レ点腫瘍学ノート

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がんゲノム医療遺伝子パネル検査実践ガイド

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保険承認を経て急速に認知度が高まったがん遺伝子パネル検査

がん遺伝子パネル検査によるがんゲノム医療が日本に導入され、これまでは一部の高度医療機関でしか行われていなかったような網羅的な遺伝子検査に基づくがんの個別化医療が、一気に全国の医療機関の手の届くところまでやってきました。

現在、全国にあるがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院は合わせて200箇所を超えるまで増え、すべての都道府県で保険診療でのがん遺伝子パネル検査を行うことができる体制が整備されています。

地方都市であっても、がん治療を受けている患者さんから「テレビでがんゲノム医療のことを知ったのですが、私は検査を受けられますか」と尋ねられる可能性があります。あるいはがんゲノム医療連携病院に勤務していて、担当している患者さんががん遺伝子パネル検査を実際に受けることになる可能性もあります。

大学病院などであれば、周りにがんゲノム医療やがん遺伝子パネル検査の実務に詳しい人がいて、直接質問をすることもできるかもしれません。しかし、周りに気軽に話を聞ける環境にいない場合は、どうやってこのがんゲノム医療について詳しく学べば良いのでしょうか?

がんゲノム医療についての情報は増えてきていますが、残念ながらこれまではがんゲノム医療やがん遺伝子パネル検査について詳しく解説した書籍はほとんどありませんでした。

がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査に関する待望の実践書

2020年5月に、待望されたがんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査に関する本が出版されることになりました。

2019年7月の日本臨床腫瘍学会学術集会は「がんゲノム医療元年」という野心的なテーマで開催され、それに合わせて出版された季刊雑誌Cancer Board Square(医学書院)2019年7月号では、このがんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査についての特集が組まれていました。このたび出版されたのはこの雑誌の特集を一部アップデートしつつ、そのボリュームを大幅に充実させたものとなります。

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メインで執筆されているのは国立がん研究センター中央病院の角南久仁子先生で、Cancer Board Squareの特集の時にも中心的な存在であった方です。

国立がん研究センター中央病院のがんゲノム医療の推進にも重要な役割を担われており、特にこの最先端の技術と私たちのような在野の臨床家を橋渡しすることでがんゲノム医療を一般臨床に普及させることに尽力されています。

他に北海道大学の畑中豊先生と国立がん研究センター中央病院先端医療化の小山隆文先生も加わっておられ、さらに各論は多方面の専門家が執筆に加わっておられます。

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内容は基本的なところからかなり深いところまで

総論のところはがんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査の基本的な制度の概要や用語の解説から始まり、エキスパートパネルはどのようなことを話し合って何について検討する場なのか、慎重な判断が求められる二次的所見とは一体何なのか、など重要なテーマをひとつずつ解説しながら少しずつ各論に入ってゆきます。

第1章と第2章は先に述べたCancer Board Squareの特集記事を概ね踏襲しているようですが、第3章(運用のための基本)と第4章(実際の使用に関して)は新たに書き上げられた部分がかなり多くなっています。

そもそも総ページ数も240ページとかなり多くなっているので、前回は掲載し切れていなかったであろう詳細なバリアント拾い上げの手法などは完全に新しく掲載された内容です。C-CATでデータベースからどのように治療候補や臨床試験情報を拾い上げているかなどの、「中の人」ならではの情報もあります。

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簡単なだけの入門書ではない

ぼくも今までそれなりに次世代シークエンサーを使ってがんゲノム異常を探る研究に首を突っ込んだり臨床応用に向けての準備を間近で見てきたのである程度は理解しているつもりでしたが、特にこのデータの取り扱いから臨床家向けレポートが作成されるまでの過程初めて聞く情報も少なくありませんでした。

(たとえば、普段エキスパートパネルに参加している人で、C-CAT調査結果に掲載されるリストを抽出するための4つのデータベースの経路はご存知でしたか?マーカー薬剤のDB、マーカー臨床試験エビデンスのDB、治験DB、承認マーカー以外のターゲット分子に関する薬剤のDBがあり、治験DBでマッチした候補にはC-CATレポートでは「Trial Condition Match」と、承認マーカー以外のターゲット分子に関する薬剤のDBで拾い上げられた候補には「Drug Target Match」と記載されます。こういう具体的なC-CATの仕事の中身まで触れられています。)

ここまで詳しく解説した本も外になかなかなかったのではないかと思います。元ゲノム医療にこれから携わろうと思っている方、実際に実務でゲノム医療に携わっている方にお勧めしたい1冊です。

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更新日:2020-05-18 閲覧数:2302 views.