レ点腫瘍学ノート

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JSMO2024反省会

JSMO2024 学会

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例年のごとく、今年もJSMO2024反省会を行います。これも例年同様に、反省会というタイトルであってもふり返りという意味であって、JSMO2024が良くなかったというネガティブな意味ではありません。どういう会だったかを後年に忘れてしまうことがないように、新鮮な今の記憶をここに記録しておきます。誤解ないようよろしくお願いいたします。

なお、昨年までのJSMO反省会記事はこちら。

JSMO2023 学会 例によって例年のごとく、JSMO2023反省会を行います。これも昨年同様に、反省会というタイトルにしていますが、ふり返りという意味であって、ネガティブな意味ではありません。どういう会だったかを後年に忘れてしまうことがないように、新鮮な今の記憶をここに記録しておきます。なお過去のJSMOの反省会記事はこちら。
JSMO 第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)-コンベンションリンケージ第19回日本臨床腫瘍学会学術集会 会期:2022年2月17日(木)~19日(土) 会場:国立京都国際会館/ザ・プリンス 京都宝ヶ池 会長:大江 裕一郎(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長) 運営:コンベンションリンケージh
JSMO 2021年のJSMO(日本臨床腫瘍学会)学術集会が終わりました。忘れないうちに感想を記録しておきます。反省会というタイトルにしていますが、ネガティブな意味ではないです。反省とは「これまでの自分の言動やありかたを振り返ってみて、別の立場から改めて観察・評価すること」です。はじめにWEB会議システム抄録システムプロ

会場

今年も現地はフル開催です。昨年福岡で開催されたJSMO2023は久々の現地フル開催でしたが、今年ももちろん現地はフルスペックで、会場は名古屋国際会議場です。ぼくは2015年の日本癌学会学術集会以来実に9年ぶりに来ました。

1号館から4号館までがぐるっとループ状につながった構造で、パシフィコや神戸や京都と違って雨でも全く心配がいらず、館から館への移動もスムーズなのはこの名古屋国際会議場の良いところです。

(ちなみに名古屋国際会議場に行くときは、地下鉄は日比野駅よりも西高蔵駅で降りる方が便利ですね。またホテルは前回は栄付近に撮ったのですが今回は金山駅付近に取って、これは大成功でした。やはり会場に近いというアドバンテージは大きい!)

会場キャパシティ

名古屋国際会議場は100人以上入れる大部屋の数が少ないのか立ち見になってしまっている部屋が少なくありませんでしたね。SNSシンポジウムが開かれたRoom 6や、医学生研修医セミナーが行われたRoom 11はちょっと狭かったと感じました。

もっともこれは、おそらく国立京都国際会館で開催しても同じことだったので、JSMOが成長して規模が大きくなりすぎたので、どのコングレスセンターでもあふれてしまうほどになれたということでしょうか。

クロークも、特に多くの参加者がスーツケースを伴って会場入りするDay1とDay3はオーバーフローしていました。しかし、これは2号館の仮設クロークに速やかに誘導され、上手に対応されていたようです。

ランチョン弁当品切れ問題

モーニングセミナーやランチョンセミナーの軽食や弁当も品切れが続出していて、当初の予測よりも現地参加者が多かったのかもしれません。昼食にありつけず、ポスター会場で配られているお菓子(しるこサンド?)で空腹を満たす人もいました。

実はぼくも、Day1のランチョンセミナーに行った時には(部屋には入れましたが)弁当はすでになく、またDay2もサンドイッチなどを期待してモーニングセミナーに行ったのですが軽食もなくて、実は3日間のうち2食は食事抜きでした。

他学会ではランチョンセミナーはアプリを使った整理券制・予約制をとっているところが少なくないので、参加者がこれだけ多い規模になったらJSMOもその方式にしても良いのかもしれません。確か、札幌で開かれたJSMO2015のランチョンセミナーは整理券制ではなかったでしたっけ?

日程

雨天が心配されていましたが、そこまで荒れる天気になることはありませんでした。一方で会期中の寒暖差は大きくて、Day0はコート不要の暖かさだったのにDay3は真冬の寒気で衣服の調整も難しく、それもクロークが満杯になる一因だったかも。

JSMO2024が2月22日から2月24日で開催されましたが、神戸では2月24・25日に日本がん看護学会学術集会が開催されており、看護師やPAP(ペイシェントアドボケイトプログラム)参加者などはどちらか片方を諦めたり強行日程でハシゴしたりせざるを得ない人もいたようです。ぼくの職場からいつもJSMOに来ているがん化学療法看護認定の看護師さんも、今年はJSMO参加を断念していました。

ついでに言うと来週3月2・3日は神戸でJASPO(日本臨床腫瘍薬学会)が開催されますので、薬剤師にとっても厳しい日程だったようです。

まあ、昨年はザンクトガレン国際乳癌学会、一昨年はASCO-GUと重なっていたので、これだけ学会が乱立している現状では重複しないように日程を設定すること自体が難しそうですね。

過去には婦人科腫瘍学会学術集会と丸ごと重なったこともありましたが、そのような他の学会と重なるとその領域を軽視しているというメッセージと受け取られかねないので、メジャー学会と丸かぶりをある程度回避できていて(がん看護学会も1日ずれて丸かぶりではない)、その点はやむを得なかっただったと言えるのではないでしょうか。

抄録アプリ

抄録アプリは今回はJSMO2021ぶりにMICENaviが復活です。ライブ配信もオンデマンド配信もこのアプリの中で視聴するようで、アプリのできは非常に良かったですね。

しかも例年は1週間前にならないと抄録アプリが公開されないことが多かったのですが今回は14日前の公開で例年より早かったのも良かったです。

JSMOの抄録アプリきたー!いつも7〜8日前に公開だったのに今年は14日前!早いな!
しかも2021年以来久々に評判よかったMICEnaviが復活だー!https://t.co/RUqADPhFiV#JSMO2024 pic.twitter.com/vgvfk9hB5W

— レ点🧬💉💊 (@m0370) February 8, 2024

プログラム

今回も基本的な構成は昨年を踏襲しているようです。ここ数年はすっかり定着したHighlight of the DayやMeet the expert、そして医学生研修医セミナーなどの各種委員会企画なども今年も開かれています。一方で、今年はPlenary sessionは廃止され、Presidential sessionに統合されたようです。

わりと時間にルーズなJSMO会員

JSMO2022では座長がリモート参加する演題が多く、タイムキーピングがうまく機能していない場面も見られましたがJSMO2023からは座長と演者が原則として現地開催となったため、このような問題は解消されました。

しかし、全体的に時間超過しているセッションが多くありましたね。どうしても質問したい人が多すぎてディスカッションが熱くなると、前のセッションが終わっていないので次のプログラムが始まる時間になっても部屋に入れないという場面を何度か目にしました。タイムスケジュールは学会運営の要ですので、発表時間をしっかり守るようにしたいところです。

総論系シンポジウムの充実度

JSMOではもちろん各臓器領域の注目演題の発表も関心を集めますが、今回は早期臨床試験や治療開発をゴリゴリと進めるばかりが腫瘍内科の仕事ではない、むしろ全国津々浦々のがん患者たちに対して地に足着けて向き合い地方のがん診療を支えている腫瘍内科医の目線にあった企画も多かったように感じて、この点は今回のプログラムに大変好感を抱きました。

たとえば、Day1の午後に開催された「その治療、やり過ぎじゃないですか?」は立ち見も出て部屋から聴講者があふれる大盛況ぶりでした。積極的抗がん治療をどうように終了するか、ICIがPS不良の患者に過剰に適用されたり2年を超えて継続されているときのやめ時はどこにあるのか、これまであまりこのようなテーマを取り上げた企画がなかったのですが重要な議論だと思います。

SNSシンポジウムも、今までのJSMOにはない毛色の企画で大変おもしろかったですね。これについては別の記事でまたまとめて書こうと思います。

JSMOの教育系委員会企画

今回もうひとつ感じたのは、JSMOが教育に本気になっているというところです。

研修医の中での内科不人気や新専門医制度の不透明さもあって、腫瘍内科医を目指す若者が減っていることにJSMOは相当強い危機感を抱いているようです。

今回は教育企画部会JSMO大学の「腫瘍学は人気がないのか?」には人気国試予備校講師を呼んだりYoutube動画を作ったり、専門医部会は「がん教育は何を目指すのか?専門医よ、学校へ行こう!」と題して中学校や高校にがん専門医やがんサバイバーが出張授業をしたりと、次世代に対してがんに関心を持ってもらうことにかなり力を入れていると感じました。

さらに最終日の医学生・研修医のためのセミナーにも50人を超える若手が集まり、夜は懇親会も開かれたようです(参加する学生には学会参加費や懇親会費だけでなく名古屋までの交通費補助までしているようで、企画だけでなく軍資金のかけ方もすごい!)。若手医師に人気が乏しい診療科はどんどん敬遠される時代、いかに興味を持ってもらうかは現場の一人一人が考えてゆかなければいけません。

これ、研修医なら交通費補助も出るってページの一番下に書いてあるけど、いったいどういう値付けなのかよくわからんな。沖縄・北海道よりも近畿地方のほうが高いのは、絶対に誤植なのではないかと思うが…どうしてこうなった? pic.twitter.com/FNYQLJy1YU

— レ点🧬💉💊 (@m0370) January 16, 2024

ポスターすかすか問題

前回の福岡ではポスター会場は熱気がありかなり盛り上がっていましたが、今回はポスター発表は少し盛り上がりに欠けて残念な印象でした。その理由はいくつかあると思います。

まずはポスター会場の場所。ポスター会場が分散して4号館1階ロビー、4号館3階438号室、3号館3階渡り廊下、3号館地下1階カスケードに分散しています。特に4号館1階ロビーや3号館地下1階カスケードは普通のオーラルセッション会場を移動する同線からは少し離れてしまっているので、かなり閑散としている印象でした。

今回、何でこんなにポスターの場所がバラバラなんだろう。1階と3階渡り廊下はともかく、地下1階や3階438号室が割り当てられたら聴衆がほとんど来なくて、ちょっとかわいそう #JSMO2024

— レ点🧬💉💊 (@m0370) February 23, 2024

また今回はポスター掲出時間からポスターを剥がす時間までが短かったので、空き時間にブラブラとポスターを見て歩くということが難しかったのも一因かもしれません。Day1とDay2はポスター発表がダブルヘッダーだったので、午前発表のポスターは12時すぎには撤去されてしまします。そのあと13時から午後発表のポスターが掲出されて18時に撤去ですので、朝から夕方まで貼りっぱなしなのに比べるとどうしても目に触れる機会が少ないですね。

ここ数年のJSMOのポスター発表は、(国内のほかの学会と異なり)海外形式で演者によるオーラル解説がありません。つまり演者と座長が強制的にポスター前に集まって意見交換する場面がないので、「ポスター貼り逃げ」が増えがちです。これも国際化と言えばそれまでですが、ポスター会場が企業展示ブースの隣にあって演者になる若手と座長をする地方病院部長クラスの先生の数百人が一堂に会する数十分がある旧来方式のほうが盛り上がりは生まれそうです。どちらがよいと決めることは難しいのですが・・・。

そしてポスターすかすか問題で一番困るのが、そもそもポスターを貼らない演者が多すぎるという問題です。コロナ禍がまだ真っ最中の頃は致し方なかったと思いますが、今回はポスターが掲出されていないスペースが実に過半数です。

確かにポスター会場、スカスカ過ぎんか。13時台はこの壁が埋まってるはずなんだが…何だコレ… #JSMO2024 pic.twitter.com/i3ExePH0lG

— レ点🧬💉💊 (@m0370) February 24, 2024

チラチラと抄録を見たところ、ポスター発表はJSMO国際化の効果もあって半数くらいが海外からの演題登録ですが、ポスターを貼りに来ていないのもやはり海外演者(主に東南アジア)からの発表が少なくないようです。

JSMOがASCOなどのように「ポスター発表が採択されるだけで栄誉ある学会」という立場になってきていることの現れかもしれませんが、演題登録して採択だけされたら当日は現場に来ない「記念受験」があまりにも多すぎるのは考えものです。

多分そういう対策はされていないです。JSMOは(シンガポールのESMO-ASIAと並び)アジアではかなり大きい学会になってきたので、海外からポスターだけ登録して演者は来日しない「記念受験」が多すぎるのも問題と思ってます。コロナ禍で電子になったのに紙ポスターに戻ったのも一因かもしれませんが。。

— レ点🧬💉💊 (@m0370) February 24, 2024

他学会では演題を出しながら当日ポスターを掲示しない場合はその演者や施設に次年度発表禁止などのペナルティを科している学会もあるようです。学会が管理できない海外演者が多いJSMOで同じ施策をとれるのかはわかりませんが、このポスターすかすか問題はJSMOの国際化の副作用の一つで、何らかの対策を打つ必要があると思いました。

リアル学会 v.s. オンライン学会

今回は昨年のJSMO2023に続き、現地ではフルスペック開催です。一方で昨年大幅に縮小されてしまったライブ配信も今回はかなり多くの演題が配信対象となっていました。

ほとんどのシンポジウム、Presidential session、Highlight of the Day、PAPがライブ配信および3月1日から始まるオンデマンド配信の対象になります。OralやMini Oralは配信対象外ですが、昨年は「第1会場、第7会場」という部屋で開催された演題しか配信対象になっていなかったことを思えば今年はかなり充実していたのではないでしょうか。

ただ、学会があれだけチカラを入れて準備していた医学生・研修医のためのセミナーがライブ配信やオンデマンド配信の対象になっていないのは少し残念です。地方に住んでいて現地会場まで来られない医学生や、少人数小規模の地方の腫瘍内科の指導医にこそ、あのような企画を見てほしいので、ぜひ名古屋の現地に来ることができなかった人にもあのような企画に触れるチャンスを作ってほしいところです。

あれ!?ライブ配信とオンデマンド配信の対象プログラムが更新されてる!そして「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」が配信から外されてる!なんで?
あれこそ「名古屋までは行けないけど参加費無料だからWEBで見る」という学生や研修医のために配信すべきなのに…😢 #JSMO2024 #名古屋MOS https://t.co/IQwIDY62yA pic.twitter.com/7zcobb8oJb

— レ点🧬💉💊 (@m0370) February 14, 2024

JSMO公式キャラクター「じゃすもーくん」

今回、学会公式キャラクター「じゃすもーくん」もお披露目されたようです。ジャスモに相撲をかけてるわけです。JSMOも茶目っ気が出てきましたね。

学会公式キャラクター決定のお知らせ  | お知らせ | 日本臨床腫瘍学会
日本臨床腫瘍学会公式WEBサイトでは、患者・家族、国民、がんの研究者・医療者に対し、がんあるいはがん医療に関する国内外の情報を発信しております。
https://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/20240222.html
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アンケート

今回のJSMO2024に関して、学会公式からアンケートがあるようです。抄録アプリの中から回答できます。

最後に

ライブ配信やオンデマンド配信が充実していたと言っても、やはり現地で人と人が出会うという経験にまさるモノはありません。今回も非常にたくさんの仲間に出会うことができ、楽しく充実した時間を過ごせました。特に個人的な体験で言うなら、JSMO2024では自分より若くて非常に優秀な才能に数多くで会うことができました。まさにRising starたちですが、国立がん研究センターや有明病院などの基幹施設が日本をひっぱってくれる若手の育成に成功している証拠だと思います。

首都圏を離れるとこのような将来を担ってくれる次世代の育成が必ずしもうまくいっているとは言えない状況ですが、今回のJSMO2024で開催された企画を通して、四国や東北地方などでも若手育成が芽吹きつつある医療機関があることも知ることができました。

地方はそもそも内科医の確保にすら苦心している施設が少なくありませんが、自分達の明日からのふるまいがどのようにあるべきか、改めて腰を据えて考える機会を得ることもできました。

#JSMO2024 #名古屋MOS
「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」
ご参加くださり、ありがとうございました!
「腫瘍内科の未来を創るのは皆さんです!」#腫瘍内科 #医学生 #研修医 pic.twitter.com/RyXB8iGwwB

— 日本臨床腫瘍学会(JSMO) (@JSMO_official) February 24, 2024

やはり学会はモチベーションをもらえて素晴らしいですね。今日からまた、自分のなすべき仕事を一つづつがんばってこなしてゆこうと思います。

みなさん、お疲れ様でした!
(みんな3日間、朝から晩までほとんど活動しっぱなしで体力オバケすぎて怖い) #JSMO2024 pic.twitter.com/5fVOR98r99

— レ点🧬💉💊 (@m0370) February 24, 2024

なお、#JSMO2024関連のツイートはこちらにもまとめています。

JSMO2024ツイートまとめ
2024年2月22〜24日に名古屋国際会議場で開催された第21回日本臨床腫瘍学会(#JSMO2024)のツイートまとめです。
https://togetter.com/li/2320585

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更新日:2024-02-25 閲覧数:779 views.