しそうです。エキスパートパネルのフロー整備に関する議論はまだまだ課題が山積みです。

#ogpi(https://oncologynote.com/?e809013ebf)
#ogpi(https://oncologynote.jp/?e809013ebf)

#description(2021年3月22日にFoundationOne Liquid CDxが承認されたようです。これにより、手術検体や生検検体を必要とするFoundationOne CDxと異なり、末梢血中のctDNAでがん遺伝子パネル検査を実施することが可能となります。検体が採取しにくい固形がん(たとえば膵癌や前立腺癌)でのがん遺伝子パネル検査へのアクセスが一気に改善することが期待されます。)

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