レ点腫瘍学ノート

日記/2022年/2月8日/MSI-HとBRAF変異が合併しやすいことに関するメモ の履歴の現在との差分(No.2)


#author("2022-02-11T21:20:04+09:00;2022-02-08T21:13:33+09:00","default:tgoto","tgoto")
#author("2022-12-01T00:43:12+09:00;2022-02-08T21:13:33+09:00","default:tgoto","tgoto")
&tag(大腸癌,MSI);

MSI-H大腸癌は、大腸癌のうちの5%程度を占めるマイノリティではありますが疫学的にも治療薬の選択や治療効果・予後の面でも大腸癌の多くを占めるMSS大腸癌とはかなり異なる挙動を閉めるので治療の個別化において非常に重要なサブグループになっています。

** MSI固形がんに関するレビュー [#jc2d745b]

Microsatellite instability: a review of what the oncologist should know
#ogp(https://cancerci.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12935-019-1091-8)



** MSI-H大腸癌はゲノム変化の様相がかなり異なる [#pabf073f]

高変異量(TMB-High)大腸癌の多くはMSI-Hですが(その他はPOLEやPOLD1機能欠失)、このMSI-Hの中にもMSH2・MSH6などの機能が先天的に欠失したものとMLH1がエピジェネティックにサイレンス化されているものがあります。

MLH1-Silenced and Non-Silenced Subgroups of Hypermutated Colorectal Carcinomas Have Distinct Mutational Landscapes
#ogp(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3926301/)

#ogp(https://ascopubs.org/doi/10.1200/EDBK_279867)

なお、転移を有する大腸癌の場合で原発巣と転移巣で遺伝子変異が乖離するのではないかという懸念もあります。しかし、現状では原発巣と転移巣のどちらかで遺伝子検査を行うことができればある程度の実用性はあると考えられます。
#ogp(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1533002819304475)
#ogp(https://www.spandidos-publications.com/10.3892/or.2016.5323)

また、MLH1欠失を有する大腸癌では治療標的となる遺伝子再構成があるという報告もあります。
#ogp(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0046817721000897?via%3Dihub)

なぜBRAF変異とMSI-Hが合併して起こりやすいかに関しては、リンチ症候群ではほとんどBRAF変異が見られないことからBRAF→MSI-H方向の変異の伝播があると考えられます。またBRAF変異とMSI-Hが合併する場合のMSIはほとんどがMLH1 silencingによってもたらされることから、エピジェネティックな機序が働いているものと考えられます。

** BRAFが転写制御因子MAFGを介してCIMP関連遺伝子をサイレンシングする [#g69e1159]

in vitroではBRAFがMAFGとかいう転写制御因子を操ってMLH1や他のCIMP関連遺伝子のサイレンシングしてるとかいう話があるようです。

#ogp(https://www.cell.com/molecular-cell/fulltext/S1097-2765(14)00643-1)
ただし、シングルセルで前向きにこういう事象が起こるのかというような検証がされている報告は今のところ見つけられませんでした。

#navi(日記/2022年)
#pcomment