腫瘍学レ点ノート

2020-09-06

医療従事者に最適なチャットツールはどれなのか問題

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業務連絡を行うツールには様々なものがありますが、それぞれに長所短所があります。

電話

電話は最速で連絡する必要がある緊急時だけ役に立つツールで、相手の時間を取るし記録は残らないので普段使いのツールとしては論外です。

電子メール

メールはメールアドレスがわかれば連絡を取れるので、外部の人に連絡を取るときや親しい間柄でない人に連絡をするには最適です。職場内のメーリングリストを作っているところも多いかと思います。何でもできる汎用性がある一方で、どうしても文字数が多くなりがちで普段の細々とした短文コミュニケーションにはやや大仰です。

ビジネスチャットツール

最近は短文でこまめな情報伝達が重視されるのでビジネスチャットツールの有用性が認められていますが、医療従事者が業務で使うには便利さだけでなく個人情報漏洩防止などのセキュリティの面でも安心して使えることが重要です。プライベートのチャットではLINEを使っている人が多いのではないかと思いますが、業務で使うにはやや不安も残ります。

では、医療従事者が医療業務上の連絡を取り合うために使うビジネスチャットツールは何が良いんでしょうか。

LINE

LINE(ライン)は、24時間、いつでも、どこでも、無料で好きなだけ通話やメールが楽しめる新しいコミュニケーションアプリです。
https://line.me/ja/

Twitter上のアンケートでは、LINEを使うと言う意見が最多でした。確かに誰のスマホにも既に入っていると言う利点があり、使い方を学ばなくてもみんな知えるというのは大きな強みです。どのチャットツールを使おうかという議論や検討を経ることなく、気がついたら自然発生的にLINEを使っていたと言う職場が多いのではないでしょうか。

しかしLINEにも欠点はあります。1つはプライベートと業務の切り分けが曖昧になりがちなこと。プライベートの友人関係が職場に持ち込まれたり、業務上の会話が関係ない相手に流れてしまうというリスクをはらんでいます。カジュアルなコミニケーションを取るには向いていますが、けじめがつきにくいと言うのは大きなデメリットかもしれません。

もう一つの難点は、セキュリティの問題です。実際に情報漏洩が存在したかどうかは別として、LINEの情報保護は不安視されているという声があります。実際にLINEアカウントの乗っ取りが発生したと言う事例を耳にしたことがある方は少なくないのではないでしょうか。業務で使うLINEアカウントが乗っ取られてしまった場合は大きな被害が及ぶリスクがあります。

はじめに LINE はユーザー数が 8,400万人、日本人口の約7割が利用しているという巨大なチャットツールです。メールや電話より手軽にコミュニケーションが取れることから、業務連絡にも LINE を使っている会社も多く存在します。 操作性・利便性が高い一方で、LINE を業務利用することは「シャドーIT」という状態にあたり、情報セキュリティ上のリスクを抱えています。 この  note では会社が LINE を業務利用してはいけない理由について解説します。ユーザー数の多い LINE を例として挙げていますが、これは会社で管理ができないツール全般に置き換えることが可
https://note.com/rotomx/n/n2a2d719dda76

Teams

医療機関でのシンプルで安全なコラボレーションを実現するソリューションを紹介します。臨床ワークフローから電子医療記録とスケジューリングまで、Microsoft Teams がお役に立ちます。
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/healthcare-solutions

Microsoftが提供するチャットツールはTeams。様々な教育現場で導入されているので大学生や高校生のお子様がおられる方はお子様の方が詳しく知っているかもしれません。WordやExcelなどのMicrosoft Office製品との相性が良く、Office 365のサブスクリプションを契約している施設では正規版(有料版)を追加費用無しで使えることもあります。Outlookの予定表と自動で同期(有料版のみ)できるほか、Onenote、Onedriveなどとの連携も非常に良好です。

まだまだアプリを追加することで機能を強化していくことができるので、Teamsでできることは非常に多岐にわたります。Office 365のOutlookなど、メール機能やスケジュール機能と連動することもできるので、すでにMicrosoft Officeを使っている職場では最適な選択肢になりえます。逆に、現在Microsoft Officeを利用していない職場では費用負担が大きく手を出しづらいかもしれません。

倉敷中央病院が医療現場にTeamsを取り入れたときは大々的に特集されて注目を浴びました。同院は以前からMicrosoftベースのイントラネット情報共有サービスを利用していたので導入と移行が円滑だったのでしょう。

医療ニーズが多様化し、医療人材の不足も叫ばれる中、各専門科が協働して診療に臨むチーム医療が、医療の各現場で求められています。従来の医療は、ある患者の診療を 1 人の医師が担当する主治医制度が一般的でした。これと比べ、チーム医療は、診療の専門性を向上させることができる、少ない医師のもとであっても高水準な医療が提供できるなど、確かな利点を有しています。しかし、主治医制度からチーム医療へと転換を図ることは、容易ではありません。主治医がこれまで把握してきた患者に関する全ての情報を、チーム医療では診療に携わる各医療スタッフが集合知 (知の集合体) として創発させていかなければならないからです。1923 年の創設以来一貫して地域の医療に貢献し続けてきた公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 (以下、倉敷中央病院) は、コミュニケ―ション革命をもって、現在このチーム医療への転換を進めている病院の 1 つです。同院は Microsoft Teams を用いることで、医療スタッフがリアルタイムに診療方針について協議できる環境を整備。これによりチーム医療を加速すると同時に、地域医療連携の対応性も向上させています。
https://customers.microsoft.com/en-GB/story/kurashiki-central-hospital-healthcare-intune-teams-m365-jp-japan

しかし、やはり病院には様々なITリテラシーを持った人たちがいるため簡単にはシステム導入はできず、現場の苦労はつきないようです。

無料版の Teams ですべてを共有のワークスペースにまとめましょう。どこからでも仕事ができるようになり、チームとのチャットやファイルでの共同作業が、追加費用なしでできるようになります。
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/free

無料版では機能に制約が

無料版で使うこともできますが、無料版は機能の制約がかなり大きいようです。Microsoftの無料版Teamsのページではあまり強調されていませんが、無料版TeamsではExchangeサーバーとの連動ができませんので「予定表」機能が使えませんし、予定表機能が使えないということは「シフト」機能も使えません。これは個人的には使ってみて一番落胆した部分です(Webサイトを見るだけでは無料版では「予定表」「シフト」が使えないことがはっきりとわかりにくい)。

また、Azure Active Directoryの機能も制限され、アカウントの管理が正規版のTeamsと比べて若干複雑です。すでにHotmailなどでMicrosoftアカウントを持っている人のメールアドレスをメンバーに追加しようとするとそのアカウントがログインできなくなるエラーに悩まされました(しかもエラーが発生しても無料版はサポートの対象外です)。やはり、すでに有料でOffice 365を契約している職場に適したアプリという印象はあります。

Microsoft Teams の無料版は個人事業主や中小企業では金銭的負担が小さくメンバーの連絡のやり取りに使えるので重宝しますが、有料版に比べて基本的にマイクロソフト社のサポートはなくトラブルは自分で解決する必要がある上に、様々な...
https://qiita.com/tmkdental/items/f05def26d4cea5d1f446

Slack

Slack とはよりシームレスなチームワークを実現するビジネスコラボレーションハブです。業務に必要なメンバー、情報、愛用のツールのすべてを1ヶ所に集約し、チームの生産性を最大化します。
https://slack.com/intl/ja-jp/

業務用チャットツールとして有名なのはSlack。高機能でプログラミングなどIT関連の業界では非常にユーザが多いことでよく知られています。しかしただのチャットツールとして医療現場で使うには若干機能を持て余すかもしれません。

チャンネルやコマンドなどSlackがSlackたらしめる高機能はパソコンにそれほど詳しくない人にとってはとっつきにくく感じるでしょう。使えるようになるまである程度のトレーニングが必要なのではないかと思います。

ぼく自信、職場内の勉強会メンバーで使えるかどうかを確かめるためにSlackのアカウントを作ってみたことがありますが、これは全員に使ってもらうのは相当ハードルが高いと感じました(当時は日本語版が出たばかりでまだ一部には英語表記が残っていたので余計かもしれません)。またチャンネル数の増加や過去ログ検索などができる有料版は1アカウントあたり850円/月〜と若干高価格であるというのも難点です。

https://kaiwa.cloud/case/009/

従業員が1000人を超えるような大きな病院ではありませんが、訪問診療を中心として複数のクリニックを構える医療法人でSlackを活用した事例が紹介されていました。訪問診療は確かに時間を合わせて全員が一同に集まって意見交換をするのが容易ではありませんので、こういうオンラインツールとの親和性が高いのでしょう。

LINE WORKS

ビジネス版LINE「LINE WORKS(ラインワークス)」ならチャット機能はもちろん、メール、カレンダー、ファイル管理など、グループウェア機能も使えます。PCだけでなくスマホでもフル機能が使えるので、働き方改革に有効です。
https://line.worksmobile.com/jp/

LINE WORKSはおなじみのLINEの業務用バージョンにあたります。既存のLINEと比べても使い勝手は非常に近く(スタンプなども使えます)、またログインもメールアドレスや電話番号のログインのほかにLINEアカウントでのログインが可能なので、アカウントを新規に作るのが非常に簡単です。

普通のLINEとの違いとしては、トークの内容やアカウント管理が管理者によってサーバーサイドでできるなど管理機能の強化があげられます。普通のLINEのように「友だち」として個人個人がつながるのではなく、同じ企業アカウント内の個人個人はすべて最初からつながった状態ですが、管理者や部署の責任者が部署配置やグループ分けを一括して管理できます。トークは個別にも可能ですが部署ごとのチームトークルーム、役職やグループごとのグループトークルームなども設定可能です。退職者のアカウント削除も管理者が行えて過去のトークの閲覧権限も編集できます。

また、部署やグループごとにノート・予定表・フォルダなどを共有でき、掲示板やアンケートなどの機能もついています。ほとんどの使い方はLINEと変わらないのでとっつきやすいというのが一番のメリットです。

企業での導入事例も

中外製薬が2400人のMRにLINE WORKSを導入したことは大きく注目されました。数ヶ月前から中外製薬のMRから送られてくるメールにはLINE WORKSのロゴが入った二次元バーコードが付いています。LINE WORKSはふつうのLINEともチャット(トーク)をすることができるのでMRと医療者のコミュニケーション改善も狙ったものと思われます。中外製薬の規模でしょうから当然有料プランで契約しているはずで、複数人のテレビ通話も可能なはずです。田辺三菱製薬も同様にMRにLINE WORKSを導入しているようです。

https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200901150000_1020.html
コンセプトは“談話室”のデジタル化。外勤中のMR(医薬情報担当者)とも情報発信・共有、気軽に雑談できるような場所を実現。さらに緊急時のスピーディで確実な連絡ツールとして活用しています。
https://line.worksmobile.com/jp/cases/mt-pharma/

また、LINE WORKSのウェブサイトでは千葉大学の導入事例が紹介されています。また新型コロナウイルス感染症対策として医療機関向けに無償提供していたこともあって病院での導入事例は増えているようです(無償提供は2020年9月末まで)。

救急医療の現場にLINE WORKSあり。 より早く、質の高い医療を提供するための画期的なツールです。
https://line.worksmobile.com/jp/cases/chiba-university-hospital/

しかし、TeamsやSlackが様々なアドオン・アプリを追加して機能をさらに充実させることができるのに対して、LINE WORKSはそこまで拡張性はありません。またスマホアプリは写真添付はしやすいがPDFなどの文書の管理は得意でないことなど、多機能・高機能を求める人には不向きでしょう。1対1の音声通話・ビデオ通話はフリープランでも行えるものの「多対多」の通話はライトプラン(300円/月)以上の有料プランでしか行えないのはフリープランの難点の1つですが、それを除けばメンバーが100人以下の職場で、しかも独自ドメインメールアドレスやストレージ機能(Dropbox的な)を使わない場合はフリープランでほとんどのことが行えます。

個人的には、チャット・トークへの「いいね」が無いのが難点です。既読機能があるので良いと言えば良いのですが、何気ない短文メッセージに対して「承知しました」「了解しました」「OKです」とリプライを付けるのは送信側も受信側も無駄が多いので。「既読スルーは『承知しました』のサイン」という風に職場内でコンセンサスを作っておくことが負担軽減の秘訣かも。

Chatwork

Chatwork(チャットワーク)はメール、電話、会議・訪問など仕事で必要なコミュニケーションをより効率的にするビジネスチャットです。社内外のコミュニケーション活性化や業務効率化を実現します。導入企業は24万社をこえ、ICTを活用したワークスタイルの変革や業務プロセスの革新をサポートします。
https://go.chatwork.com/ja/

業務用チャットツールとしては早くから人気を集めていたChatwork。Slackがまだ日本語対応しておらずTeamsも無料アカウントがなかった頃(Skype for Businessが主流だった頃)は一番人気の業務用チャットツールだったかもしれません。しかし、TeamsやSlackの台頭などで人気は下火になっている印象です。

純粋なチャットツールとして使うには問題はありませんが、無料版では広告が表示され、また特別これといった高機能さもないので他ツールに比べてこれを選ぶメリットがわかりにくいと思われます。

Google Meet / Chat

Google Meet(旧称 Hangouts Meet)のビデオ会議ソリューションはブラウザとモバイルアプリのどちらからでも使用できます。HD 動画でのセキュアなビデオ会議をぜひご利用ください。
https://apps.google.com/intl/ja/meet/

最近Gmailアプリにもビデオ通話機能(Meet)が搭載されてGoogleが力を入れているのがわかります。

しかしGoogle製品はライフサイクルが短いのが難点と言えば難点です。数年前まで積極的に推していたGoogle Hangoutsの今の冷遇ぶりを見ると、今あるGoogleアプリもいつまで使えることやら。さらに前にあったGoogle Talkは2013年にサービス終了していますし、HangoutsはGoogle+の機能の一部だったはずなのにGoogle+もいつの間にか消え去っています。サービスの展開が早いが撤収も早いGoogleのことだから、業務を任せるアプリとして使うにはやや不安を感じます。

それから、Googleはセキュリティに強いように見えて実は過去に情報流出騒動を起こした前科者であります。これはデフォルト設定が非公開になっていなかった(URLさえ知っていればページを開けるようになっていた)ことが原因ですが、Googleはしばしばこういうことをやらかします。それゆえ、医療情報を扱うにはこの点でもデメリットがありそうです。

情報漏えい祭りやー! 先日、4つの省庁にて、業務に関するメールがだれでも見るこ...
http://www.tabroid.jp/news/2013/07/google-groupe-share.html

サイボウズLive!

サイボウズLiveはサービスを終了しました。
https://live.cybozu.co.jp/

歴史あるグループウェアのサイボウズが提供していたチャットツールのサイボウズLive!は、惜しまれながらも2019年春にサービス終了してしまいました。無料で使えるわりにチャットと掲示板の連動が優れていたのですが、収益化が難しかったのでしょう…。

iMessenger

iPhoneやMacに標準装備のメッセンジャー。Facetimeと合わせると音声通話・ビデオ通話も行えますし、メッセンジャーとしても高機能ですが、Apple製品でしか使えないというのは非常に大きなデメリット。AndroidやWindowsでは使えません。

SMS

電話番号さえわかれば誰にでもメッセージを送れますが、機能は単に短文を送受信するのみと非常にシンプル。簡単そうですが、SMSの最大の難点は携帯電話の契約プランによっては送受信のたびに数円のコストがかかるという問題です。契約しているプランによっては送信のたびに3円、受信で3円かかって、頻繁にやりとりしていると通信費の請求書に驚くことに。自分がSMS無料の料金プランに入っていても相手が無料のプランかどうかわからないので、他人には勧めにくいという事情あり。

結局どれがいいのか

なかなか一概には言えませんが、導入を決める上で考えなければならないポイントは次の点でしょうか。

あまり参考にならないとは思いますが、ぼくが経験した例では最終的にLINE WORKSに落ち着いています。

Slack → アカウントを作ったものの、これの使い方(特にチャンネルを理解できないと思われる)をメンバー全員に普及させるのは無理だと確信してすぐ放置に至る。

Teams → 約10人のメンバーで半年ほど実際に活用していた。しかし無料版では上記のアカウント管理に難があり、すでにMicrosoftアカウントを持っている人をメンバーに加えようとしてもどうしても加えられない事象が発生。公式に確認しても無料版はサポート外で、そもそもOffice 365との連動もしていなかったので(職場には買い切り型Word/Excel/Powerpointなどがインストール済み)、一気に使用のモチベーションが下がる。

LINE WORKS → 今のところこれに落ち着いてる。メンバーの追加などは一番簡単。高機能さはないが、そのぶんメンバーのラーニングコストも圧倒的に少なくて済む。スケジュールの共有機能は非常に貧相なのであまり使っていないが、ノートの共有は便利そうで可能性を感じている。アンケート機能も便利そうだと思っていたが、期限設定無しの投書箱的なアンケートを作ろうとしたらアンケート期限設定が必須だったのでこの機能は使ってない。

Office 365が使える職場ではTeamsが、G suiteを契約している職場ではGoogle Meetが最有力候補となるでしょう。Teamsの無料版はOffice 365を契約していない職場でもそこそこ高機能で有力候補となります。いずれも契約していない場合はITリテラシーが高くトレーニングコストを受容できればSlackが候補ですが、メンバーのトレーニングコストを極力抑えて手っ取り早くチャットツールを導入したいという場合はやはりLINE WORKSが有力候補です。

まずは無料版を少人数で実際に使ってみてから選ぶのがよいと思います。業務に深く食い込んでしまう前であれば乗り換えも可能でしょうから(実際にぼくは半年使ったTeamsからLINE WORKSに移動しました)、何事も一度試してみるのが良さそうです。

Tag: チャットツール LINE Teams Slack LINE WORKS Google Meet