レ点腫瘍学ノート

日記/2022年/8月26日/胆道癌のsmall duct typeとlarge duct type の履歴ソース(No.5)

#author("2022-12-01T00:43:12+09:00;2022-08-26T23:05:00+09:00","default:tgoto","tgoto")
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肝内胆管癌は病理学的に、''small duct type''と''large duct type''に分けることができる。IDH1/2やFGFR2は基本的にsmall duct typeの型に属するので、がん遺伝子パネル検査に提出するならこちらのタイプのほうが治療に結びつく割合が高い。

胆道癌の中でもsmall duct typeは基本的に肝臓末梢に多く見られるが、FGFR2はこのsmall duct typeに属するため、肝内胆管癌ではしばしば報告されるFGFR2融合遺伝子陽性胆道癌が遠位胆管癌ではほとんど報告されないのも、このsmall duct typeとlarge duct typeの違いで説明可能かも知れない。

#ogp(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35263454/)

||small duct type|large duct type|h
|好発部位|肝臓末梢|肝門部の大型胆管(ないし付属腺)|
|形態|腫瘤形成型(MF)|胆管浸潤型(PI)またはMF+PI型|
|画像診断|辺縁明瞭、多血性、リング状濃染|辺縁不明瞭、乏血性、&br;浸潤性(膵癌に類似)、尾側胆管拡張|
|病理学的特徴|小型腺管、細胞密度が高く分葉状、&br;線維性間質、腫瘍内にGlisson鞘が残存、&br;肝細胞癌様の索状配列|粘液産生性、IPNBやBilINを伴う、&br;時に乳頭状増生|
|発生母地|肝幹細胞といわれるHerin管?|胆管付属腺の幹細胞/前駆細胞?|
|背景疾患|HBV、アルコール性肝障害、&br;特に背景疾患がないものも|PBC、胆管結石、&br;先天的胆管拡張症(慢性炎症)|
|転移形態|肝内転移、しばしば骨転移|リンパ節転移、脈管浸潤|
|予後|比較的良好&br;(切除例で5年生存率60%)|病勢増悪が早く予後不良&br;(切除例で5年生存率20%)|
|がんゲノム|IDH1/2、FGFR2、BAP1|KRAS、SMAD4、GNAS、MDM2|
|その他|細胆管癌もsmall duct typeの亜型&br;欧米ではsmall duct typeが多い?||

* 臨床的な重要性 [#lef17198]

特に予後が大きく変わってくることから、治療方針を決めるに当たって目の前の胆道癌患者がsmall duct typeであるのかlarge duct typeであるのかを把握できることが望ましい。病理専門医の中ではこの胆道癌のサブタイプの認識は以前から徐々に高まっていたが、特にがんゲノム医療方面でFGFR2阻害剤が上市されてからはその区別が臨床判断に直結してくる。

また、従来は術後化学療法が行われてこなかった胆道癌だがBILCAP試験で術後カペシタビンの影響が、またASCOT試験で術後S-1の有効性が示されたとなると、術後化学療法を行うかどうかにおいても再発リスクや長期予後の善し悪しを見極める必要があり、やはり病理診断レポートにはこのサブタイプを記載していただけるほうがよいように思われる。術後化学療法としてのゲムシタビンの有効性については否定的な結果が示されている。

CT・MRIなどの画像診断でも一定の精度でこれを区別することは可能だが、small duct typeはしばしば肝細胞癌や混合型肝癌との鑑別が難しいこと、また中には炎症性偽腫瘍や腫瘍周囲の閉塞胆管からのmicro abssessなどを合併して辺縁評価が難しくなる例もあり、やはり正確性を求めるなら最終的には病理学的な判断を仰ぎたい。

* 参考資料 [#da25e2d1]

- 臨床画像 35巻 6号 pp. 661-667(2019年06月)
- 臨牀消化器内科 36巻 11号 pp. 1371-1376(2021年09月)
- 臨牀消化器内科 36巻 11号 pp. 1377-1385(2021年09月)

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