レ点腫瘍学ノート

日記/2022年/7月30日/診療ガイドラインをネットで無償公開しない問題 の履歴の現在との差分(No.2)


#author("2022-08-15T18:54:50+09:00;2022-07-30T18:42:52+09:00","default:tgoto","tgoto")
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ニセ医療本が出回る理由はいくつかあるけれど、医療界側の問題の1つは診療ガイドラインをネット上に無料公開しないこと。NCCN患者用のように平易なバージョンでも良い。標準治療をガイドラインとしてネット公開するだけで、何百人かの患者が闇治療にハマるのを防げるはずなのに。 

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1555556244068646912)

このツイートに対して「ガイドラインはMindsなどで無償公開されていう」というリプが多いけど、中身をよく見てみてほしい。ネット上で最新版が公開されているのは、ガイドライン全体から言えばごく一部に限られる。たとえば5大がんで最新の版が無償公開されているのは肺癌だけだと思う。乳癌や大腸癌は数年前の古い版が公開されているが、古い版を公開するのはかえって有害だったりもする。

#tweet(https://twitter.com/vc_neco/status/1546720404596994050)

日本の診療ガイドラインは各領域学会が発行しているものが大部分だ。学会は公的な役割を担う性格が強い組織だが私的団体であり、運営や活動を継続してゆくためにはその資金源をどのように獲得してゆくかという問題がある。お金がないと、出版物も出版できないし、学術集会を開催するコンベンションセンターも借りられないし、家賃もウェブサイトも維持できない。

会員から年会費を徴収しているが、学会に求められる活動が幅広くなるにつれて運営費用はますますかさみ、お金のやりくりは大変になるばかり。

#tweet(https://twitter.com/yoh_tw/status/1546861163971051522)

#tweet(https://twitter.com/yoh_tw/status/1547055326733942784)

本来はガイドラインの整備なんてものはインフラの一種なので、国などが公的な資金を投じて整備すべきだと思うが、財務省の近年の活動から推測するに、ガイドラインの整備に十分な資金を投じてくれるとはとても思えない。

#tweet(https://twitter.com/acesuzuki/status/1546827301848944640)

ガイドラインが無償でネット上で公開されていないために、医療者はお金を出してこのガイドライン冊子を購入している。しかし医療者と並んでこのガイドライン冊子を大量に購入しているのは製薬企業だったりする。製薬企業ももちろん自社製品の位置付けなどを知るためにガイドライン冊子を購入するのは当然なのだが、あまりにも多数の冊子を購入するために、ガイドラインを発行する学会と出版社にとってはガイドラインを購入してくれる企業はお得意様ということになる。

当然、そこには利害関係が生じる。テレビ局と大口スポンサーの関係のように、発行したガイドラインを大量に買ってもらうために、その製薬企業の製品に不利なことは言いにくくなり、またガイドラインでそのお得意様の製品に言及し推奨しようと言うインセンティブが働いてしまう。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1547157102770401281)

別にCOIがあること自体が全てダメだというわけではないが、ガイドライン委員の個人個人のCOIは厳しく問われるのに対して、ガイドライン委員会の上部組織である学会そのものに対して、ガイドライン冊子が無償で公開されていないことによってその内容の公平性が歪められかねない状態が放置されているのは、あまり直視されていないように思う。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1149845402792763392)

そして最初の問題に戻り、結局学会は金がないのでガイドラインを売って生計を立てるしかないという問題に戻ってくるのだが。

#tweet(https://twitter.com/doppel_surg/status/1558942861617311744)

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