レ点腫瘍学ノート

日記/2022年/2月19日/JSMO2022反省会 の履歴の現在との差分(No.5)


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#ogp(https://www.c-linkage.co.jp/jsmo2022/)

2022年の[[JSMO(日本臨床腫瘍学会)学術集会(JSMO2022)>https://www.c-linkage.co.jp/jsmo2022/]]が終わりました。[[昨年版はこちら>https://oncologynote.com/?851e891000]]。
2022年の[[JSMO(日本臨床腫瘍学会)学術集会(JSMO2022)>https://www.c-linkage.co.jp/jsmo2022/]]が終わりました。[[昨年版はこちら>https://oncologynote.jp/?851e891000]]。

''反省会''というタイトルにしていますが、ふり返りという意味であって、ネガティブな意味ではありません。はじめてのハイブリッド形式だったJSMO2022を振り返ってみて、どういう会だったかを後年に忘れてしまうことがないように、新鮮な今の記憶をここに記録しておきます。

#contents

* はじめに [#vf73801a]

昨年(JSMO2021)同様に今年もコロナ禍の影響が大きかったのですが、昨年が完全WEB開催となったのに対して、今年(JSMO2022)は国立京都国際会館の''リアル会場''と''WEB中継''を併用した''ハイブリット形式''で行われました。

昨年(JSMO2021)の完全ウェブ形式と違って会場の参加者とWEBからの参加者がどのように同時にディスカッションするのかなどが心配されましたが、ある程度はうまくいっていたように思います。ただしウェブから見る場合は昨年のMICEnaviに比べると今年の''抄録アプリ''は若干課題が残るようです。

#tweet(https://twitter.com/JSMO_official/status/1494799641397035008?s=20,noconv)

* 抄録アプリ [#l6f6d13c]

昨年(JSMO2021)までのMICEnaviとは違って今年(JSMO2022)は新規に開発されたアプリのようでした。いくらか気になる点があったのでメモしておきます。

** 抄録アプリと視聴サイトの連携問題 [#n64bc6c7]

今回は試聴サイトとアプリが別会社で作られていたのか、''抄録アプリと視聴サイトの連携が著しく悪い''ように感じました。

例えば、''視聴サイト上では今流れている演題発表の抄録のタイトルや中身を見ることができません''。後述のタイムスケジュールの乱れもあって発表がしばしば時間通りに進んでいない状況になっていたのですが、いま発表しているのが何番目の誰なのかもわかりにくく、タイトルと抄録本文を見ながら発表を聞くにはその都度画面を切り替える必要があり、手間がかかりました。

また、昨年(JSMO2021)の''MICEnavi''と違い、今年は抄録アプリで演題をチェックして、''抄録アプリから直接視聴ページにジャンプすることもできません''。抄録アプリで見たい演題を見つけた後は、その演題が行われている会場と時間を覚えて視聴サイトにログインし、そちらから講演を聞く必要があります。これは不便を感じました。ここの連携は改善してほしいですね。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494162157197410306?s=20,noconv)

** 何度も再ログイン問題 [#gd7fd209]

視聴サイトは、ログインしてしばらくすると自動でログオフされてしまうらしく、動画再生していると突然止まってしまうので、''何度も再度ログインが必要''でした。

しかも''ブラウザのパスワードのオートフィルが作動しない''設計になっているので、その都度パスワードから入れ直さなければなりませんでした。質疑応答が聴きたいところで途切れてしまって聞き逃しと言うこともあり、これはフラストレーションが溜まります。画面表示サイズも小さく、抄録アプリの使いにくさというより視聴サイトの使いにくさかもしれませんね。

** 視聴サイトの視認性 [#lf78e1e6]

''タイムスケジュール''は抄録アプリ上では時間が左から右へ流れるのに対して、視聴サイトの中では時間が上から下へ流れます。この時間の流れる軸の方向の違いは混乱を招きました。できれば同じ見た目に表示を揃えてほしいところ。

また、視聴サイトはなぜか画面を広く使わずに一部だけに小さく表示されるので、これはこなれていないですね。PCの大画面で見てもやはり画面の一部に小さく表示するか全画面表示になるかのどちらかで、もどかしい印象がありました。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494165128295555072?s=20,noconv)

*ハイブリッド開催 [#t8155098]

3日間のうち現地参加とWEB参加の両方を1.5日ずつ経験しました。現地参加の良さも残しつつWEB参加の利便性もあり、かなり高いレベルでリアル学会とWEB学会が文字通りハイブリッドになっていたと思います。

#tweet(https://twitter.com/jsmo_official/status/1494853506624536578?s=21,noconv)

現地では久々の再会を喜ぶ人もたくさん見かけましたし、後に述べる書籍展示販売や企業ブースなど学会の活気を感じさせるものも久しぶりに見かけました。なぜか甘党が多いJSMO恒例のおやつの提供もあり、また京都らしい舞妓さん・芸子さんとの記念撮影というイベントもあったようです。この辺りは''リアル学会の楽しい点''ですね。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494191361717075970?s=20,noconv)

しかし人が減っても部屋は大きいので、非常に人口密度が低くてがらんどうでさみしい感じが否めず。例年ほどには''学会の熱気が感じられにくい会''になってしまいました。むしろ完全WEB開催だった2021年のほうがずっと盛り上がっていたように感じるのですが、この違いはなぜなのかと理由を聞かれると難しい。

参加者も昨年(JSMO2021)は木曜日は15時以降で実質は「金土日」に開催されたのに対して、今年(JSMO2022)は「木金土」で土曜は夕方までで終了というスケジュールだったので、''普通に仕事をしている人が多くて参加者の絶対数が少なかった''かも知れません。

なんとなく部屋が閑散としていて質問が盛り上がりにくかったのは否めませんが、これをハイブリッドで解決するのは難しく、仕方がないのかも知れません。

** ハイブリッド形式での現地会場構成 [#c4a7179c]

ハイブリッドなので''会場構成はもっとコンパクトに''できそうな気もします。コロナ禍前のJSMO2019に比べると、Room C-1/C-2も使ってないし5階の小部屋群も使っていません。Room B-2もプレスルームになっています。これらを考えると、ザ・プリンス京都宝ヶ池のロイヤルルームやプリンスホールの会場の演題を本館に集約できなかったのかなとも少し思いました。

本館からザ・プリンス京都宝ヶ池の講演会場には急いでも歩いて5分はかかります。途中は屋根がないところを歩く必要がありますが、第2日は雪が、第3日は雨が降っていました。WEBのほうが移動が簡単で、現地に来ると何百メートルも歩かされ何度も検温されというのでは、徐々に現地参加の人が減ってしまいます。''現地参加でも極力移動時間を減らしたい''。(国立京都国際会館は、なぜザプリンス京都宝ヶ池との間のあの道を渡る数十メートルに雨に濡れない屋根を設置しないんでしょうね?)

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494451150858645507?s=20,noconv)

** Presidential Sessionの豪華さ [#t45f39bd]

2019年からの''Presidential Sessionの豪華さは良かった''と思います。各演題にディスカッサントが解説を加えてくれるのもゴージャスな感じです。来年以降も、海外学会に負けない優秀演題はこのようにどんどん特別扱いして欲しい。

もっとも、ここでのディスカッサントが解説するというのは''Highligh of the Dayと役割が重なる''と言えば重なるのですが。Highlight of the Dayのほうが日本語だったので多くの参加者には受け入れやすかったかも知れませんね。

(ちなみにアンケートでPlenary SessionをPresidential Sessionに変えたことをどう思うかという質問がありましたが、名前以外にどこがかわっていたのかわかりませんでした。どこが違った?)

** ハイブリッド形式のポスター発表 [#t0cfd145]

''ポスター発表をハイブリッド形式でどのように開催するか''というのはこれからの時代の課題かと思います。現地でいる人にとってもっとも見えやすいポスター発表の形式と、WEBで参加している人が見るデジタルポスターでは、かなり伝わり方が違ってしまうでしょう。

以前のようにポスターの前に演者が立っていて直接内容の説明が聞けるというわけでもなく、''ポスター発表ならではの近い距離での意見交換のような魅力''がハイブリッド形式になるとどうしても失われてしまします。e-ポスターにするとどうしても見てくれる人の数が大きく減ってしまいますしね。

いっそのこと、2021年のようにポスター発表形式を大幅縮小または全廃して、ミニオーラルに全て回してしまうというのは一つの解決策かと思いますが。。。

* 質疑応答 [#n45a6335]

** ハイブリッド形式での質疑応答 [#pe44ce89]

今回はリモートで参加している座長も多数いました。しかし現地で質問のためにマイクの前に立っても、リモートの座長からはそれが見えないようでした。これは座長の立場からすると質問を振りにくくて困ったでしょう。

また現地でも、壇上には演者も座長もおらずスライドから音声が流れてくるだけなのに、そこでマイクの前に立って質問をするというのはやや心理的なハードルを感じます。

いつもJSMOは質疑応答が盛り上がる学会という印象を持っていましたが、''今回は昨年までと比べて断然質問数が少なかった''ように思います。メインホールで行われる大型講演でも一つも質問が出ていなかったのが、ハイブリッド形式ならではの「''質問のしにくい雰囲気''」を表していたと思います。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494213458384289792?s=20,noconv)

もっとも、質問が出てきにくいことの最大の理由はハイブリッド云々以前に英語限定にしてしまったことだと思いますが…。

** 英語 [#id7328ce]

昨年に続き、今年も第一線で活躍している先生方の英語の流暢さには舌を巻きました。しかし、これがJSMOの取っ付きにくさを高めているという懸念も。

がんセンターに所属して国際的に活躍している腫瘍内科医にとっては英語は使いこなせて当然なのかもしれませんが、それだとJSMOの一般会員の大部分は置いてけぼりになってしまいます。JSMOの会員の大部分は、がんセンターで世界を相手に活躍しているスーパースターではなく、一般病院の平凡な臨床医です。医学生や若い研修医の参加者数が増えないという悩みを聞くことがありますが、それは「英語縛り」でやったらそうなるのは当たり前。

海外からの演題応募を呼び込むためにはアドバンテージとなる英語限定ですが、逆に医学生や研修医の参加を促すために、また看護師や薬剤師からの演題応募を増やすためには、英語限定というのはかなり大きなディスアドバンテージになります。

あまりにも''英語にこだわりすぎて、若年層・他職種の参加者増加や討論や意見交換といった学会の本来の盛り上がりを殺してしまっている''ように思います。(多職種連携シンポジウムや国内医療事情を扱って討論を重視するセッションは、やはり日本語で実施してみては?)

*書籍展示販売万歳! [#e1fce368]
*書籍展示販売 [#e1fce368]

紀伊國屋書店とガリバーの書籍展示販売。これは本当に今回の学会の良かった点の1つです。普通の本屋は医学書が無いし、ネット書店は「中身を見て買う」ができないので、実際に医学書を手に取って中身を見て本を選ぶことができるリアル学会での専門書籍展示会は貴重なのです。''ぜひ来年も書籍展示販売は続けてほしい!''

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494427521215234048,noconv)

* プログラム構成・発表形式 [#z5965de7]

** アンコール講演が減少[#t81dcd77]

昨年の2021年はレビュー講演やアンコール講演が非常に多かったのが特徴的でした。レビュー講演とはその領域の第一人者がASCOやESMOで発表された内容をレビューし、解説するという方式の講演です。どちらかと言うと教育講演に近いスタイルです。学会に参加するだけで多くの情報を得ることができますが、どうしても「すでにどこかで聞いたことがある話」に偏りがちです。またアンコール講演はASCOやESMOなどで国内からの演者によりすでに発表された内容を、JSMOで再度同じように発表してもらうものです。

やはり新しい研究成果の発表を聞いたり、質疑応答でのディスカッションを聞きたいので、他学会の発表のふり返りというレビュー講演が前回の2021年より減って「新規のネタ」が中心になっていたのは良い点でした。

すでに発表された研究成果のレビューや振り返りは、どちらかというとスポンサードセミナーか教育セミナー・best of ASCO japanなどに任せるべきかと感じます。今回はその点が修正されていて良かったと思います。

** プログラムの時間割 [#he4bd85a]

完全WEB形式に初めて取り組んだ前回(2021年)はタイムスケジュールもかなり余裕を持って組まれており、しかもそれぞれの講演が同時に始まり同時に終わることがないように互い違いに並べられていました。これはたくさん演題を聞きたい場合は非常に有利でした。隙間の時間がなく次々部屋を切っているので完全WEB方式ではこのやり方は非常にマッチしていたように思います。

しかし、ハイブリット形式で行われた今年は、昔と同じように多くの演題が''同じ時間帯に平行して同時開始・同時終了される方式''に戻ってしまっていました。これだと演題が全然ない空白の時間が多数生じてしまうので、休憩時間を取りながら参加するリアル形式には向いているのですが、自宅からWEB参加にしている人たちにとっては手持ち無沙汰な時間が多かったのではないでしょうか。

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▲JSMO2021の時間割
セッションが少しずつ開始時間をずらして互い違いに組まれているので、常にどこかで何かの演題を聞くことができる。自宅からWEBで参加している人は自由に部屋から部屋へ飛び移り、たくさんの話を広く聞くことができる。

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▲JSMO2022の時間割
同じ時間に一斉に始まり、一斉に終わるので、どこにも演題のない時間帯がある。現地で聞いている人にはちょうど良い休憩になったり企業展示などを見ることができるが、自宅からWEBで参加している人は何もできずに手持ち無沙汰になってしまう。また、聞きたい演題の時間が重なって聞けないことも増えてしまう。

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今回は、特にランチョンセミナーの前の1時間とあとの1時間、そしてイブニングセミナーの前の1時間はほぼプログラムが空っぽでした。できれば、「何も聞く話が無い時間帯」が出ないように配置して欲しいところです。2021年のような互い違いに時間をずらしてゆく方式の方が、たくさんの演題を聴きたい人にとってはよかったのだろうと思います。

** タイムキーピング [#dab07c82]

第2日のPresidential Session 3や第3日のHighlight of the Day 3などいくつかの演題で、セッションの制限時間を大幅に超えていても発表が続いているものがありました。第2日のPresidential Session 3は8:20〜10:35の予定でしたが、確か11:15くらいまで続いており、そのあとに同じメインホールで開催される表彰式と受賞講演が大幅に後ろにずれ込みました。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494488875657760769?s=21,noconv)

幸い、そのあとは1時間ほどの昼休みでその部屋を使う発表の予定が入っていませんでしたので遅れを吸収することができましたし、現地では発表が長引いているので時間がずれ込んでいるという説明がされていましたが、WEBで参加している人たちには表彰式と受賞講演が行われている部屋でいつまで経っても開かないので困ったかも知れません。

他にも発表時間がかなりずれている演題が少なからず見られました。30分以上も延びている場面もいくつかありました。座長もリモート参加だとタイムキーピングが難しいのだと思いますが、そこは現地スタッフのサポートで制限時間を発表中の演者に伝える(リアル学会でベルをチーンと鳴らすようなもの)があると良いですね。

他にも、なんだか初日の朝からアプリの通知とプログラムが乖離してましたね。開会式が8:20からのはずなのに、アプリには8:50からという通知が表示されていました。これは設定の単純ミスだとは思いますが。

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* オンデマンド配信 [#t9f0b38a]

これは毎回思うことですが、講演があってからそれを収録してWEBでオンデマンド配信するのにはそんなに時間がかかるものでしょうか。もう、今日から早速聞き逃した演題を聞きたい!

学会が終わってしまったら数日もすればその熱量は冷めてしまいます。2月中旬の学会が3月1日からオンデマンド配信し始めても、なかなか見るには腰が重い。できれば''発表があった翌日には順次オンデマンド配信を開始してほしい''と思います。

* テーマ選定の仕方 [#y398d1ea]

テーマ選定の仕方はどの学会でも学会長や役員を中心に非常に悩まれる点だと思います。

** 臓器別よりテーマ別へ [#c6b99580]

いつも思っていることですが、企業講演会では聞けないプログラムの組み方が上手だなぁといつも思うのはJSMOではなく基礎系寄りの''日本癌学会(JCA)''です。JCAには臓器別にわかれているセッションもあるのですが、「解析手法別」とか「起こっている現象別」といった切り口でテーマを分けているのが特徴的です。あれは他の学会も真似できるのではないでしょうか。

たとえば、今年は初日の午後にMO9「がん診療における画像検査・処置」というセッションがありました。ここは気管支鏡やEUS-FNAによるがんゲノム検体の採取法や、シンチグラフィなどの新規検査の演題が集まっています。このように検体採取や検査法という切り口で集めるのは面白いと思います。

2019年にあったシンポジウムで言うと、「ビッグデータの活用」「Accelerating approval」「臨床試験への患者参画(PRO)」などもありました。2019年は会長企画セッションが20個以上と異様に多い年だったので特別かも知れませんが、あのような企画が増えたら楽しそうです。

** がんゲノム関連が多すぎる? [#rb35d6ed]

JSMOという学会の性質上、また今のがん診療がゲノムベースで進んでいることが多いのでやむを得ないとは思いますが、今年は全体にがん遺伝子パネル検査に関連する演題が非常に多くて、他の臓器横断的なテーマがこれに食われてしまっているように思いました。

がんゲノム医療の中でももう少し多様性を持たせて、たとえば2019年の「会長企画シンポジウム一般病院におけるゲノム診療」や「会長特別企画・橋渡し研究のための基礎講義」などを取り込んでも良いかも知れませんね。

SCRUM-JAPANやMONSTAR-SCREENも良いですが、たとえば''地方のがんゲノム医療連携病院の実情と工夫や取り組み''がどうなっているのか、''遠隔地でどのように臨床試験に参加するのか''(あるいはどうやって地方に臨床試験を持ってくるか)などの話も聞きたかったところです。

** 多職種連携重視は良し! [#o47cbaba]

看護師や薬剤師などを取り込んで''多職種連携でがんゲノム医療を進めていこう''という熱意は感じました。多職種連携はまだまだもっと進めてゆくべきテーマですので、来年以降も積極的に取り上げていって欲しいところです。また薬剤師(JASPO)や看護師(がん看護学会)など多職種中心の学会とのコラボレーションにも期待しています。

** 医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー [#e57f4be8]

これはJSMOに求めるというよりは参加する我々の側が気をつけるべきことですが、質疑応答の際に専門家が専門家にガチの質問をぶつけすぎているように思います。毎年行われている非常に魅力的な企画ではありますが、議論が盛り上がってきて、途中から''医学生や研修医が完全に置いてけぼりになっていた''のは少し気がかりでした。

このセッションはあくまで''医学生や研修医が主役''です。専門医はこのセミナーで医学生や研修医を押しのけて質問するのではなく、しかるべき演題で聞くか直接そういう診療を行っている施設に問い合わせればよいわけです。''このセミナーは初学者に感心・興味を持ってもらうためにあるのだ''ということを、我々参加者も全員が意識してゆくべきかと思います。

医学生・研修医のための腫瘍内科セミナーという企画は毎年素晴らしいと思うんですが、盛り上がりやすいテーマを扱っているためか毎年だいたい医学生や研修医はそっちのけで専門医同士で盛り上がってしまうんですよねぇ・・・。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494917464861605891?s=21,noconv)

*日程 [#k68a1f7d]

Highlight of the dayに登壇された泌尿器科の先生が「JSMOがASCO-GUと重なってるので、昼間は京都のJSMOで夜はサンフランシスコのASCO-GU22で大変だ」とおっしゃっていました。確かに婦人科・泌尿器科の先生にとっては今回の日程は酷です。

また、2022/2/19-20は日本がん看護学会があるのでこれも日程が重なっています。看護師さんには参加しにくかったことでしょう。学会の数が増えて、どことどこが重ならないようにするのは難しいですね。

*広報戦略 [#cdceee9f]

** 腫瘍内科の裾野を広げる内容 [#c81100ad]

今回は''最先端施設と地方部の医療機関の空気感の格差''がJSMO内にもあったように思いました。以前は地域間格差や均てん化に関する演題も多数会ったように思うのですが、今年はそのようなテーマの話はあまり見られませんでした。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1494449834287595520?s=20,noconv)

「''縦の広がり''」としては若い世代のリクルーティングや教育をどのように行うかや病院外のがん教育・啓蒙活動をどのように行うか、またJSMOという学会そのものやがん薬物療法専門医という資格の存在感をどのようにアピールしてゆくかという広報戦略も。「''横の広がり''」としては腫瘍内科医ではなくてもがん薬物療法に関心を持っている一般の内科医や外科医にも、あるいは都市部から離れた地方大学やハイボリュームセンターほどの人員はない中小病院にも通じる内容を。

''腫瘍内科の裾野を広げる''ためにJSMOがもっと意識的に取り組んでいって欲しいと感じます。そのためには、高みをより高める取り組みだけでなく(もちろんこれはこれでJSMOが存在感を保つために必要なのですが)、低い層からの底上げにも注力してゆく必要があります。

** 双方向的広報 [#y6139c36]

がん関連では''ASCO''の広報のうまさは群を抜いています(ESMOもJSMOも、KSMOなどもあまり上手でない印象)。インターネットで独自動画を作り、ほとんどの主要なSNSに学会が公式アカウントを持って高品質な情報を流し、学会への関心を普段から高めようと為ています。ASCOの広報とはかけられる予算が違いすぎるのでしょうけれど、もうちょっとなんとかならんかな・・・と感じています。

昨年も書いたことですが、今後はより双方向性を高める方向に持っていきたいですね。そのためにはTwitterやFacebookにはもっと人々の関心を集められるように他の学会の取り組みを見習って取り組んでいって欲しい。国内では日本循環器学会がかなり上手にやっている印象です。学会が公式タグを使って演題に関する投稿をどんどんするように会員に促します。

#tweet(https://twitter.com/ASCO/status/1400120602384551936?s=20,noconv)
#tweet(https://twitter.com/JCIRC_IPR/status/1338028009899524096?s=20,noconv)

理想的にはASCOのように、JSMOで発表された内容を見た人がSNS上でそれについてディスカッションをし始めることです。より双方向性を高めるためには、おそらく抄録1つごとにURLが割り振られている必要があります(Pubmedにsupplとして掲出するのでもよいです)。

ASCOは''スライドのスクリーンショット''をSNSに転載することを認めているのでしょうか?そこまではJSMOでは難しいにせよ、SNSにみんなもっと投稿してもらうための工夫があってもよさそうです。

#tweet(https://twitter.com/MTCOSB/status/1495179598262202368?s=20)

** ハイブリッド開催による広報効果 [#ge6073e1]

広報で他学会のような取り組みを取り入れる余地はあるものの、そもそもハイブリッド(またはWEB)形式で開催するだけで''参加者がSNS上で常にその学会の様子や発表内容について話をしてくれる''ので、学会の活動を知ってもらうという大変大きなアピールになります。

完全現地開催だとSNS上でみんながこれほど話題にすることはなかったでしょう。 Twitter上でも学会期間中に投稿されるJSMOの話題は2019年までと2021年以降では段違いに増えているのではないでしょうか。ハイブリッド形式で開催するということ自体がそれだけで、非常に大きな''ネット向け広報''になっているのは間違いなさそうです。

* JSMO2023は博多でハイブリッド開催 [#q76eceb2]

来年は2023年3月16日~18日に博多でハイブリッド形式で開催されるようです。もともとJSMOの公式サイトでは2023年もハイブリッド形式なのかどうかが明言されていなかったのでもしかして従来形式に戻ってしまうのか?と心配していましたが、そのようなことはなさそうですね。

#tweet(https://twitter.com/JSMO_official/status/1494938185700618244?s=20,noconv)

* 最後に [#v5e66b0a]

色々と書いてきましたが、この3日間は''とても充実した3日間でした''。と同時に、ポストコロナ時代の学会のあり方に道筋を付けることができた会になったと思います。参加者の皆さんもWEBから現地から集まって、事務局の方々はオミクロン株の影響が読めない中でずっと大変だったと思いますが、おかげさまで非常に楽しい3日間になりました。

みなさん、ありがとうございました!

▼昨年版はこちら

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