レ点腫瘍学ノート

日記/2023年/6月6日/ASCO2023感想(Day4) の履歴ソース(No.1)

#author("2023-06-07T00:03:43+09:00;1970-01-01T18:00:00+09:00","default:tgoto","tgoto")
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* TALAPRO-2試験(前立腺癌) [#le827882]

#tweet(https://twitter.com/neerajaiims/status/1665364920911683585)

転移性去勢抵抗性前立腺癌に対するエンザルタミドに最強PARP阻害剤タラゾパリブを上乗せしたという大規模比較試験です。PARP阻害剤でありながらBRCAなどのHRR関連遺伝子で層別化せず前立腺癌全体を対象にしているという野心的な試験設計。HRR関連遺伝子変異の有無での層別化もされています。

今回の結果は最終解析ではないのでまだcensoredが多く、今後の長期フォロー解析の結果発表がまだ楽しみではありますが、現時点ではrPFS HR 0.45、OS HR 0.69とかなりの好成績。censoredを追跡してゆくことでさらにこの差が開く可能性も十分あります。

#tweet(https://twitter.com/Dr_RaviMadan/status/1665450654788210691)

なおこのTALAPRO-2試験のタラゾパリブのPFS HR 0.45とBRCAアームにおけるOS HR 0.20の数値を、別のPARP阻害剤であるオラパリブのPROpel試験とニラパリブのMAGNITUDE試験と比較した上記のツイートを見てみても、タラゾパリブの性能の高さが際立っています。

この試験はLANCETに同時掲載となっています。

#ogp(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)01055-3/fulltext)

# UCBG-UNIRAD #546(乳癌)

#tweet(https://twitter.com/dr_yakupergun/status/1666059790835933186)

じなん先生に教えてもらったポスター発表ですが、非常に興味深い結果です。ホルモン感受性乳癌の内分泌療法でホルモン剤の服用をどの時間帯に行うかを比較したランダム化試験です。この着眼点自体が 非常に珍しく、斬新。内服時間は朝、昼、夜の3群に分けており、無再発期間(DFS)および転移出現抑制期間(MFS)を検討しています。 いずれの解析においても、夜に内服をした群で予防が良好で、内分泌療法は夜に服用を進めるのが良いという結果を導き出しています。

# CONTACT-03試験(腎癌)

#tweet(https://twitter.com/urotoday/status/1665825957280620545)

腎細胞癌の後方治療におけるアテゾリズマブ+カボザンチニブのカボザンチニブ単剤に比較しての優越性を見ようとした試験ですが、 本試験の注目点は単純にアテゾリズマブの有用性を見るというのではなく、 免疫チェックポイント阻害剤のリチャレンジの有用性があるかどうかを検証しようとした点です。

適格基準に、術後療法・一次治療・二次治療のいずれかのラインにおいて免疫チェックポイント阻害剤を使用しているという条件が入っています。つまりこの試験に参加している患者はみな免疫チェックポイント阻害剤の既治療例と言うことになります。術後療法で使用するのは転移再発後の一次治療・二次治療で使用するのとはわけが違いますから、ここもちゃんと層別化して解析されています。

結果は主要評価項目のPFSでは10.8→10.6ヶ月でHR 1.03、OSではカボザンチニブ単剤が中央値未達ですがアテゾリズマブ併用群で25.7ヶ月で0.94(p=0.690)で生存曲線はほぼぴったり重なっており、ネガティブ試験です。どうやら免疫チェックポイント阻害剤の前治療歴がある場合は、そのリチャレンジにはほとんど有効性は認められないようです。

腎癌での臨床試験ではありますが、免疫チェックポイント阻害剤での効果が比較的期待しやすい腫瘍でこれなのですから、他の臓器でも免疫チェックポイント阻害剤のリチャレンジを進める根拠は無さそうですね。

なおこの試験も上述のTARAPRO-2試験と同様にLANCETに同時掲載となっています。

#ogp(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)00922-4/fulltext)

# JCOG1017試験(乳癌)

#tweet(https://twitter.com/shimoi_oncology/status/1665759013705744396)

de novo stage4乳癌、つまり初期診断時ですでに転移が生じている乳癌でも原発巣切除をする意義があるかどうかという臨床試験。大腸癌や乳癌では定期的に話題に上るテーマではあり、乳癌でも過去にTata試験やECOG2108試験などが実施されています。最近はどの癌腫でも原発切除をしても予後は改善しないという傾向が強いようですが、JCOGで本邦の乳癌患者に対しても前向き検証的に試験が行われました。

本試験は初期治療として全身化学療法を先行してから、無増悪で推移した症例を対象に割り当てを行っています。5年生存率では手術介入群が62.5%に対して非手術群が55.4%、HRは0.84ですが信頼区間が0.70-1.10と1をまたいでいます。OS中央値で見ても68.7ヶ月→74.9ヶ月と伸びてはいるものの、有意な結果ではないとの結論のようです。統計学的有意とは言えませんが、この差は悪くない気はしますね。

#ogp(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202306/579950.html)

大腸癌のJCOG1007試験の時にも同じ話が出たと思いますが、この試験では手術介入をしても有意な差が無かったので手術介入に意味は無いという結論につなげるのではなく、手術をしてもしなくても予後に大きな差は無いので個々の患者の状況や価値観や症状に応じて、手術をするもしないも臨機応変に判断してよいと考える方が現場は動きやすく、本来の臨床家のあるべき姿のように思えます。

# TROPiCS-02試験(乳癌)

#tweet(https://twitter.com/PTarantinoMD/status/1665776038767411201)

この結果はもう既によく知られているような気がしなくもありませんが、サシツズマブ・ゴビテカンのOS解析結果はHR 0.79で有意にOS改善という結果でした。

# X-7/7試験(乳癌)

#tweet(https://twitter.com/JAMouabbi/status/1665796560825851905)

乳癌のカペシタビンを、1250mg/m2×2回で14日服用・7日休薬とするか、1500mg×2回で7日服用7日休薬とするかという臨床試験です。服用日数も減り、1日あたりの容量も体表面積によって変わるものの減少する傾向ですから、RDIは半分近くまで低下してしまいますが、PFSは以外にも落ちずHRはちょうど1.00とのこと。

昔の胃癌((https://link.springer.com/article/10.1007/s10147-017-1157-3))や膵癌((https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28251282/))でS-1で確実投与が通常投与法に比べて予後を悪化させたということがあったはずなので、今回も類似の結果を想像してしまいましたが、今のところはそこまでひどいことにはなっていないようです。ただ、この試験1本だけでカペシタビンの飲み方が大きく変わるところまでは行かないでしょうね。再現待ちでしょうか。

# D-TORCH試験(支持療法)

#tweet(https://twitter.com/dr_yakupergun/status/1665801614500962304)

カペシタビンを 使う上で困った副作用の1つは手足の皮膚障害です。これに対してジクロフェナクの塗り薬を使用することで皮膚障害を大きく低減できると言う発表がありました。手足症候群のGr2以上が15.0→3.8%で約4分の1とびっくりするほどの差で、これが本当だとすれば画期的。

#navi(日記/2023年)

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