レ点腫瘍学ノート

臨床検査/CEA/CEAの偽陽性 の履歴の現在との差分(No.5)


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CEA(癌胎児性抗原)は大腸癌をはじめとする腺癌の腫瘍マーカーとして使われていますが、しばしば癌がなくても陽性を示すことがあります。なかでも偽陽性例は人間ドックなどで拾い上げられて全身検索をしても何も腫瘍性疾患が見つからないなど臨床的に問題となることがしばしばあります。CEAの特異度は8割程度(つまり2割程度は偽陽性がある)とも言われます。
このページではCEAの偽陽性について記載します。

*本来のCEA [#f7f35ab1]

CEAは正常大腸癌粘膜でも産生されていますが正常時は大腸管腔側に分泌されて血中への移行はわずかです。しかし、悪性腫瘍など正常上皮が破綻している場合は血中側にCEAが移行し高値となります。

なお、消化器癌以外でCEA高値の際に検索を検討すべきものとしては、肺癌、甲状腺髄様癌、ムチン性卵巣癌などがあります。

*悪性腫瘍でないのにCEAが上昇する例の鑑別疾患 [#u22307b0]

-急性肝炎
-肝硬変、閉塞性黄疸
-炎症性腸疾患、重度の急性腸炎
-胃潰瘍、十二指腸潰瘍
-甲状腺機能低下症
-重度の高血糖
-肺結核、重度の肺炎、慢性気管支炎
-腎不全
-中等度以上のアトピー性皮膚炎
-喫煙
-加齢

なお、背景患者集団によっても左右されますが、大腸癌術後患者を対象にして行った検討では偽陽性例の多くのCEA値は5〜15ng/mLの範囲にとどまり、35ng/mLを超えた症例はなかったとのことです((https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24925201/))。別の報告でもやはり偽陽性の大部分は15ng/mLまでにとどまり、カットオフ値を5ng/mLから10ng/mLに変更すると偽陽性率が40%から8%まで低下したとも言及されています((https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.3322/caac.21247))。

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