レ点腫瘍学ノート

日記/2021年/6月12日/ASCO2021感想まとめ の履歴の現在との差分(No.2)


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#tweet(https://twitter.com/asco/status/1402698908699144200?s=21)

ASCO2021が終幕しました。今年も色んな領域の新しい知見が発表されました。この1週間、TwitterにもたくさんのASCO関連のツイートが流れてきたので、印象深かったのをまとめておきます。

#contentsx(depth=1)
#tweet(https://twitter.com/ASCO/status/1402698908699144200)

*KEYNOTE-177試験 #3500 [#j4f40f80]

**MSI-H/dMMR大腸癌に対する一次治療のペムブロリズマブ vs 標準治療 [#z236b1b6]

#tweet(https://twitter.com/ASCO/status/1402713623206805504?s=20)

MSI-H/dMMR大腸癌ではKEYNOTE-164の結果からすでに二次治療以降でのペムブロリズマブの有用性が示されて標準治療になっていますが、これを一次治療に持ってきて既存の標準治療と比較させようという意欲的なデザインです。

昨年のASCO20ではすでにこのKEYNOTE-177のPFSが発表されており、PFSが標準治療群8.2ヶ月に対してペムブロリズマブ群は16.5ヶ月と倍増してみんなを驚かせました。

#ogpi(https://oncologynote.com/?680edb83ab)
#ogpi(https://oncologynote.jp/?680edb83ab)

あまりにもペムブロリズマブの治療成績が良かったので、FDAでは申請から1ヶ月の2020年7月にこのMSI-H/dMMR大腸癌の一次治療でのペムブロリズマブを承認しています。

#tweet(https://twitter.com/marklewismd/status/1267162164994826241?s=21)

当時はこんな画像も。消化器腫瘍内科医は、それまで15年も一途に連れ添ったFOLFOXが隣にいるというのに、ペムブロリズマブという若くてマブい女と出会ってしまって、にわかに浮足立っている、というものです。。。

#tweet(https://twitter.com/asco/status/1402713623206805504?s=21)

しかし、今回OSの結果が発表されると、なんとKEYNOTE-177はOSが事前設定された有意水準に届かないという残念な結果だったようです。

#tweet(https://twitter.com/vjoncology/status/1401963544070004744?s=21)

これを見ると生存曲線はペムブロリズマブ群が十分に標準化学療法群に差をつけているように見えて、OSのHRは0.74です。すでに発表されているPFSも0.60前後なので、大腸癌一次化学療法の標準治療を相手にこれだけの数字を出せれば治療成績としては十分。

ペムブロリズマブ群は5年の時点でOS中央値未達ながらロングプラトーになってしまっているので、MSTは一体どこまで伸びるのやら。これだけ優秀な成績を出していますがOS HR 0.74のp=0.0359が事前設定の有意水準0.0246を上回ってしまっているのでOSはunmetということになってしまいました。

PFSが発表された昨年のASCOの時点ではコントロール群の治療成績が悪かったのでは?ということを言ったりしてしまいましたが、その後のデータ追跡を経て今回のOSではコントロール群のMSTも36.7ヶ月と非常に良好で、これが差が付かなかった一因かもしれません。

**クロスオーバーの影響? [#d8aaee18]

#tweet(https://twitter.com/myriamchalabi/status/1401956028846051329?s=21)

クロスオーバーの影響を指摘するツイートもたくさんあるようですが(実際に60%があと治療に何らかの抗PD-1療法を受けている)、しかしこれまでの一次治療のKEYNOTEでは024も189も407も048も、先にペムブロリズマブを投与された群がロングテールに入ってしまうと化学療法後にクロスオーバーした群が追いかけてきてもその差を埋めることはできず、「クロスオーバーしても早いラインでペムブロリズマブを入れた群には追いつけない」というのが普通だったのです。

それを考えると、最強の奏効予測バイオマーカーであるMSIで選別した患者層に対してペムブロリズマブの先行投与がOSで有意差を示せないのは、何か試験デザインの問題ではないかと勘繰ってしまいます。生存曲線はこれだけ開いていますので…。

**一次療法のペムブロリズマブで恩恵を受けられない患者を選別するバイオマーカーが必要 [#zbbab907]

#tweet(https://twitter.com/marklewismd/status/1401240192225136640?s=21)

結局、胃癌のKEYNOTE-062もMSI-H大腸癌のKEYNOTE-177もペムブロリズマブ単剤がかなり良好な成績を示しつつもギリギリ有意水準には届かず(これについてはアルファを分割して多数のエンドポイントを同時に設定するMSDの試験デザインの失敗だとも言えますが)、ペムブロリズマブは重要なプレーヤーではあるものの一定割合の患者はやはり従来型の細胞障害薬での化学療法を必要とするということを示唆していそうです。

問題は今の時点ではこれをさらに高い精度で選別するバイオマーカーがなく(MSI-Hに限定した患者群の中ですらペムブロリズマブより化学療法で恩恵を受ける層がある)、今後もここを選び抜くプレシジョンオンコロジーの挑戦は続きそうです。

**成績は悪くないが承認はされるのか問題 [#d6151ff6]

ところでKEYNOTE-158のMSI-Hに対するペムブロリズマブはもちろん、KEYNOTE-811のHER2陽性胃癌に対するトラスツズマブ+ペムブロリズマブもOSは全然見ずに承認されてしまっているので、このKEYNOTE-177でOSが unmetだから承認しないというのはアンバランスに思うのですが、どうなるんでしょうか。

KEYNOTE-158はMSI-Hが希少がんだからということで甘めに判断されたのだとすると、今回のKEYNOTE-177もMSI-H限定の大腸癌で十分に希少フラクションなので…。

*JACCRO CC-13試験 #3501 [#fcdf64bc]
*JACCRO CC-13(DEEPER)試験 #3501 [#fcdf64bc]

**RAS野生型大腸癌に対する一次治療のFOLFOXIRI+Cet vs FOLFOXIRI+Bev [#d893a4d4]

#tweet(https://twitter.com/realbowtiedoc/status/1401955077913399297?s=21)

RAS野生型進行大腸癌でFOLFOXIRI+CetをFOLFOXIRI+Bevと比較した意欲的な臨床試験、しかも日本で行われた貴重なエビデンスです。

#tweet(https://twitter.com/realbowtiedoc/status/1401956402596253697?s=21)

全症例の82%の患者が左側大腸だったようです。左側と右側の解析では、Bev群はあまり差がないけれど、Cet群はDpRが10%程度低く、やはりセツキシマブは左側が得意のよう。

#tweet(https://twitter.com/realbowtiedoc/status/1401962433074237440?s=21)

**主要評価項目はDpR [#ef01c402]

ちなみにこの試験は主要評価項目がOSやPFSでなくDpRになっています。Cetはこれまでも瞬発力があり奏効の深さで有利なのでコンバージョン切除率が高いという評価を得ていたので、この試験でもDpRはCet群が勝ると考えられていました。

主要評価項目であるDpRでは確かにCet群が優っていました(57.6% vs 46%)が、ORRやDCRは差がなく(数値自体はBev群がわずかに上)、そしてコンバージョン手術に強いということが期待されていたもののR0切除率にも差がないという結果でした。

左側大腸の患者を集めても(DpRで高くても)ORRやR0切除率で差がないとなると、切除を狙ってCetという意見の根拠が少し弱くなってしまったかも?

**主要評価項目はDpR [#ef01c402]
**OSやPFSで比較したい気も… [#ve331935]

そして、やはり気になるのは主要評価項目がOSやPFSでなかった点。せっかく360人もの患者さんに協力してもらって臨床試験をしても、エンドポイントが一般的な臨床試験と違っているとその価値が後世に伝わりにくくなって、もったいなかったような気が…。

最近は様々な主要評価項目を設定する試験が増えているとは言え、細胞障害薬のhead to headのような比較試験ではやはりOSかPFSで見たほうが試験の価値も高まったような気もしますが、評価まで時間がかかり(それに伴って臨床試験実施コストも上がる)、必要症例数も増えて、現実には難しかったのかもしれませんが。

**「積極的に攻める症例」でのセツキシマブの立ち位置は? [#x53717ab]

さて、セツキシマブはFIRE-3の頃に「どんどん前のラインで」というイケイケドンドンの雰囲気だったのに、最近はまた徐々に後ろのラインへ押し込まれてますね。
さて、セツキシマブはFIRE-3の頃には「どんどん前のラインで抗EGFR抗体を使うべき」というイケイケドンドンの雰囲気だったのに、最近はまた徐々に後ろのラインへ押し込まれてますね。

リキッドRASでのリチャレンジなんて最終ライン近くで使うことが前提のような設計にも見えますし…。今後、セツキシマブは大腸癌診療で存在感をどれくらい保ち続けられるんでしょうか。。。

* FIRE-4.5試験 #3502 [#tc76f844]

**BRAF変異大腸癌に対する一次治療のFOLFOXIRI+Cet vs FOLFOXIRI+Bev [#p1b90136]

#tweet(https://twitter.com/realbowtiedoc/status/1401959601348644866?s=21)

そのJACCRO CC-13(DEEPER)試験の横で、BRAF V600E変異陽性大腸癌の一次治療でのFOLFOXIRI+Bevに対するFOLFOXIRI+Cetの優越性を証明しようとしたFIRE-4.5試験も発表されていましたが、こちらもネガティブ。ORRはCet群が49.2%に対してBev群が60%。PFSはCet群が6.3ヶ月に対してBev群は10.1ヶ月ですがimmatureです。
そのJACCRO CC-13(DEEPER)試験の横で、BRAF V600E変異陽性大腸癌の一次治療でのFOLFOXIRI+Bevに対するFOLFOXIRI+Cetの優越性を証明しようとしたFIRE-4.5試験も発表されていましたが、こちらもネガティブ。ORRはCet群が49.2%に対してBev群が60%。PFSはCet群が6.3ヶ月に対してBev群は10.1ヶ月ですがPFSはimmatureで評価できないという判断になっているようです。

こちらについては先程のJACCRO CC-13(DEEPER)試験と少し雰囲気が違っていて、BRAF V600E変異陽性というややアウェーなセッティングでCetがBevを上回ることはないだろうという多くの方の予想通りの結果になったのではないでしょうか。

BRAF変異にはエンコラフェニブ・ビニメチニブなどが二次治療で待っているので、以前ほど無理にトリプレットを入れる必要性は無くなったのではないかとも思います。
BRAF変異にはエンコラフェニブ・ビニメチニブなどが二次治療で待っているので、以前ほど無理にセツキシマブを一次治療で入れる必要性は無くなったのではないかとも思います。

*TRUSTY試験 #3507 [#wae99d07]
**大腸癌二次治療のFTD/TPI+Bev vs FOLFIRI+Bev [#ae70e03c]
**こちらへ続く [#f750a1bf]

さて次は大腸癌の二次治療の演題を見てみましょう。大腸癌二次治療のFOLFIRIはかれこれ15年くらい今のポジションをキープし続けていますが、FTD/TPIがその座を脅かすのではないかという見方が最近されていました。そこでFOLFIRI+Bevを相手にFTD/TPI+Bevの非劣性を見ようとしたのがTRUSTY試験です。
#ogpi(https://oncologynote.jp/?b414deb648)
#ogpi(https://oncologynote.jp/?2ce11eba97)

#tweet(https://twitter.com/realbowtiedoc/status/1401988088608432132?s=21)
#navi(日記/2021年)
#pcomment

ぼくは実はFOLFIRIは完敗すると思っていました。FOLFIRIは「時々」非常に良い働きをする患者さんに出会うこともありますが、そういう患者さんはやっぱり少なくて(特にFOLFOXが不応の二次治療では)FOLFIRIは弱いんじゃないかと思っていたので…。しかし開けてみるとこの結果。OSもFOLFIRI+Bevが18ヶ月に対してFTD/TPI+Bevは14ヶ月と、やや残念な感じでした。

それにしても、そもそもFTD/TPI+BevがFTD/TPI単剤と比べてどうなのかという問題は手付かずのように思うので、それも検証しなければならないような気がしていますが。

*MyPathway試験 #3004 [#w8d2d311]
**HER2変異固形がんに対するトラスツズマブ+ペルツズマブ [#g5555d11]

臓器横断的なHER2陽性/増幅バスケットMyPassway試験のトラスツズマブ+ペルツズマブ単群試験。KRAS変異は抗HER2療法に耐性があることが再確認されたようで、KRAS変異群には治療成績不良です。しかしHER2陽性全固形がんでORR 23.3%、DCR 44.6%、DoR 7.9ヶ月とかなりの好成績です。

#tweet(https://twitter.com/julienmazieres/status/1401802499992993792?s=21)

患者背景因子が揃えられていない別集団での治療成績の比較は行儀が悪いので本来は避けるべきですが、数字だけを見ればHERACLES-AのラパカペよりもDCRは低い一方でDoRは長いようです。

これ、ついにHER2陽性大腸癌にトラスツズマブなどが承認される根拠になるんでしょうか?まぁ、HER2陽性大腸癌にはDESTINY-CRC01のT-DXdが控えていてそちらが本命でもあります。

*根治切除不能の腎癌を切除するのかどうか問題のFDAプール解析 #4516 [#of2c6f68]

#tweet(https://twitter.com/anavmanana/status/1401623683144118273?s=21)

2018年のASCOのプレナリー演題だったCARMENA試験からずっと続く、治癒切除不能な腎癌の原発巣を切除するのかどうか問題。ほとんど有効な薬物療法が無かった一昔前なら腎癌は(卵巣癌などと同じように)治癒切除が不能でもcytoreductionのためにも切除するのが当然でしたが、スニチニブなどのTKI、そして様々なICIが腎癌の薬物療法の治療成績を急速に向上させると、そもそも治癒切除が不能な腎癌に対する初期手術が必要なのかというCQが生まれるようになりました。

2018年発表のCARMENA試験では薬物療法(スニチニブ)のみの群が手術→スニチニブの群に対して非劣性を示したことで、もはやこのタイプの手術は不要ではないかという議論が起こりました(Best of ASCO Japan 2018にも選ばれていました)。しかし、この試験は脱落が多かったりかなり進行例が含まれて手術群に不利だった可能性があることからその後も研究が続けられています。

手術の至適タイミングを探ろうとしたSURTIME試験は症例募集が不調に終わり、有効な解析に至りませんでした。今回のASCO21で発表されたのはプール症例の後方視的解析です。

#tweet(https://twitter.com/anavmanana/status/1401623683144118273?s=21)

これをみると手術群の全生存がやはり優れているようで、TKIをさらに上回るICIが標準治療となってからも手術の有用性が失われていないように見えます。

**患者の選び方、試験のデザインの仕方によっても変動しうる結果は解釈に注意 [#p16975c2]

ただし、そもそも長期生存が期待できる患者だからこそ手術をした、あるいは全身状態や併存症の問題で手術を見送らざるを得なかったという背景が多くの症例にあったことを考えると、このデータだけをもってやはり治癒切除が不能な腎癌でも手術をした方が予後が良いとは言えません。

#tweet(https://twitter.com/mtcosb/status/1401653262646857728?s=21)

じゃあRCTならば良いのかというと、たとえRCTを組んだとしてもCARMENA試験がそうであったようにハイリスクな進行がん症例が多くエントリーされれば手術群に割り当てられた症例が過剰なリスクを負う(=薬物療法群に有利なバイアスがかかったセレクションになる)ことになりますし、逆に手術しやすいローリスク症例をエントリーさせればそれは「治験だけでしか成り立たない現実離れした条件が良い症例だけのエビデンス」になってしまいますから、RCTならこの問題を解決できるとは言えないのが難しいところですが。。。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1401780960761319431?s=21)

**優劣が付かないということのメリット [#yebd1331]

優劣がつかないというのは決して悪いことばかりではありません。例えば手術群は明らかに治療成績が劣るとなってガイドラインに明記されてしまうとQOL維持のために手術を選ぶという選択肢を取るハードルがいくらか上がってしまいますし、手術をすべきとなってしまうと望まぬ手術を受けることになる患者が増える懸念もあります。

本来はそうならないようにshared decision makingの考えがあるのですが、そうは言っても日本では依然として主治医の決定権は絶大ですし、また訴訟リスクなどを恐れてガイドラインに杓子定規の治療を行おうとするバイアスがかからないとも言えない。

そういう背景を考えると、手術でも非手術でも予後に大きな差がないと示されたことは患者の希望に応じてどちらの選択肢も選びやすくなった、患者本意の治療を行いやすくなったと考えることもできそうです。こういうデータがないとそのような医療が提供できないのも情けないような気もしますが、まあこれも現実の一側面。

*JCOG1407試験 #4017 [#t1a2b6fa]
**局所進行膵癌に対する一次治療のmFOLFIRINOX vs GEM/nabPTX [#b9fd4ed3]

#tweet(https://twitter.com/jcog_official/status/1397508061292498953?s=21)

切除不能進行再発の膵癌ではFOLFIRINOXとGEM/nabPTXのいずれかが一次治療の標準になっていますがその優劣はまだ明確になっていません。JCOG1407試験はこの両者について局所進行膵癌で比較した試験です。

#tweet(https://twitter.com/yoh_tw/status/1395243171110481920?s=21)

結果的に両者の差はほとんどなく、やはりFOLFIRINOXとGEM/nabPTXは今後も併立の状態が続きそうです。1年生存率はGEM/nabPTX群でわずかに高く、2年生存率は逆にFOLFIRINOX群で高いのは、前者の方が「満遍なくそつなく仕事をする」のに対して後者の方が「選ばれた患者層には高い効果を示す」とみることができるような気もします。

FOLFIRINOXはプラチナレジメンでBRCA変異の影響も大いにあるでしょうから、BRCA変異患者がどの程度含まれていたのかも知りたいところ。

#tweet(https://twitter.com/yoh_tw/status/1395918617644978180?s=21)

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1401327488106569736?s=21)

**転移性膵癌ではどうか? [#pba937b3]

ちなみにこのJCOG1407は局所進行膵癌を対象にしていて、転移性膵癌については現在進行中のJCOG1611試験を待つ必要があります。こちらはFOLFIRINOX群とGEM/nabPTX群に加えて、FOLFIRINOXの5FUをS-1に置き換えたS-IROX群の3群比較試験で、S-IROXがFOLFIRINOXと比べてどうなのかにも注目が集まります。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1395909512167510021?s=21)

*KEYNOTE-811試験 #4013 [#c7dbdc82]
**HER2陽性胃癌に対する一次治療の標準化学療法+トラスツズマブ±ペムブロリズマブ [#a1806382]

#tweet(https://twitter.com/sloan_kettering/status/1401277639814430723?s=21)

HER2陽性胃癌の一次治療ではToGA試験からフッ化ピリミジン+プラチナ+トラスツズマブを使用するのがこの10年間の標準治療でしたが、HER2陰性のほうでCheckMate-649やKEYNOTE-062などの試験が示そうとしたように、当然HER2陽性のほうも既存の標準治療に免疫チェックポイント阻害剤を上乗せすることを目指した試験が組まれています。

KEYNOTE-811試験はFP/CAPOX+トラスツズマブにペムブロリズマブまたはプラセボを上乗せした第3相RCTで、今回はその中間解析結果の結果の発表でした。

中間解析では奏効率が51.9%→74.4%、完全奏効率が3.1%→11%といずれも大きく向上しています。腫瘍が80%以上縮小した割合がペムブロリズマブ群で32%もあり驚異的です(プラセボ群の15%でもかなり優秀でトラスツズマブもパワーを感じますが)。PFSやOSはまだ試験途中で論じるのは難しそう。

**米国ではすでにFDA承認済み。日本は? [#w13290be]

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1401332262751277061?s=21)

米国ではもうこの抄録が発表された時点でHER2陽性胃癌でのペムブロリズマブがFDA承認されてしまったようです。日本ではOSを見にいく試験の中間解析のORRで承認されるのは難しそうなのでまだしばらく待ちが必要そうですが、これは承認されるのは時間の問題っぽい(あれだけの成績を出していたKEYNOTE-177がOSで有意水準に届かなかったのを聞くと油断はならないですが)。

#ogp(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202106/570515.html)

* EA1131試験 #605 [#q964627e]
**術前化学療法でpCRとならなかったbasal-lineトリプルネガティブ乳癌に対する追加化学療法のCape vs プラチナレジメン [#h28ee866]

EA1131試験は、標準的術前化学療法を受けたのち切除を受けたが1cm以上の残存病変がありnon-pCRだったbasal-likeのトリプルネガティブ乳癌に対して、さらにカペシタビンかプラチナ製剤の術後化学療法を上乗せする比較試験です。

術前化学療法でnon-pCRだったトリプルネガティブ乳癌に対して術後にカペシタビンをさらに載せるのはCREATE-x試験で有効性を示されてすでに標準治療となっていますが、術後の追加化学療法の至適レジメンがカペシタビンなのかどうかを検証しようとしたデザインです。

トリプルネガティブ乳癌ですからBRCA変異などとの関連も想起させ、プラチナ製剤による治療がカペシタビンを上回ると予想した人も多かったと思いますが、結果を見てみると、、、

#tweet(https://twitter.com/mtcosb/status/1401743085189562368?s=21)

これは意外な結果でした。差が無いどころかカペシタビンはプラチナより優れているようです。理由については様々な考察がなされているようです。

basal-likeの中でもgBRCAなどHRDっぽいサブサブタイプの人は術前化学療法の感受性が高いためにnon-pCRとならずに、逆にpCRになってない症例はbasal-likeでもHRRっぽくない人(いわゆるBL2?)がセレクションされてるというようなことも考えられそうです。

#tweet(https://twitter.com/gantaisaku1105/status/1401701389743452167?s=21)

なお、このEA1131試験についてはJ Clin Oncolに早速文献が掲載されています。

#ogp(https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.21.00976)

#tweet(https://twitter.com/mtcosb/status/1401790737444851712?s=21)

*OylmpiA試験 #LBA1 [#t668548c]
**gBRCA変異乳癌に対する術後化学療法としてのオラパリブ vs プラセボ [#qd84a47f]

#ogp(https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/196707)

#tweet(https://twitter.com/SarahJMahMD/status/1401590155346157575?s=20)

gBRCA1/2乳癌の術後療法としてのこの辺は乳癌に詳しい先生に解説してもらう方が良さそうなので演題の要点だけ…。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1400561865911009280?s=20)

当初はトリプルネガティブ乳癌に限定していましたが途中からはLiminal typeもエントリー可能となったようです。

#ogp(https://twitter.com/vc_neco/status/1362246391091720193?s=20)

NEJMにも同時掲載され、そのインパクトの大きさが伝わります。

#tweet(https://twitter.com/nejm/status/1400561679864238080?s=21)

**他にもNEJMに同時掲載された発表も [#a7f2e5cc]

ついでに、今回のASCO21に合わせてNEJMに掲載されたのは、KRAS G12C変異陽性非小細胞肺癌のソトラシブ(CodeBreaK100)や、進行尿路上皮癌の術後療法としてのニボルマブ(CheckMate-274)などがありました。

#ogp(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2103695)
#ogp(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202106/570539.html)
#ogp(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2034442)

いつもはもう少しNEJMに載ったような気もしたので、もしかして今年はNEJM的には惹かれる演題が少なかったんでしょうか??

*他にちょっと興味あるテーマ [#j7e1e55d]

** MBCに対する化学療法の治療強度を患者さん自身が決めるという発表 [#c20c4ff3]

#tweet(https://twitter.com/tkdmhawkeye/status/1401254921156976641?s=21)

周術期化学療法の治療強度は安易に落とさないことが重要ではありますが、一方で根治不能な状況では患者の考え方・価値観に応じてQOLを保った治療を考えることが重要なのは言うまでもありません。

こういう研究はなかなか大々的に取り上げられることがないのが少し残念で、今後こういう観点からの演題も増えてほしいです。ACPとか、老年腫瘍学(Geriatric oncology)にもつながるテーマ。

*eNRGy試験 #3003 [#x16481a8]
**固形がんの新たな治療標的NRG1 [#hf2c2d43]

https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2021.39.15_suppl.3003

#tweet(https://twitter.com/samuntari/status/1401380758762102789?s=21)

eNRGy trialはエナジー試験と読むのでしょうか。

新たな臓器横断的としてNRG1が注目を集めているようです。ゼノクツズマブ(MCLA-128)の第1/2相試験のウォーターフォールプロットを見ると肺癌が多く「また肺癌かよー」という気がしなくもないですが、膵癌でもかなり見られるマーカーのようで、しかも分子標的治療暗黒大陸だった膵癌でも割と成績が良い。今後に期待です。

#ogp(https://www.onclive.com/view/zenocutuzumab-demonstrates-clinical-activity-in-a-variety-of-nrg1-cancers)

* U31402-A-U102試験 #9007 [#nd5e7810]
**EGFR-TKI不応非小細胞肺癌に対する抗HER3-ADC [#x1e9190a]
 
#tweet(https://twitter.com/asco/status/1402048494504906753?s=21)

EGFR-TKI抵抗性肺癌への抗HER3抗体を使った新規ADC、パトリツマブデルクステカンの第1相試験。EGFR-TKIの前治療歴があっても(それがオシメルチニブであっても)奏効率39%でDCRも7割前後あるのでかなりの好成績です。HER3(ERBB3)も今後は治療標的になってくるんでしょうか。

#ogp(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202106/570553.html)

* ICIにプロバイオティクス #4513 [#y09eba2d]

#tweet(https://twitter.com/kitsunestudy/status/1401738916617625604?s=21)

ニボルマブ+イピリムマブに整腸剤を併用するとORRもPFSも改善するという話。腸内細菌叢とICIの奏効の関係については多種多様な報告が上がっており、細菌叢のdiversityが関係していると言ったり抗菌薬投与は有効性を損ねたりするという話も耳にしますが、今回の研究は29例だけの第1b相のようなので今後の前向き検証的試験が必要ですね。

そもそも経口整腸剤がどの程度腸内に生着しているのか自体がかなり怪しいと思っているので(腸内細菌叢を外部から人為的に変化させるのはそう簡単ではなさそう)、どちらかと言うと経口プロバイオティクスがICIの有効性にそこまでの影響を与えることについてはやや懐疑的に見ています。あるいは、むしろdiversityを低下させてかえって逆効果な可能性もあったりして…。続報待ち。

**ASCOとTwitter #11039 [#n16023bd]

#tweet(https://twitter.com/tmprowell/status/1400928326034890754?s=21)

以前からも海外の学会に比べて日本は(日本循環器学会以外は)うまくインターネット、特にSNSを使えていないと思っていましたが、ASCOはうまくSNSとの融和を進めて行っているように思います。

日本ではまだweb開催が珍しかった頃の2020年6月から完全web開催で実施していますが、Twitter上でのASCOの存在感、あるいはASCOでの Twitterの存在感はどんどん増しているようです。

*まとめ [#g7ad4877]

今年は2020年に比べるとなんとなく予想された結果の演題が多くて、開けてビックリということは少なかったように思います。それでもKEYNOTE-811やEA1131など結果の解釈が悩ましいものもあり、また臨床試験の結果がOSの有意差だけでは確定できない新時代になってこの結果が承認許認可当局にどのように判断されるのか気になるものも沢山ありました。

ASCO21のうち注目の演題、またガイドラインを書き換えたりして日本の臨床に影響を与えそうな演題については、業界を代表するエキスパートの解釈を踏まえて解説講演をしてもらえるBest of ASCO Japanが来月に開催されます。

どの演題が採択されるのかは未定ですが昨年は新型コロナウイルス感染症のドタバタで1日に短縮されていたのが今年は2日間に復活しており、今から楽しみです。