レ点腫瘍学ノート

2020-12-04

NCCオンコパネルで検出可能な生殖細胞系列遺伝子

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NCCオンコパネルはFoundationOne CDxなどと違って組織検体の他に血液検体を採取してリンパ球DNAを解析しているために生殖細胞系列の範囲を検出できるという特徴を持っていますが、NCCオンコパネルが解析対象としている114遺伝子のうちで生殖細胞系列まで解析対象としている遺伝子は実は多くはありません。

開発当初では114遺伝子中、生殖細胞系列まで解析しているのは主要な13遺伝子に過ぎませんでした。

BRCA1, BRCA2遺伝性乳癌卵巣癌症候群
TP53リ・フラウメニ症候群
STK11/LKB1Peutz-Jeghers症候群
MLH1, MSH2リンチ症候群
APC家族性大腸腺腫症
VHLVon Hippel Lindau syndrome
RETMultiple Endocrine Neoplasia Type 2, Familial Medullary Thyroid Cancer
PTENPTEN Hamartoma Tumor Syndrome
RB1Retinoblastoma
TSC1Tuberous Sclerosis Complex
SMAD4
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2020年10月のNCCオンコパネルのアップデート(v1.06)からはそこにPALB2などのさらに3遺伝子が加わっています。

NF1神経線維腫症1型
PALB2遺伝性乳癌
SMARCB1rhabdoid tumor predisposition syndrome (RTPS)

なおこの2020年10月のNCCオンコパネルのアップデートでは、この3遺伝子の追加のほかにClinvar(20170905→20190909)やCOSMIC(v71→v89)などの遺伝子データベースのアップデートやレポートの体裁の変更などがなされています。また、以前に比べてレポート返却までの日数も若干短縮しているようです。

SNPとして除去される可能性に注意

ちなみに、この生殖細胞系列以外の遺伝子に生殖細胞系列変異があった場合は解析結果はどうなるでしょうか。

シークエンスで検出されたバリアントを有意な所見と取るかどうかのフィルタリングとアノテーションの過程は複雑ですが、血液検体を採取しているNCCオンコパネルでは組織検体で検出されたバリアントから血液検体(リンパ球DNA)で検出されたバリアントを差し引くという方法が基本になっています。リンパ球DNAに見られる変異はSNPであると考えて、腫瘍細胞がsomaticに獲得した範囲のみを抽出しようという原理です。

これはFoundationOne CDxなど組織検体のみを使う検査方法に比べてSNPの除去効率がかなり高まるという利点があります。一方で生殖細胞系列変異はリンパ球DNAにもallelle frequencyが約50%で出現しますので、生殖細胞系列変異をSNPと判定してしまうリスクがあります。

こうならないようにBRCA1/2など遺伝性腫瘍の原因遺伝子として重要な遺伝子では生殖細胞系列変異の解析を行なっているわけですが、困ったことに生殖細胞系列の解析対象遺伝子が少なく重要遺伝子を全ては網羅できていません。

たとえばATMは相同組み換え修復に関与し、卵巣癌・前立腺癌・膵癌の家族性・遺伝性発癌に関与していると考えられていますが、現在(2020年12月)はまだNCCオンコパネルの生殖細胞系列の解析対象遺伝子に含まれていません。すると、ATMに生殖細胞系列変異がある人では生殖細胞系列の変異を検出できないのみならず、その人の腫瘍にも当然VAFが50%またはそれ以上で存在するはずの体細胞系列ATM変異もSNPと誤判定されてしまうことも考えられます。

このように、生殖細胞系列の解析対象に含まれていない遺伝子に関しては生殖細胞系列範囲のみならず、(FoundationOne CDxなら検出できていたはずの)体細胞変異すら検出できないということになることもありえます。

「NCCオンコパネルでは生殖細胞系列の変異まで検出できる」というのは間違いではありませんが、それにも一定の限界があることを認識しておく必要があります。

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