レ点腫瘍学ノート

日記/2022年/9月3日/BRAF悪性黒色腫もBRAF阻害剤よりICIを先行 の履歴差分(No.1)


#author("2022-09-03T19:59:27+09:00","default:tgoto","tgoto")
BRAF変異陽性悪性黒色腫の治療としてはダブラフェニブ+トラメチニブやエンコラフェニブ+ビニメチニブなどのBRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用療法が標準治療として確立されている。一方で、悪性黒色腫では免疫チェックポイント阻害剤も高い有効性を示すことも知られている。BRAF変異が陰性の場合は悩む余地はないが、BRAF変異が陽性の場合にBRAF阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤のどちらを専攻すべきかは、かなり前から議論があった。

今回、エンコラフェニブ+ビニメチニブに対してニボルマブ+イピリムマブがOSで優越性を示したという第2相SECOMBIT試験の報告が、J Clin Oncolに掲載された。

#ogp(https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.21.02961)

#tweet(https://twitter.com/gantaisaku1105/status/1565890351113547776,noconv)

これについては2021年のASCOプレナリーの演題にもなっている。こちらはダブラフェニブ+トラメチニブに対してニボルマブ+イピリムマブが2年OSで上回るという成績を示した。序盤で生存曲線がクロスするというのは免疫チェックポイント阻害剤ではよくあるパターンで、最初の瞬発力こそBRAF阻害剤に負けているが、そのあとは圧倒的にニボルマブ+イピリムマブが上を行っている。

#tweet(https://twitter.com/shaalanbeg/status/1461036965873295370)

考えてみれば大腸癌でもMSI-HとBRAF V600E変異はしばしば共存するので同じような問題が起こることは考えられるが、大腸癌では間違いなく免疫チェックポイントを先行するだろうと思う。OSもその方が長そうであるというだけでなく、治療期間中の患者のQOLもかなり違ってくる。

悪性黒色腫でもニボルマブ+イピリムマブの併用だけで3分の1の人がPFSプラトーを維持できるので、その間の治療管理のしやすさを考えると、どちらも使える場合は(自己免疫性疾患や間質性肺炎などの併存疾患があったり、病巣が極めて巨大で早期のレスポンスが得られなければ生命の危機があるような重篤な病状を除けば)免疫チェックポイント阻害剤を先に使うというのが一般的になってくるだろう。

#tweet(https://twitter.com/ptarantinomd/status/1463649408327770118)

* 順次使用ではなく同時併用するとどうなるか [#i1c1487c]

悪性黒色腫ではすでにこれらを逐次利用ではなくペムブロリズマブ+ダブラフェニブ+トラメニチブという3剤併用で使用する第2相IMPemBra試験も実施されて2020年のASCOで発表されている。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1262897285131796481)

しかし悪性黒色腫では既に第3の免疫チェックポイント阻害剤である抗LAG-3抗体レラトリマブが米国で上市されていて、免疫療法同士でもかなりの混戦になっている。最終的にどこに落ち着くのか。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1479778862015733761)

大腸癌でもエンコラフェニブ+セツキシマブにニボルマブを上乗せした試験が実施されているが、大腸癌は悪性黒色腫ほどには免疫チェックポイント阻害剤が効かないので、こちらもまだどうなるかわからない。

#tweet(https://twitter.com/ncictep_clinres/status/1545045193514029056)