レ点腫瘍学ノート

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ブラック霞ヶ関

Twitter上で岩男さん @drop_385 に教えていただいた『ブラック霞ヶ関』を読了しました。通勤中にチビチビと少しずつ読み進めたので読み始めから読み終えるまで2週間もかかってしまいましたが、非常に面白い一冊でした。

厚生労働省の中の人があまりの激務や理不尽(ブラックさ)のためにその内情を告発した暴露本の類かと思って読み始めました。しかし実態は単なる暴露本というような軽薄なものではありませんでした。

遅ればせながらTLで勧められた新潮新書「ブラック霞ヶ関」を読んでるけど、官僚世界も医療現場に似たところがあるな。サービス残業天国だった昔より雇用条件は改善されたが労働密度が上がって現場は大変になってるとか、24時間365日対応可能な「フルスペック人材」でなければ軽視される風潮とか、

— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) March 14, 2021

その業務のあまりの過酷さのために厚生労働省という巨大組織を離れることになってしまった著者ですが、現場を離れた今も厚生労働省で働いた日々を振り返ってその業務形態の問題点を洗い出そうとし、組織の内部とそれを取り巻く環境の改善点についての提案をし、そこで働く人たちを応援しようという気持ちがこの本には溢れています。

優秀な人材が官僚として多数勤めているにもかかわらず、組織の非効率がその能力の発揮を阻んでいます。そのもどかしい現状を少しづつ変えてゆくことが長期的には国民のためになる、そのために何が問題で何が必要なのかを見つけ出すという点で本書のテーマは一貫しており、そこには日本政府と日本国民への愛すら感じました。

しかし同時に、これは厚生労働省という官僚組織だけの問題ではないことにもしっかり釘を刺しています。官僚組織が非効率的な組織になっているのは、国民の要望(およびそれを受けた国会議員などの要求)やマスコミのプレッシャーの影響もあり、中で働く官僚たちだけの努力では解決できません。

印象深かった一節に次のようなものがありました。

国民は『客』だけでなく税金で役人を雇う『雇用主』で選挙の結果をもとに仕事の方針を決める『株主』でもあるので、顧客目線の役人批判に傾いてはいけないという一文も良かった。

— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) March 25, 2021

ただ、実は厚生労働省や官僚に対してだけでなく、Twitterでも他責的で他人の失策や粗相を見ると容赦なく袋叩きする風潮が年々強くなっているように感じています。『ブラック霞ヶ関』という書籍名ではありますが、なんだか日本全体を覆う暗くて重い雰囲気がこのブラックな空気を作っているような気がしてなりません。

著者がこの本の後半で提案しているように、一人一人が当事者意識を持って事態を一歩づつでも明るい方向に向けるよう力を出し合うことができれば良いのですが、日本社会が果たしてそのような形で動いてくれるのかどうか、ぼくは自信がありません。

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更新日:2021-03-30 閲覧数:869 views.