レ点腫瘍学ノート

日記/2022年/7月2日/HER2陽性大腸癌の今後の展望 の履歴の現在との差分(No.2)


#author("2022-07-03T12:16:44+09:00;2022-07-02T23:14:11+09:00","default:tgoto","tgoto")
#author("2022-12-01T00:43:12+09:00;2022-07-02T23:14:11+09:00","default:tgoto","tgoto")
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HER2陽性大腸癌に対するトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法がTRIUMPH試験の結果から本邦でも承認されたが、その後も続々とHER2陽性大腸癌に対する報告が相次いでいるみたい。

* トラスツズマブ+ツカチニブ [#x25e57d5]

HER2陽性大腸癌の第2相MOUNTAINEER試験。OXとIRIのPD後の3次治療でトラスツズマブ+ツカチニブが3次治療からのOSで2年とかなりの成績を出したっぽい。

#tweet(https://twitter.com/pashtoonkasi/status/1543184086923108352)

* トラスツズマブデルクステカン(T-DXd) [#r85e449d]

DESTINY-CRC01試験も良い成績を出していて、ラパチニブ+トラスツズマブのHERACLES試験がイマイチだったが昨年ASCO発表のMyPathway試験は良好、トラスツズマブペルツズマブのTRIUMPH試験もmet、DESTINY-CRC01試験のT-DXdもとなると全て同じラインで横並び。RASwt HER2陽性の定義が微妙に異なるのがややこしいが(TRIUMPHはFISH+ならIHC不問でctDNAも許容)。

ちなみにT-DXdの至適用量決定のためにdoseを変えた群間比較をするDESTINY-CRC02試験も現在進行中。肺癌と同じく、5.4mg/kgと6.4mg/kgを比較するみたい。6.4mg/kgは胃癌の試験結果を見るとけっこうキツい気がするんですよね(Destiny-Gastric01試験を見ると消化器毒性も血液毒性も対照群のイリノテカンよりも毒性が高い)。
https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04744831

#tweet(https://twitter.com/pashtoonkasi/status/1543203861585870848)

* 感想 [#r1966f38]

HER2陽性の定義が微妙に異なるのはあるし母集団が違うので直接比較はできないけど、HER2大腸癌の三次治療ではペルツズマブ+トラスツズマブ・トラスツズマブ+ツカチニブ・T-DXdが今のところ大きく性能が違うわけではなさそう。となると勝負は、二次治療以前でのエビデンスを一番早く作るのが誰なのかという点になりそうな気がする。

今はOXとIRI不応後の三次治療ばかりだけど、成績だけ見れば二次治療のFOLFIRI+bevを簡単に凌駕しそうなので、二次治療のエビデンスを勝ち取ったレジメンがシェアを支配しそうな気がするな。その前にFOLFIRI±bev vs. T-DXdが比較されるか。

さらに言えば、FOIFIRI+bev vs. ペルトラではなくFOLFIRI+トラスツズマブ+ペルツズマブというレジメンが出てきても全くおかしくないし、それが叶ったら一次治療でERBBをより広く遮断するセツキシマブ+トラスツズマブ+ペルツズマブてのも出てくるかも。

ググると、MOUNTAINEER-03試験は一次治療でFOLFOX+ツカチニブ+トラスツズマブを標準治療と比較する第3相らしい。
https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05253651

HER2陽性大腸癌は割合として低いとは言え大腸癌自体がクソ多い(男女計では肺癌とツートップ)ので開発基盤も企業家の期待もガッツリあるし、抗HER2薬自体も乳癌業界の恩恵で優秀な役者が既に揃っているので、試験デザインを練る立場の人はうれしい悲鳴をあげてるだろうね。

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