レ点腫瘍学ノート

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大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス第4版

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買いました!日本臨床腫瘍学会(JSMO)の大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス第4版です。

大腸癌のgenome based medicineの新しい指針

JSMO/JSCO/小児血液がん学会の進行固形がん臓器横断的ゲノム診療ガイドラインはMSIやNTRKなど保険適用ある標的に重点置いて割と保守的な印象だったけど、この大腸がん遺伝子検査ガイダンスはJSMO2019講演でがんセンター東病院の谷口浩也先生も「怒られるんちゃうかと思いながら作った」と言われたように、かなり攻めてます。

保険診療より先を見越した野心的な内容

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第3版までに既に記載あるRAS、BRAF、MSIに加えてパネル検査の記述がかなり増えたほか、近日承認されるというctDNAでのRAS変異検査、新規バイオマーカーのVEGF-DとCIMP、術後化学療法の効果予測のoncotype DX colon assayとCDX2発現などを、保険適用を「度外視」して推奨しまくるかなり野心的な内容です。

下図のように、現在すでにある程度確立されている大腸癌関連のゲノム検査は下記のようになっているようです。薬事承認されて保険償還されるものが最も中の方に描かれた円ですが、その周りには2019年の時点ではまだ保険承認されていないが臨床に耐えるだけの確実性をすでに確率している技術、そしてその周りには有望だが現在は研究途上の技術、などが順番に重なるように広がっている様子が伺えます。

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「ガイドライン」にするとある程度臨床現場を従わせる圧力を持つから保険適用を無視できないし大人な事情で慎重な記載になるが、「ガイダンス」は将来的な方向性を示すだけで今すぐ準拠させるものではないから未来を描き夢を語り好きなこと言っても許される、的な感じですかね?(独断と偏見)。もちろん読んでて楽しいのは後者です。

一般的なガイドラインでは上記のうちの「最も内側の円」についてしか言及しにくいのでしょうが、このガイダンスではその周辺に広がっている今後期待される技術についてもしっかりと記載があるのが魅力的です。

リキッドバイオプシー

特にリキッドバイオプシーの第6章は、抗EGFR抗体の効果判定や耐性獲得のモニタリングを定期的にRAS変異遺伝子に対するctDNAで行うとか、術後微小残存病変MRDの検出をplasmaのAPCやTP53やSMAD4などの大腸癌関連遺伝子のリキッドバイオプシーモニタリングで定期フォローするとか、こういった未来の診療がどれもvotingで4段階の「推奨」か「エキスパートコンセンサス 」の判定になっていて、かなり攻めています。

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リキッドバイオプシーは技術自体は肺癌や乳癌など他の癌腫で先行していますが、この検査方法で得られる情報が臨床現場に直結しやすいということで、これが保険適用されれば普段の診療にすぐに取り込めそうなところが魅力の一つです。2018年7月から保険収載されたがん遺伝子パネル検査はいまのところまだ実用半分・研究半分といった域を抜けきれていない様子で、パネル検査をしても治療につながらなかったり得られる膨大な情報を活かしきれないという問題がありますが、リキッドバイオプシーは情報さえ得られればその情報を活かすのは(パネル検査に比べて)難しくはありません。

なお、RASに対するリキッドバイオプシーは近々保険承認されるという噂ではありますが、大腸癌のRAS検査で用いているRASKET-BはBRAF変異を同時に検出するものであるのに対してリキッドバイオプシーで審査が進んでいるのは今の所BRAFは対象外でRASのみです。またリキッドバイオプシーの強みは上記のように「時間的な経過を追える」「以上を早期に検出できる」ということなので、その強みを活かすためには今のCEA測定のように一定の間隔で定期的に測定できることが必要です。しかしRASKET-Bの変わりのような位置づけで使用する場合はおそらく「1患者で1度きり」しか保険請求できないでしょうから、このガイダンスで描かれているようなリキッドバイオプシーの使い方が普及するのはさらにもう少しだけ未来のことになりそうです。

日本臨床腫瘍学会の会員は公式サイトで

このガイダンス、日本臨床腫瘍学会(JSMO)の会員であれば会員サイトにログインして全文を閲覧することができます。

https://www.jsmo.or.jp/about/kanko.html#guideline

また、下記のように金原出版から市販されており、書店で購入することもできます。

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更新日:2020-05-04 閲覧数:2440 views.