レ点腫瘍学ノート

日記/2023年/3月1日/ArcherMETの製造販売中止 の履歴の現在との差分(No.2)


#author("2023-03-02T02:36:25+09:00;2023-03-01T22:27:50+09:00","default:tgoto","tgoto")
#author("2023-03-02T07:54:19+09:00;2023-03-01T22:27:50+09:00","default:tgoto","tgoto")
&tag(非小細胞肺癌,MET);

非小細胞肺癌でMET遺伝子の検出のために利用されていたコンパニオン診断薬ArcherMETが販売中止となるようです。製造販売の中止の理由は米国本社における企業体制の見直しが行われたことによる弊社製品群の再評価と製造販売プロセスの調整の結果((https://archermet.wpenginepowered.com/wp-content/uploads/2023/02/ArcherMET_%E8%A3%BD%E9%80%A0%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B-.pdf))、だそうです。これには驚きました。
非小細胞肺癌でMET遺伝子の検出のために利用されていたコンパニオン診断薬''ArcherMET''が販売中止となるようです。製造販売の中止の理由は米国本社における企業体制の見直しが行われたことによる弊社製品群の再評価と製造販売プロセスの調整の結果((https://archermet.wpenginepowered.com/wp-content/uploads/2023/02/ArcherMET_%E8%A3%BD%E9%80%A0%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B-.pdf))、だそうです。これには驚きました。

ArcherMETは、非小細胞肺癌に対するMET遺伝子変異の検査を行うための医療機器です。METエクソン14スキッピング変異を検出するコンパニオン診断薬で、MET阻害剤テポチニブの薬剤投与の判断に用いられています。コンパニオン診断薬の承認販売が遅れることで検査が行えない、という事例は聞いたことがありますが、それまで使えていたコンパニオン診断薬が使えなくなるという自体は聞いたことがありません。
''ArcherMET''は、非小細胞肺癌に対するMET遺伝子変異の検査を行うための医療機器です。METエクソン14スキッピング変異を検出するコンパニオン診断薬で、MET阻害剤テポチニブの薬剤投与の判断に用いられています。コンパニオン診断薬の承認販売が遅れることで検査が行えない、という事例は聞いたことがありますが、それまで使えていたコンパニオン診断薬が使えなくなるという自体は聞いたことがありません。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1630808814479101952)

* 代わりにどうやってMET遺伝子検査を行うか [#q2b0afe6]

ArcherMETに代わるMET遺伝子検査の選択肢としては、肺癌学会のサイトに具体的な対応策が提示されています。

#ogp(https://www.haigan.gr.jp/modules/important/index.php?content_id=320)

ArcherMETが使用不可となる場合には、テポチニブに対するコンパニオン診断薬として、現状としてはAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルおよび肺がんコンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システムが承認されており、これらを使うことが可能です。ArcherMETではなくAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルや肺がんコンパクトパネルDxをもともと使われていた施設では問題なく診療を継続できます。
ArcherMETが使用不可となる場合には、''テポチニブ''に対するコンパニオン診断薬として、現状としては''AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル''および''肺がんコンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム''が承認されており、これらを使うことが可能です。ArcherMETではなくAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルや肺がんコンパクトパネルDxをもともと使われていた施設では問題なく診療を継続できます。

オンコマインDxTTはテポチニブに対するコンパニオン診断薬としての承認を得ていませんから、オンコマインDxTTを主として用いている施設においては、METex14 skip陽性のためにAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルや肺がんコンパクトパネルDxでMET遺伝子を確認する必要があります。しかしオンコマインDxTTをしたとにMET変異が検出できなかったからMETの検証のために再度AmoyDxや肺がんコンパクトパネルDxをする(つまり1つの肺癌で2種類のマルチ診断パネルを立て続けに使う)というのは、聞いたことがありません(たぶんレセプトも通りませんよね)。
一方で''オンコマインDxTT''はMETΔ14スキッピング変異を検出すること自体はできるものの、テポチニブに対するコンパニオン診断薬としての承認を得ていません。オンコマインDxTTを主として用いている施設においては、METex14 skip陽性のためにAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルや肺がんコンパクトパネルDxでMET遺伝子を確認する必要があります。しかしオンコマインDxTTをしたとにMET変異が検出できなかったからMETの検証のために再度AmoyDxや肺がんコンパクトパネルDxをする(つまり1つの肺癌で2種類のマルチ診断パネルを立て続けに使う)というのは、聞いたことがありません(たぶんレセプトも通りませんよね)。

またFoundationOne CDxを使っていた場合は、3学会合同ガイダンスの提案にしたがってエキスパートパネルが妥当と認めればテポチニブの使用が認められる可能性はあります。ただし、オンコマインDxTTほど実際にArcherMETとの乖離が指摘されたわけではないもののDNAシークエンスとRNAシークエンスで乖離が生じる可能性は否めません。もっとも、FoundationOne CDxは同じMET遺伝子でカプマチニブのコンパニオン診断薬としての承認を得ていますので((https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200529150002_980.html))、世界的なシェアという意味ではテポチニブがカプマチニブに流れるのかもしれませんが。日本は海外に比べて早期ラインでFoundationOne CDxが使いにくいので、どうなるんでしょうね。
''FoundationOne CDx''を使っていた場合は、3学会合同ガイダンスの提案にしたがってエキスパートパネルが妥当と認めればテポチニブの使用が認められる可能性はあります。ただし、オンコマインDxTTほど実際にArcherMETとの乖離が指摘されたわけではないもののDNAシークエンスとRNAシークエンスで乖離が生じる可能性は否めません。もっとも、FoundationOne CDxは同じMET遺伝子でカプマチニブのコンパニオン診断薬としての承認を得ていますので((https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200529150002_980.html))、世界的なシェアという意味ではテポチニブがカプマチニブに流れるのかもしれませんが。日本は海外に比べて早期ラインでFoundationOne CDxが使いにくいので、どうなるんでしょうね。

ちなみに、テポチニブ承認の根拠であるVISION試験はMET Δex14の検出にオンコマインDxTTかGuardant360(共にDNAseq)を使っているので、ArcherMETをコンパニオン診断薬として縛りを課すのは実は科学的根拠が弱い気がするんですけどね…。

#tweet(https://twitter.com/m0370/status/1417257031170363395?s=20)

肺癌学会はこの件に関してArcherMET製造販売元やメルクバイオファーマ(テポチニブの販売元)に強く抗議をすると言うことで頼もしい限りですが、そうは言っても米国企業がビジネス上の判断でArcherMETから手を引くということなので(そして他の方法でMET遺伝子異常を検出する手法がないわけではないので)、この判断は覆ることは無いような気がします。

#navi(日記/2023年)

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