レ点腫瘍学ノート

日記/2023年/4月18日/Pragmatica-Lungという新しい臨床試験の形 の履歴の現在との差分(No.1)


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近年注目されている新しい臨床試験デザイン「Pragmatica-Lung試験」というものが海外のオンコロジストの間で注目を集めているようです。

#ogp(https://www.nih.gov/news-events/news-releases/pragmatica-lung-study-streamlined-model-future-cancer-clinical-trials-begins-enrolling-patients)

この新しい試験デザインは、NCIの支援のもとで行われている第3相試験であり、非小細胞肺癌の治療薬であるラムシルマブとペムブロリズマブの併用療法の有効性を調べるものです。既に十分な安全性データが蓄積されている薬剤であることから、安全性に関する試験の障壁を取り除くことで、参加のハードルを下げています。

また、この試験デザインでは、主治医がこのレジメンが実施可能であると判断すればPS2の患者でも参加可能であり、ハイボリュームセンターの選び抜かれたエリート患者のみを対象とする従来の治験とは異なり、リアルワールドの診療に近い形で行われています。施設側や患者側にも負担をかけないよう、大規模・長期のデータ収集を行わず、除外基準も最小限に設定されています。例えば、除外基準も同機序薬の前治療歴や他治験に参加中かなど最小限とし、主要評価項目はOSのみ、副次的評価項目はGrade3以上の有害事象の発生頻度のみとなっていることなどです。

#ogp(https://dailynews.ascopubs.org/do/podcast-s2302-pragmatica-lung-and-promise-streamlined-clinical-trials)
https://dailynews.ascopubs.org/do/podcast-s2302-pragmatica-lung-and-promise-streamlined-clinical-trials

このように、Pragmatica-Lung試験は現場に負担をかけず、治験スタッフの報告業務を軽減することで、治験参加の機会を増やすことができます。さらに、統計解析の手法を組み合わせることで無作為化を担保しながら、臨床試験の品質を損なわないようにしています。

#ogp(https://aacrjournals.org/cancerdiscovery/article/doi/10.1158/2159-8290.CD-NB2023-0031/725919/Pragmatica-Lung-Trial-to-Mimic-Real-World)

最近は、選び抜かれた患者に絞って、緻密な統計手法を駆使して承認に有利なセッティングを狙い澄ました治験が増えてきていますが、Pragmatica-Lung試験のようなシンプルな方式が現場の臨床家に治験を取り戻すことにつながる可能性があります。

#ogp(https://www.onclive.com/view/cedars-sinai-cancer-collaborates-on-a-new-type-of-clinical-trial)

ただし、この試験デザインは、安全性が確保された薬に対してのみ適用可能であり、早期試験などで安全性を確保する必要がある場合には使えない点に留意する必要があります。

今後、規制当局の意向もあって、このような実用的な臨床試験が重視される傾向にあると予想されます。このような試験デザインは、現場に負担をかけずに多様な治療開発を実現する上で非常に有効な手段となることが期待されます。

Pragmatica-Lung試験の詳細については、統計解析の部分が複雑であるため理解しづらい点があるかもしれません。しかし、このような臨床試験の進展は、患者さんや医療関係者にとって大変重要なものであり、今後も注目していきたいと思います。

#navi(日記/2023年)

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