レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2023年 / 3月23日

新たながんゲノム医療拠点病院の指定に関して

がんゲノム

2023年4月から7病院ががんゲノム医療拠点病院に新規に認定、逆に7病院ががんゲノム医療連携病院に降格

がんゲノム医療拠点病院、新たに札医大病院・横市大病院・山梨県中病院・滋賀医大病院・奈良医大病院・広島病院・熊本大病院を選定—厚労省 | GemMed | データが拓く新時代医療
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2023年4月からの新たながんゲノム医療拠点病院が発表されました。今回、新規にがんゲノム医療拠点病院に認定された7施設は下記のとおりです。

一方がんゲノム医療拠点病院の認定の更新が認められず、がんゲノム医療連携病院へと降格となった7施設は次の通りです。

選定に関する会議の資料は厚生労働省のWebサイトにアップロードされています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001073345.pdf

認定施設の選定にあたっては、各地域ごとに定数が定められています。実績が「拠点」下位2施設と「連携」上位2施設がヒアリングに呼ばれ、その結果によって入れ替えが決定されます。ヒアリングそのものは非公開であり、何が決定打となったかは明らかにされていません。ただし、がん遺伝子パネル検査の実績や遺伝カウンセリング体制、がん薬物療法専門医・臨床遺伝専門医・分子病理専門医などの資格保有者数も要求され、体制が点数化されて評価されることがわかっています。

2023年度からの「がんゲノム医療拠点病院」、現在の拠点病院「下位」と連携病院「上位」とを比較して選定—がんゲノム医療中核拠点病院等指定検討会 | GemMed | データが拓く新時代医療
我が国のがんゲノム医療を牽引していく「がんゲノム医療中核拠点病院」や「がんゲノム医療拠点病院」、「がんゲノム医療連携病院」については、新たな指定要件(整備指針)に基づいた指定見直しを行い、本年(2023年)4月1日から新体制がスタートする— …
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がんゲノム医療拠点病院の認定を剥奪された病院はどうなるか

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拠点病院から連携病院に降格となると自施設で実施できることが大幅に制限されることになります。特に影響が大きいのは、エキスパートパネルが開催できなくなるためがん遺伝子パネル検査の結果説明について他の拠点病院にエキスパートパネルの実施を依頼する必要がある点と、下位に連携病院を従えてそれらの施設からのエキスパートパネルの開催依頼を受けることができなくなる点でしょう。

がんゲノム医療拠点病院の指定は、一度決まれば終わりではありません。実績によって格下げされ、連携病院と入れ替わることがあります。このシステムは競争を促し、質の向上につながるという意味では良い面もありますが、一方で指定が変更されることによる影響については懸念が残ります。

例えば、拠点病院の認定が更新できず、突然がん遺伝子パネル検査(エキパネ)が停止した場合、連携病院は困惑することでしょう。認定が発表された3月22日から新しい指定が発効する4月1日までの短期間で連携先を探さなければならず、また現在進行中の検査結果の説明も対応が難しくなります。

さらに、「中核拠点病院」と「拠点病院」は国が選定しますが、「連携病院」は連携先の中核拠点病院または拠点病院が選定するため、新たにがんゲノム医療を始めるために連携を申請していた病院が拠点病院の指定剥奪によって影響を受ける可能性があります。拠点病院の指定剥奪は重大な問題となり得ます。

ただし、親となる拠点病院が認定剥奪された場合、連携病院は3月末までではなく、7月1日までに他の連携先を探せば良いとされています。それでも連携申請を一からやり直すことは大変ですが、ある程度の猶予期間が与えられています。

しかし、4月1日から6月30日までの間、エキパネが開催できないため、保険算定の観点からも新たな拠点病院を数週間以内に見つける必要があります。これにより、3月に提出して結果が未着のパネル検査の結果説明が困難になることが懸念されます。

がんゲノム医療の拠点や連携病院の指定に関する議論は、遺伝子パネル検査が保険承認されているものの、がんゲノム医療連携病院の指定がない場合はがん遺伝子パネル検査が出せず、がんゲノム医療拠点病院の指定がない場合は結果の判定(エキスパートパネルの開催)が単独でできないため、患者に適切な治療を提供する上で重要です。遺伝子検査に基づくがん治療が一般的になっている現在、拠点病院や連携病院の指定が受けられるかどうかは単施設でがん薬物療法を完結できるかどうかにも関わってくるようになるでしょう。

まとめ

今回の発表により、新たにがんゲノム医療拠点病院に認定された7施設は、がん患者に対する遺伝子検査や遺伝カウンセリング、個別化された治療を提供することが期待されます。一方で、降格となった施設もがんゲノム医療連携病院として、拠点病院と協力てゆくことが求められます。

今後もがんゲノム医療拠点病院や連携病院がさらに充実し、患者さん一人ひとりに合った適切な治療が提供されることが望まれます。また、各施設が競い合いながら、質の高い医療サービスの提供に努めることで、がん患者の治療成績の向上につながることが期待されています。


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更新日:2023-03-23 閲覧数:1388 views.