レ点腫瘍学ノート

日記/2021年/8月25日/普通の人の心 の履歴差分(No.7)


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ぼくはバッドニュースを伝えるのが仕事みたいなもので、若い頃はそれで動揺したり疲れたりストレス感じたこともあったが、毎日毎日それをやってるので自分の精神も随分と図太くなってしまった。

そんなぼくだけど、ときどきふと今の自分を見て、医学部の3年か4年くらいの時のある教授が言った、「君たちはまだ『普通の人の心』と『医療者の精神』を両方半分ずつ持ってるが、そんな純粋な君たちもあと数年もして臨床に出ればもう『普通の人の心』を失って忘れてしまうだろう」という予言めいた呪いのような言葉を思い出してしまうのだ。

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そのときの肝心の授業内容はさっぱり思い出せないが、その教授がポロリとこぼしたこの言葉はなぜかずっと忘れられず、今も時々ふと思い出す。

たぶん医療者はみんなどこかしら『普通の人の心』を失ってしまっているし、毎日のように生きると死ぬの狭間を見る仕事はそうでないとやっていけない面もある。

経験値ゆえに冷静に先行きを読めてしまうのがその理由かも知れないと思う。
人生を閉じてゆく人を前に若い研修医や看護師が感情をこらえきれない様子を見ると「ああ、君はまだ『普通の人の心』を持っているんだね。その心をいつまでも大切にしなよ」と、図太くなってしまったおじさんは思うのであった。

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#navi(日記/2021年)